フィガロが選ぶ、今月の5冊 現代韓国文学を代表する女性作家、ハン・ガンの傑作。
Culture 2019.04.14
韓国文学を代表する作家の、静謐な祈りに満ちた新境地。
『すべての、白いものたちの』
ハン・ガン著、斎藤真理子訳 河出書房新社刊 ¥2,160
暴力に抗い、菜食を貫いて死に追い込まれる女性を描いた『菜食主義者』で2016年にアジア人で初めてブッカー賞を受賞。現代韓国文学を代表する作家ハン・ガンは傷ついた魂にそっと耳を澄ますような作品を描いてきた。「白いものについて書こうと決めた」という印象的な書き出しで始まる本作も、散文詩のような短いエピソードを積み重ねて、いくつもの喪失が語られていく。静謐な白のイメージが連鎖して、いつしか自分の心の中にもまだ誰にも踏まれていない雪のような場所があることに気付く。非常に個人的な場所から世界を悼む祈りを捧げた新境地。
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*「フィガロジャポン」2019年4月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI