秋の夜長に楽しみたい、海外ドラマ10選。#09 【海外ドラマ】殺人犯の心の闇を探る、スリリングなミステリー。
Culture 2018.10.30
おすすめの海外ドラマを紹介する短期連載の第9回。良作がひしめくミステリーからは、衝撃的なオープニングで幕を開ける「The Sinner ー記憶を埋める女ー」をピックアップ。
幸せそうに見えて、心の闇を強く感じさせる母親コーラ。事件の背景にある驚くべき真相とは?
「The Sinner ー記憶を埋める女ー」(2017年~)
白昼、家族連れで賑わう湖畔の浜辺で、幼い子どもに果物をナイフで切り与える母親と、それを見守る夫。どこにでもいるような家族団らんのひと時は、前に陣取っていた若いカップルたちが音楽を変えた瞬間、悪夢に変わる。手にしたナイフで、母親がいちゃついていたカップルの男性の首を滅多刺しにしたのだ。これほど視聴者の心をわしづかみにするミステリーのオープニングも珍しい。
目撃者は複数おり、本人も有罪を認めて弁護士も必要ないと言う。不明なのは動機だけ。コーラの精神は壊れているのか、それとも殺害は意図したものなのか? 疑問に思った刑事アンブローズは、コーラを放っておくことができず事件にのめり込んでいく。ドラマは全8話、良質のミステリー本を読むかのごとくイッキ見したくなること必至なので、寝不足には要注意。
コーラ役を体当たりで演じて新境地を開拓したジェシカ・ビール。自身初となるゴールデン・グローブ賞、エミー賞の候補に。
弱々しく傷ついた女性から、次々と別の側面が見え隠れするコーラを体当たりで演じるジェシカ・ビールは、自身のプロダクション・カンパニーを率いて企画の立ち上げから携わった。原作はドイツ・ミステリー界の才能、ペトラ・ハメスファールの傑作『記憶を埋める女』。ドラマの方がライトな味付けになっているが、だからこそ見やすく、気軽に楽しみやすい。一方、原作はコーラの過去や迷宮のような内面の描きこみも密な力作。ドラマを気に入った人は、ぜひとも原作にアプローチして秋の夜長の読書を楽しんでみてほしい。
ちなみに、本作のシーズン2「The Sinner ー隠された理由ー」では、アンブローズ刑事を主人公として別の事件が描かれる。ある田舎町で13歳の少年が両親を惨殺する事件が発生。犯行も手口もすぐに明らかになるが、これまた動機だけが不明という心理ミステリー。「FARGO/ファーゴ」や「LEFTOVERS/残された世界」など秀作ドラマで存在感を示しているキャリー・クーンが、カギとなる人物を演じている。前作に劣らぬ高評価を得ているシーズン2は、11月9日にNetflixで配信開始予定だ。
コーラに肩入れする刑事アンブローズを演じるのは、『バトル・オブ・ザ・セクシーズ』のビル・プルマン。
原題/The Sinner
クリエイター/デレク・シモンズ
出演/ジェシカ・ビール、ビル・プルマン、クリストファー・アボットほか
Netflixオリジナル作品
Netflixにてシーズン1を独占配信中、シーズン2を11/9より独占配信予定
【INDEX】秋の夜長に楽しみたい、海外ドラマ10選。 【#01】自立のため奮闘する良妻賢母の、マーベラスな可愛さ。
【#02】いまを映し出すディストピアを舞台にした、衝撃作。
【#03】シリアルキラーの狂気を、「glee/グリー」の彼が怪演。
【#04】知的な会話の虜になる、人気法廷ドラマのスピンオフ。
【#05】幻想世界でめぐり逢い続ける、孤独なふたりの物語。
【#06】戦場帰りのヒットマン、演劇の面白さに目覚める。
【#07】笑って泣ける、プロレスに挑む“負け犬たち”の奮闘。
【#08】絢爛に繊細に掘り下げる、孤高の女王エリザベスの素顔。
【#10】驚きと笑いの後、心にじわりと響く人生の哀歓。
texte:SACHIE IMA