秋の夜長に楽しみたい、海外ドラマ10選。#03 【海外ドラマ】シリアルキラーの狂気を、「glee／グリー」の彼が怪演。

必見の海外ドラマを紹介する短期連載、第3回は「アメリカン・クライム・ストーリー／ヴェルサーチ暗殺」。O・J・シンプソン事件を基にした第1シーズンに続き、ジャンニ・ヴェルサーチ殺害事件をテーマにし、高い評価を得るドラマだ。

「glee／グリー」のダレン・クリスが、稀代のシリアルキラー、アンドリュー・クナナンを熱演。

「アメリカン・クライム・ストーリー／ヴェルサーチ暗殺」（2018年）

1997年７月15日、世界的なファッションデザイナー、ジャンニ・ヴェルサーチがマイアミの自身の豪邸の前で射殺された。犯人は、すでに4人を殺害して指名手配中だった男娼アンドリュー・クナナン。稀代のシリアルキラーとジャンニの間に、何があったのか？　ドラマは事件の日から過去へと変則的に遡っていく。4人目の殺害から最初の犯行に至るまでの過程、さらにはクナナンの生い立ちにも言及する。明らかに本作はクナナン寄りの作りであるが、他の犠牲者たちとクナナンの関係性、そしてジャンニとの呆気に取られるような関わりが明かされるとき、クナナンのあまりの身勝手さにぞっとしてしまう。

いつものように優雅な朝食で始まった1日が悪夢に変わる。ジャンニ・ヴェルサーチ役は『ゴールド／金塊の行方』のエドガー・ラミレス。

「glee／グリー」や「アメリカン・ホラー・ストーリー」で知られるヒットメイカー、ライアン・マーフィーは、センセーショナルでキャッチーな題材を好み、派手かつ高い美意識に貫かれた映像世界は娯楽性が抜群に高い。それでいながら、数々の賞に輝く同シリーズの前作「アメリカン・クライム・ストーリー／O・J・シンプソン事件」は、折しもムーブメントが最高潮に達した「Black Lives Matter」とも重なる社会派エンタメの傑作となった。同じく今年のエミー賞を席巻した本作でも、事件の根底にある’90年代のホモフォビアや移民への差別や偏見、それを煽るマスメディアの存在が捜査においてどのように不利益に働いたのかを描いて、現代社会に疑問を投げかける。

クナナンと同じくアジア系のルーツを持つダレン・クリスは、「glee／グリー」の優等生役がよく知られているが、本作での卑劣さと劣等感、狂気と哀れみが入り混じる役作りが圧巻。ジャンニ役のエドガー・ラミレス、その妹ドナテラ役のペネロペ・クルス、そして人気歌手リッキー・マーティンが扮するジャンニの恋人アントニオ・ダミコといった共演陣の、本人との類似性にも驚かされる。

ドナテラ役のペネロペ・クルス。マイアミビーチにある、かつてのヴェルサーチ邸で撮影されたシーンも。