おこもりGWのための海外ドラマ・セレクション。#03 【海外ドラマ】先端を疾走する作り手、その個性にはまる。

Culture 2019.04.25

「MR.ROBOT/ミスター・ロボット」のサム・エスメイル、『アナザー・プラネット』『ザ・イースト』などユニークな映画を生み出したブリット・マーリング、「ビッグ・リトル・ライズ」の演出を手がけたジャン=マルク・ヴァレ。百花繚乱のテレビ・配信業界において、押さえておきたい注目の才人たちによる新作をチェック。

めくるめく映像とサウンドで、迷宮へと誘う。

「ホームカミング」(2018年~)

オスカー女優のジュリア・ロバーツが、初めてテレビシリーズの主演を務めたサイコロジカルスリラー。アメリカで急成長しているポッドキャストのオリジナルドラマを原作としている。

”ホームカミング”と呼ばれる民間企業が運営する帰還兵支援センターで、ケースワーカーとして働くハイディ・バーグマンは、PTSD(心的外傷後ストレス障害)の兆候があるウォルター・クルーズとのセッションを行っていた。それから4年後。彼女は海辺のレストランのウェイトレスをしており、当時の記憶の一部が欠落している。現在は閉鎖した施設について、国防総省の調査員が調査のためにハイディを訪れたことから過去の記憶が呼び覚まされ、驚くべき陰謀が明らかになる……。

過去と現在で画面のサイズが異なる、アルフレッド・ヒッチコックが『めまい』で使った撮影技術「めまいショット」ほか、『殺しのドレス』『カプリコン・1』など過去のカルト作から45もの曲を使用するなど、凝りに凝った映像&サウンドが迷宮へと誘う。全話の監督は、ラミ・マレック主演のテクノスリラー「MR.ROBOT/ミスター・ロボット」のクリエイターとして注目のサム・エスメイル。製作総指揮を兼ねるロバーツのたっての願いで実現したコラボレーションは、極めて現代的でありながらもクラシック映画の香りに満ちたロマンがある。

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主演のジュリア・ロバーツ(右)と、『ビール・ストリートの恋人たち』で知られるウォルター役のステファン・ジェームズ(左

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『アントマン&ワスプ』や「MR.ROBOT/ミスター・ロボット」でも気を吐くボビー・カナヴェイル(右)が演じる、ハイディの元上司が物語のカギを握る。

「ホームカミング」シーズン1の予告編。

「ホームカミング」

原題/Homecoming
クリエイター/サム・エスメイル
出演/ジュリア・ロバーツ、ステファン・ジェームズ、ボビー・カナヴェイルほか
Amazon Prime Videoにて全話独占配信中

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ブリット・マーリングが手がける、野心的なSFミステリー。

「The OA」(2016年~)

7年前の少女失踪事件をきっかけに、臨死体験や次元を超えた異色の物語が展開するSFミステリー。ヘンテコな「動作」をめぐるミステリータッチの物語は、パートⅠの最終話で「なるほど、そういうことだったのか!」とわかったような気持ちにさせられる。だが、パートⅡでは冒頭から世界観がぐぐっと広がり、ようやく物語の全体像が見えてくる中盤以降は驚きの連続。パートⅡの幕切れのゾワっとくる感じは、人気の「ブラック・ミラー」にも通じて早くも次が待ち遠しくなる。

ザル・バトマングリッジ(兼監督)とともに企画・製作総指揮を手がける『ザ・イースト』のブリット・マーリングは、主役も務めてハリウッドでも注目の才能だ。脚本を手がけた主演作のSF『アナザー・プラネット』、製作・脚本・主演を兼ねたスリラー『ザ・イースト』(監督はバトマングリッジ)などの映画でも、マーリングの作風はジャンルに関わらず人間の内面を探求するスピリチュアルなものを感じせるカルト作と言える。そうした特徴が本作では炸裂しており、野心的で既存の枠に当てはまらない大胆さが面白い。摩訶不思議な映像世界にどっぷりと浸ってほしい。

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奇妙な物語のクリエイターにして、主人公のOA/プレイリーを演じるブリット・マーリング。写真はパートⅠより。

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プレーリーが絆を築いた通称BBAを筆頭とする仲間たちとのエピソードは、思わず応援したくなる。写真はパートⅡより。

「The OA」パートⅠの予告編。

Netflixオリジナルシリーズ「The OA」

原題/The OA
クリエイター/ブリット・マーリング、ザグ・ザル・バトマングリッジ
出演/ブリット・マーリング、 ジェイソン・アイザックス、 エモリー・コーエンほか
NetflixにてパートⅠ~Ⅱ独占配信中

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賞レースでも話題を振りまいた、美しきスリラー。

「シャープ・オブジェクト KIZU-傷-:連続少女猟奇殺人事件」(2018年)

『ゴーン・ガール』の原作者ギリアン・フリンの作家デビュー作『KIZU-傷-』を、『メッセージ』のエイミー・アダムスが製作総指揮兼主演を務めてドラマ化。深刻なトラウマを抱えた記者カミール・プリーカーが、連続少女殺人事件の取材のため久々に故郷の街に戻ってくる。事件の捜査を進めながら、カミールはアルコール依存症や自傷行為を繰り返す原因となった問題と向き合うことに。

凄惨な事件以上に、カミールの内面をあぶり出すような濃密な映像世界はヘビーだ。特にわが子に異常な執着心を抱き、歪んだ愛情でじわじわと真綿で首を絞めるかのような毒母アドーラとカミールの間に流れる、静かだが張り詰めたテンションに圧倒される。同時に、カミールの異父妹アマの日常やカミールのティーンエイジャー時代のエピソードなどから、小さな街の閉塞感と女性に対する見えないプレッシャーが事件の真相とオーバーラップしていく展開が見事。

全8話の監督は、『ダラス・バイヤーズクラブ』や「ビッグ・リトル・ライズ」のジャン=マルク・ヴァレ。現実の堪え難い残酷さとは裏腹に、ハッとするほどのきらめく瞬間を演出する映像世界が美しく胸に残る。

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自傷行為を隠すために、常に露出の少ない服を着ているカミール(エイミー・アダムス)。

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母親アドーラ役のパトリシア・クラークソン(中央奥)とエイミー・アダムスの演技合戦が見もの。妹アマ役のエリザ・スカンレン(中央手前)はグレタ・ガーウィグ版『若草物語』のエイミーを演じる注目株。

「シャープ・オブジェクト KIZU-傷-:連続少女猟奇殺人事件」予告編。

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「シャープ・オブジェクト KIZU-傷-:連続少女猟奇殺人事件」

原題/Sharp Objects
監督/ジャン=マルク・ヴァレ
出演/エイミー・アダムス、パトリシア・クラーソン、クリス・メッシーナ、マット・クレイヴンほか
ブルーレイ コンプリート・ボックス(2枚組)¥12,204/レンタル中
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
※R-15:本作には、一部に15歳未満の鑑賞には不適切な表現が含まれています。

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texte:SACHIE IMA

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