おこもりGWのための海外ドラマ・セレクション。#02 【海外ドラマ】笑って泣いて、多様性についても考える。

Culture 2019.04.24

主要なアワード常連の映画監督が手がける実在のセックススキャンダルから、青春学園ドラマ、そして人気のリアリティショーまで。ここで選んだシリーズではLGBTQや多様性がさまざまな形で描かれ、娯楽として楽しみながらこのテーマを身近に考えることができる。

同性愛がスキャンダルだった時代の事件を、鋭く映像化。

「英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件」(2018年)

1970年代に実際に起きた、イギリスの政治家ジェレミー・ソープのスキャンダル「ソープ事件」の顛末をドラマ化。同性愛が違法だった1965年のロンドンで、美青年ノーマンと性的関係を持ったジェレミー。すぐに破局するが、経済的に行き詰まったノーマンはジェレミーに金の無心をするなど次第に要求がエスカレートしていく。政治家生命の危機を感じたジェレミーがノーマン殺害を企てるという驚くべき展開は、マスコミの加熱する報道が火に油を注ぎ、国民の好奇の目にさらされながらイギリス全土を揺るがす裁判へとなだれ込んでいく。

『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』のヒュー・グラント、「007」シリーズでQ役を演じるベン・ウィショーのユーモアもありつつ、同性愛者として差別や偏見に苦しむ生きづらさと悲しみを伝える演技は秀逸。全3話の監督は『グリフターズ/詐欺師たち』『クィーン』で2度アカデミー賞候補になったスティーヴン・フリアーズ。シニカルな笑いを全編にちりばめながら、現代にも通じる社会問題を鋭く浮き彫りにして忘れがたい余韻を残す。

190400-scandal-sub5.jpg

カリスマ性あるやり手の政治家ジェレミーを、ダンディーかつ洒落っ気たっぷりに演じるヒュー・グラント。

190400-scandal-sub2.jpg

厄介なところもあるが憎めないノーマン役のベン・ウィショーも、さすがの名演を披露。

「英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件」予告編。

190400-scandal-cover.jpg

「英国スキャンダル~セックスと陰謀のソープ事件」

原題/A Very English Scandal
監督/スティーヴン・フリアーズ
出演/ヒュー・グラント、ベン・ウィショー、アレックス・ジェニングスほか
DVD¥5,122
発売・販売元:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

© 2018 Scandal Productions LTD. All Rights Reserved.

 

---fadeinpager---

“ヒーロー”を本物の英雄にする、5人組のポジティブなエネルギー。

「クィア・アイ」(2018年~)

ファッションや料理、インテリアなど、各々がスペシャリストであるゲイの5人組”ファブ5”が、何らかの問題を抱える人々(=ヒーローたち)を変身させていくリアリティショー。と言っても上から目線であれこれ指南するのではなく、現在の自分に足りないものは何なのかを考え、問題から目をそらすことなく自分の心と向き合い、自発的に「こうありたい自分」をヒーローたちが見つけていく「手助けをする」というのがファブ5のスタンス。その過程でファブ5もまた新たな発見をしたり成長していく。本作の真髄は、「自分を大切にする」「自分をもっと好きになる」ということなのだ。

各地を回りながら、性同一障害やLGBTQ、マイノリティのヒーローたちも登場。見ているうちに、どうにも涙がボロボロこぼれてしまうようなシンプルで普遍的なメッセージ性とファブ5の優しさが胸に染みる。そして、決して湿っぽくはならないファブ5の楽観的で明るいキャラクターには、いつ見ても顔がほころんでしまう。

190400-QEYE_307_Unit_00355R.jpg

左からカルチャー担当カラモ、インテリアデザイン担当ボビー、ファッション担当タン、料理&ワイン担当アントニ、美容担当ジョナサン。いつも陽気で率直な愛すべきファブ5! 写真はシーズン3より。

190400-QEYE_303_Unit_00533R.jpg

ただ懸命に毎日を生きる”ヒーロー”がファブ5に心を開き、自らが変わったことを実感し感謝するくだりには、毎回涙を誘われる。写真はシーズン3より。

「クィア・アイ」シーズン3の予告編。

Netflixオリジナルシリーズ「クィア・アイ」

原題/Queer Eye
クリエイター/デヴィッド・コリンズ
出演/ボビー・バーク、カラモ・ブラウン、タン・フランス、アントニ・ポロウスキ、ジョナサン・ヴァン・ネス
 Netflixにてシーズン1~3独占配信中

---fadeinpager---

性を中心に据えて社会的なテーマを描く、青春ドラマ。

「セックス・エデュケーション」(2019年~)

自宅でセックスセラピストとして働く母親ジーンとふたり暮らしの高校生オーティスは、母親のおかげで知識だけは豊富だが自身は奥手で内気。だが、学校の生徒たちを相手に「秘密のクリニック」の開設を持ちかけるメイヴとの出会いが、オーティスの日常に大きな変化をもたらしていく。

最初は息子に過干渉で性の問題にオープンすぎるジリアン・アンダーソン扮する母親が強烈で目を引くが、個性的で悩めるティーンエイジャーたちのドラマは見応え満点。恋愛や自身のセクシャリティ、初体験などの性行為にまつわる子どもたちの悩みは、思わず笑ってしまうもの多いが、大人が見ても「わかる〜」と共感してしまうような普遍性がある。またオーティスとLGBTQの友人とのエピソードにホロリとしたり、オーティスと家庭環境が複雑なメイヴとの関係性にヤキモキしたりと、青春ドラマの要素に加えて多様性をめぐる社会的な問題を、魅力的な登場人物たちの姿を通して親しみやすく伝える優秀だ。

190400-SE_01055.jpg

オーティス役は『ヒューゴの不思議な発明』のヒューゴ役だった、イギリス人俳優エイサ・バターフィールド。メイヴ役はフランス出身で本作で人気急上昇中のエマ・マッキー。

190400-SE_00182.jpg

明るく前向きにありのままの自分でい続けようとする、オーティスの親友でゲイの黒人エリック(ンクーティ・ガトワ、左)も魅力的!

「セックス・エデュケーション」予告編。

Netflixオリジナルシリーズ「セックス・エデュケーション」

原題/Sex Education
クリエイター/ローリー・ナン
出演/エイサ・バターフィールド、エマ・マッキー、ジリアン・アンダーソン、ンクーティ・ガトワほか
Netflixにて独占配信中

【関連記事】
【海外ドラマ】前向きな女性たちに、パワーをもらえる物語。
秋の夜長に楽しみたい、海外ドラマ10選。

texte:SACHIE IMA

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
パリとバレエとオペラ座と
世界は愉快

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories