おこもりGWのための海外ドラマ・セレクション。#04 【海外ドラマ】トレンドのSF要素を愉しむなら、このシリーズ!

Culture 2019.04.26

タイムトラベルやパラレルワールド、マルチバース(多元宇宙論)といったSF要素は、アメコミやSF大作だけでなく、日常の延長線上として人間ドラマや恋愛ドラマにも使われるようになっている。ヒーローものから人間ドラマ、そして現在のトレンドに大きな影響を与えた「ブラック・ミラー」の3本をセレクト。

世界が熱狂する、スタイリッシュなヒーローもの。

「アンブレラ・アカデミー」(2019年~、Netflix)

2013年に解散した人気ロックバンド、マイ・ケミカル・ロマンスのフロントマンだったジェラルド・ウェイと、ブラジルのイラストレーター、ガブリエル・バーによる同名コミックの映像化。大富豪ハーグリーブズ卿の養子となった7人(1号〜7号)のうち6人は、”アンブレラ・アカデミー”として地球の平和を守るスーパーヒーロー集団だった。その後、成長して別の道を歩んでいたが、養父の死で5人が再会。そこへタイムトラベルで未来に行き行方不明だったナンバー5が突然現れ、8日後に地球が滅亡することを告げる。

「X-メン」シリーズや『ウォッチメン』のような設定を彷彿させるが、そう簡単に6人はヒーローにはならない。各々が子ども時代の養父との間に確執があり、唯一何の能力もないヴァーニャは兄弟姉妹と複雑な関係だ。養父の死の真相、ヴァーニャの秘密、謎の刺客、そして家族が抱える問題とは? ミステリーの要素が強く次が気になる展開に、ウェイがレイ・トロをフィーチャーした「Happy Together」ほかの多数の楽曲とアクションシーンなどのあえてミスマッチ感のあるコラボレーションは、不思議な映像世界を作り出している。エレン・ペイジやメアリー・J・ブライジ、トム・ホッパーらが、敵も味方も誰も彼もが愛すべきキャラクターを演じていのもめちゃくちゃ楽しい!

190400-Umbrella-Academy-00831.jpg ”アンブレラ・アカデミー”として世界の平和を守る存在だった養子たち。その後、何があって異なる人生を送ることになったのか?

190400-Umbrella-Academy-03150R.jpg行方不明になった時のままの姿で戻ってきたナンバー5(左端)。未来で彼が見た世界の終末を防ぐことはできるのか?

「アンブレラ・アカデミー」予告編。

Netflixオリジナルシリーズ「アンブレラ・アカデミー」

原題/The Umbrella Academy
クリエイター/ジェレミー・スレイター
出演/エレン・ペイジ、 トム・ホッパー、 デヴィッド・カスタニェーダ、メアリー・J・ブライジほか
Netflixにて独占配信中

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タイムループをモチーフにした、摩訶不思議な映像世界。

「ロシアン・ドール:謎のタイムループ」(2019年~)

パーティの夜、早すぎる死を迎えたナディアは、目覚めると同じ夜の同じ空間に戻っている。あれ?と思うが、次は別の選択をすれば助かるかもしれないと考えるものの、どうやっても彼女は死ぬ。そして死ぬたびにまた同じところから人生を始めなければならない。ハリー・ネルソンの「Gotta Get Up」の軽快なリズムにのせて、ぐるぐると同じようで異なる日常のタイムループから逃れようとするナディアは、ある男性と出会うことによって少しづつ変わっていく。

生と死、実存をめぐる問題を扱いながらも、どこかコミカルでシュールな世界観を構築した本作は、解説すると小難しいことがいくらでも書ける要素がありながら、単純にどうやったらこのループを抜け出せるのかを楽しむ娯楽性に長けている。もし、あの時こうしていたら? あるいは過去に戻ってやり直すことができるなら、よりよい人生を選ぶことができたのだろうか? SF要素を駆使して日常の延長を描く作品として、古くはビル・マーレイ主演の『恋はデジャ・ブ』やグウィネス・パルトロウ主演の『スライディング・ドア』などを思わせるものがある。

190400-russia-15619.jpg主演は「オレンジ・イズ・ニュー・ブラック」のナターシャ・リオン。『バチェロレッテ -あの子が結婚するなんて!』の監督レスリー・ヘッドランド、エイミー・ポーラー、そしてリオンの多才な女性3人がクリエイターを務めている。

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「シカゴ・ファイア」のピーター・ミルズ役でお馴染みのチャーリー・バーネット(左)が、ナディアと関わるアラン役を好演。

「ロシアン・ドール:謎のタイムループ」予告編。

Netflixオリジナルシリーズ「ロシアン・ドール:謎のタイムループ」

原題/Russian Doll
クリエイター/レスリー・ヘッドランド、エイミー・ポーラー、ナターシャ・リオン
出演/ナターシャ・リオン、 チャーリー・バーネット、 ユル・ヴァスケスほか
Netflixにて独占配信中

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SF人気を牽引する、1話完結のオムニバスドラマ。

「ブラック・ミラー」(2011年~)

テクノロジーがもたらす功罪によって、現代社会に生きる人間たちのダークな面を痛烈な風刺とともに描くSFアンソロジー・シリーズ。現在、シーズン4まで配信中だが、1話完結なので最新のシーズン4から観てもいいし、エミー賞に輝くエピソードから入るのでも問題ない。いずれも後味の悪さや日常に潜む悪意を暴き出す物語が多いが、なかにはテクノロジーの進化が思いがけずもたらす美しいものも見てせてくれる。最近の世界各国の新作には「ブラック・ミラー」を彷彿させるシリーズのなんと多いことか!

たとえば本特集で取り上げた「The OA」「ロシアン・ドール:謎のタイムループ」なども当てはまる。近作ではスペインのローカルの作品「あなたに出会っていなければ」やフランス発の「OSMOSIS/オスモシス」などもそう。「ブラック・ミラー」的な世界観が映像業界、各国のクリエイターに与えた影響は計り知れない。

注目なのはインタラテクィブ作品「ブラック・ミラー:バンダースナッチ」だ。劇中に登場する選択肢はユーザーが選ばずともストーリーは進んでいく。しかし、多くのユーザーが選択を行い、何パターンもの展開を楽しんだというNetflixのデータもあるという。視聴者がドラマの主人公の運命を握っているように見えて、実は番組と視聴者、作り手と視聴者の関係はマトリョーシカのように何重にも複雑な入れ子状態になっているようにも見える。ほかの作品とリンクする点を考えていくと、なんだかちょっとゾッとしてしまうものもあるが、これぞテクノロジーと映像の未来形の一つであることは間違いない。

190400-BM_S4_USS.jpg第70回エミー賞で4部門を受賞した「宇宙船カリスター号」は、シーズン4の第1話。

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別れのタイミングまで決められてしまう、男女交際のシステムに疑問を持ったあるカップルの行く末は……? シーズン4の第4話より。

「ブラック・ミラー」シーズン3の予告編。

Netflixオリジナルシリーズ「ブラック・ミラー」

原題/Black Mirror
クリエイター/チャーリー・ブルッカー、アナベル・ジョーンズ
Netflixにてシーズン1~4を独占配信中。

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texte:SACHIE IMA

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