フィガロが選ぶ、今月の5冊 美貌の歌舞伎役者の一代記を、吉田修一が鮮烈に描く。
Culture 2018.12.30
昭和から平成を駆け抜けた、歌舞伎役者の鮮烈な一代記。
『国宝(上)青春篇』
『国宝(下)花道篇』
吉田修一著 朝日新聞出版刊 各¥1,620
『悪人』『怒り』と映像化が相次ぐ吉田修一が、デビュー20年目の長編小説のテーマとして選んだのは歌舞伎だった。4年前から自ら黒子となり、舞台裏を取材。虚実の狭間で生きる役者たちの生き様を鮮烈に描き出す。侠客の家に生まれながら、この世ならざる美貌を持つ喜久雄は、稀代の女形として昭和から平成を駆け抜けていく。師匠となる関西歌舞伎の人気役者、花井半二郎。半二郎の息子で終生のライバルとなる俊介。そして彼らを支える女たち。百花繚乱の一代記は、講談さながらの語りの文体で一気に読ませる。
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*「フィガロジャポン」2018年12月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI