アニエス・ヴァルダ、ジャック・ドゥミと歩んだ映画人生。

Culture 2019.04.09

3月29日、『5時から7時までのクレオ』『幸福』などを手がけたフランスを代表する映画監督、アニエス・ヴァルダがこの世を去った。享年90歳。波乱万丈だったアニエスの愛と映画の人生を振り返る。 

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アニエス・ヴァルダとジャック・ドゥミ。アニエスの長編2作目『5時から7時までのクレオの上映を前に、カンヌ国際映画祭の会場にて。(フランス・カンヌ、1962年5月)photo:Getty Images

写真家、映画人、ヌーヴェル・ヴァーグの唯一の女性、芸術家、フェミニスト……アニエス・ヴァルダはさまざまな才能を持つ活動家だった。彼女の名は夫である映画人ジャック・ドゥミ(1990年に死去)と深く結びついている。出会いは1958年、トゥールの短編映画祭だった。アニエス30歳、ジャック27歳。「私は『コートダジュールの方へ』を、彼は『冷淡な美男子』を上映しました。翌年もトゥールで再会。いわばちょっとしたサプライズ! 以来、私たちは長く美しい物語を共有しました。もちろん、いくつかの嵐もね」と2014年、彼女は「La Nouvelle République」紙に語っている。

その後ほどなく結婚したふたりは、決して別れることなくフランス映画界の神話的デュオとなった。ふたりの結婚からは、1972年にマチュー・ドゥミが誕生した。ジャック・ドゥミは、1958年にアニエスが演出家アントワーヌ・ブルセイエとの間にもうけた娘ロザリーを養女とした。ロザリーは現在、衣装デザイナーおよびアートディレクターとして活躍している。

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バルバラのコンサートに向かうアニエスとジャック。(フランス・パリ、1986年1月)photo:Getty Images

プライベートでも映画界でもカップルだったふたりは、数々の作品で手を取り合った。監督、プロデューサー、俳優であり、脚本家でもあったジャックは、彼自身の長編映画の脚本を書くように、妻の映画のためにも台詞を書いた。

『ロシュフォールの恋人たち』『ロバと王女』『ローラ』を送り出したジャックは1990年、59歳の時にエイズで世を去る。アニエスは彼の記憶や彼の伝説を残すために、『ジャック・ドゥミの少年期』(1991年)を、続いて『ロシュフォールの恋人たち25年』(1993年)や『ジャック・ドゥミの世界』(1995年)といったドキュメンタリーを発表した。

2008年、自伝的な映画『アニエスの浜辺』で彼女は初めて、夫を奪った病について語っている。「最後の最後まで看病しました。そしてとても近い距離で撮影しました。なぜなら、彼の病気に対する私の答えは、映画人としての答えしかありえなかったから。彼の存在を、彼の髪を、まるで景色のように捉えました。シミのある肌を、遠くを見つめる彼の目を。ジャックは永遠にここにいる、と言うために。愛を、喪失を、哀しみを語るのはとても難しい」と、当時彼女は「Paris Match」誌で語っている。

同じ年の「l'Express」誌のインタビューではこうも語っている。「彼が死んでいこうとしているその時、その彼を撮影していました。いま私にとって重要に思えるのは、当時この映画を撮るのを手伝い、彼にオマージュを捧げてくれた技術者たちをもう一度呼び集めることです。当時、エイズは恥ずべき病とされていて、ジャックは誰にもそのことを話さないでほしいと願っていました」

いずれにせよ、アニエスがジャックの死は宿命ではない、と信じていたことに変わりはない。当時、彼女は「Le Figaro」紙にこう話している。「私は彼がエイズで亡くなった、と話しますが、悲嘆の涙に暮れているわけではありません。死者とは仲間同士のような気持ちです。こうしたことについて声明は出さないほうがいいと思っています。何が起こるかは誰も知りませんが、でも続いているのですから」

ふたりの物語は映画という芸術にインスピレーションを与え、これからも人々を魅了し続ける。

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アニエスとジャック、映画に愛されたカップル。

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ストックホルム・フランス映画祭でのジャック・ドゥミ。(スウェーデン・ストックホルム、1964年2月)photo:Getty Images

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アニエス・ヴァルダと息子のマチュー・ドゥミ(1993年)。photo:Getty Images

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左からアニエス、カトリーヌ・ドヌーヴ、ジェーン・バーキン。ジャックの埋葬の日、モンパルナス墓地にて。(フランス・パリ、1990年10月)photo:Getty Images

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ふたりの子ども、ロザリー・ヴァルダ(左)とマチュー・ドゥミ(右)に囲まれたアニエス。(フランス・パリ、2014年2月)photo:Getty Images

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ファッションブランドのイベントに出席したアニエスと娘のロザリー。(フランス・パリ、2018年9月)photo:Getty Images

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息子のマチュー、アニエス、娘のロザリー。アニエスのアカデミー賞名誉賞を祝って。(アメリカ・ロサンゼルス、2017年11月)photo:Abaca

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『ジャック・ドゥミ 魅惑の世界展のオープニングにて。左からアニエス、マチュー、サルマ・ハエック。(フランス・パリ、2013年4月)photo:Getty Images

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アニエス、ベルトラン・ドラノエ(当時のパリ市長)、。パリ14区のジャック・ドゥミ広場落成式にて。(フランス・パリ、2004年6月)photo:Getty Images

texte:Ségolène Forgar (madame.lefigaro.fr)

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