モテる男ホン・サンスの愛についての考察。その4

Culture 2018.06.18

“恋愛の結果ばかりを意識しすぎると「いま」を忠実に生きられない。大切なのは、結果よりも過程”

世界3大映画祭に毎度のごとく招かれ、呼吸するかのように精力的に映画を撮り続ける韓国の映画監督ホン・サンス。どうにも、モテる男だ。男と女の関係を描き、人生を眺め、映し撮る彼の言葉から読みとる、愛とは……何?

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「恋愛の結果は一瞬にすぎない。結果ばかりを重視する人の結末は、“いま”を忠実に生きられない人の結果であり、それは自然な結果とは言えない。どんな目的があるにせよ、結果よりも過程こそが大切」。これは、まさにホン・サンス映画のスタイルと響き合う。彼の映画はラストを決めず、着想や出演者への興味からスタートし、毎朝、その日のシーンと台詞を考え、ただその日だけに集中する。その一瞬、一瞬の積み重ねこそが彼の映画なのだ。彼とキム・ミニの恋の過程を思わせる『夜の浜辺でひとり』も同様のスタイルで撮影された。バッシングに疲れ果て、ドイツのハンブルク、韓国の江陵と旅するヒロインをキム・ミニ自身が演じ、来るのか来ないのかわからない恋人を待ちながら、孤独の中で自分自身と向き合い続ける。そんなヒロインの“いま”に立ち会い、彼女の変化、たどり着く真理に寄り添うことが『夜の浜辺でひとり』を観る醍醐味と言えるだろう。

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『夜の浜辺でひとり』

不倫報道から逃れ、ドイツ・ハンブルク、そして韓国・江陵を旅する女優(キム・ミニ)。海辺の町をそぞろ歩き、旧友と語らいながら自己と向き合う心の移ろいを幻想的な風景とともに描く。ベルリン国際映画祭にて、キム・ミニが主演女優賞を受賞した作品。

●監督・脚本/ホン・サンス
●出演/キム・ミニ、ソ・ヨンファ、クォン・ヘヒョ、チョン・ジェヨン、ソン・ソンミ、ムン・ソングン
●2017年、韓国映画
●101分
●配給/クレストインターナショナル
●ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国にて公開中
©2017 JEONWONSA FILM CO.ALL RIGHTS RESERVED.



Sang-soo HONG

1961年、ソウル生まれ。大学で映画を学んだ後、アメリカ留学で美術を専攻しながら実験映画を制作。96年、『豚が井戸に落ちた日』で長編デビュー。ほかに『女は男の未来だ』(2004年)、『アバンチュールはパリで』(08年)、『自由が丘で』(14年)など。カンヌをはじめ、世界3大映画祭の常連として高い人気を誇る。

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interview et texte : REIKO KUBO

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