夢の対談が実現。 【第1回】石井ゆかり×しいたけ.による、令和時代の歩き方。

Culture 2019.07.22

本誌の連載「石井ゆかりの星占い」でもおなじみ、ライターの石井ゆかりさんと、「VOGUE GIRL」にて連載中の「しいたけ占い」で人気の占い師、作家のしいたけ.さんによる豪華対談を実現! 本誌エディターの青木良文を進行役に、令和時代の読み解き方についてたっぷりと伺った。4回連載でお届けする第1回は、「令和の第一印象と星の動きがもたらす価値観の変化」について。

「価値あるモノのカタチが変わる」
星の動きから眺める、令和の時代。

青木良文(以下、A):おふたりとも、今日はお時間を頂きましてありがとうございます。しいたけ.さんとは、はじめましてですね。

しいたけ(以下、S):はい、よろしくお願いします。

A:石井さんとは、2010年の連載開始以来、編集を担当させていただいて9年目。確か連載のスタートしたあたりも、時代が変わるタイミングでしたね。

石井ゆかり(以下、I):そうですね、2011年3月に天王星が動いた時期の少し前あたりだったと思います。

A:今日は大きなテーマとして、令和の時代のムードやその読み解き方などについて教えていただければと思います。5月1日に元号が変わったことで、世の中の空気感やみなさんの気持ちにも変化が生じている気がしていますが、そんな中、石井さんの星占いとしいたけ.さんのリーディングに重なる部分はあるのかな、と。 まずは、「令和」と聞いた時の第一印象からお伺いできますか?

S:僕は、みなさんがおっしゃるように、やわらかい雰囲気だなあと。梅の花を愛でながら詠んだという和歌が出典元なんですよね。

I:そのようですね。でも、私は内心、少しヒヤッとしました。「令」の発音が冷たい印象だったのと、字面から「号令」や「命令」が思い浮かんで。

A:姓名判断の見解だと「令和」は13画で、「人気」「成功」「名誉」などの気を持つ良い画数だそう。星占いでは、時代の変化を示すような星の動きは出ていますか?

I:わかりやすいところだと、今年の3月に、天王星が牡羊座から牡牛座に移動しました。前回の移動は2011年の東日本大震災の直前で、今回は改元の年。このふたつはもちろん日本だけの話ですが、時代の節目を感じさせる出来事が重なったなと思います。

A:やはり天王星は、時代を見る際の重要なポイントなんですね。そして来年は、約20年に一度、木星と土星が会合する、グレートコンジャンクションという大きな星の動きもありますよね。

I:はい、グレートコンジャンクションは2020年の年末頃に起きます。星占いの視点から見ると、2019年から2021年頃までは時代の節目感が強いと思いますね。

A:来年のグレートコンジャンクションは、「地」の時代から「風」の時代に移り変わる意味があるとも聞きました。それは、世の中にどんな影響をもたらすのでしょう?

I:そうですね、先ほど、天王星が牡牛座に移動したとお伝えしましたが、牡牛座は地の星座の中で「価値あるモノ」を管轄しています。一方、天王星は物事を「解体」するような動きを象徴する星とされています。最近の例だと、仮想通貨が生まれたりキャッシュレス化が進んだり、本がデジタル化されたりなど「カタチあるモノがカタチを失う」現象が起きていて、それは非常に天王星ー牡牛座的なことだなと思いました。2020年のグレートコンジャンクションは水瓶座で起こりますが、水瓶座は天王星に支配された世界です。戦後、私たちは「物質的・経済的豊かさ」という価値観の中で生きてきたところがあると思うんですが、それが徐々に解体され、新しい価値観が支配的になっていく、その節目となるタイミングがちょうど、この時期なのかなと想像しています。

S:いや、おもしろいですね……。お話を伺いながら思ったのですが、いまって、もう欲しいと思える物質的なモノはあらかた揃っている気がするんです。持てる者しか持てなかった時代は「◯◯を持っている私」がアイデンティティになり得ていましたが、それはもう成立しなくなっていきそうですよね。

I:そうかもしれませんね。

S:僕は、令和のキーワードとして「二重人格」というのを挙げたいのですが、極端な言い方をすると、これから先は終身雇用制度ってほとんどなくなっていくと思うんです。先ほど石井さんがおっしゃった「解体」という言葉を使うなら、いわゆる正社員的なものの解体はどうしても進んでいく気がしていて、たとえば「週3日は会社、残りの2日は地方で農業」という働き方が一般的になっていくのではないかと。従来の価値観だと、一度会社に入ったら「どこそこの社員」ということが強いアイデンティティになっていたと思いますが、そこは解体されていくんじゃないでしょうか。もしくは10年スパンで仕事を変えるとか、そういうことがもう少しスムーズになっていくのでは。

A:なるほど……。

S:実は僕、仮想通貨や電子書籍には反対派だったのですが、最近LINE Payを使ってみたら便利でしょうがないですね。小銭を出してお釣りをしまう動作が極度に面倒になってしまって、価値観がガラリと変わるプロセスを実感しました。こういうのって本当に使ってみないとわからないんだなぁと勉強になりました。

A:わかります、キャッシュレスは便利ですよね!

S:占いを発信する側としては、時代の節目に人がどう変化するのかということは非常に興味深いです。いまって、「浮かれた」情報と「ちょっと落ち着こう」という情報のどちらを届けるべきなんだろう、とか。どうも見ていると、僕らより上の世代は、もう一度バブルを起こしたいと思っている気がするんです。でもいまの20代の人たちは、もっと冷めた見方をしている。ある種、バブルをまったく経験していない人たちって、未来も権威を持った大人たちのことも信じていなくて、「自分たちでコツコツやっていかなくては」と思っているんじゃないでしょうか。

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「モノからコトへ」
現れ始めた、価値観のシフト。

A:先ほど石井さんがおっしゃった「物質的な価値観が解体されていく」というお話ですが、すでにここ数年の流通業界では、モノ消費からコト消費に移りつつあるようです。これまでのモノを所有することに興味があったことから、シェアする方向へと変わってきていて、家もオフィスも車も、多くのモノがシェアされ始めているんですね。そういうことが可能になった背景には、やはりインターネットの存在が大きいのですが、今後また、デジタルネイティブの子たちが社会に出始めた時、そこが新たな時代の起点となっていくのかなと思います。

I:所有する、ということへの恐れのようなものがあるのかな、と思います。シェアしたり、レンタル、賃貸を組み合わせたりして生きていくというスタイルは、たとえば20年くらい前の世界にはなかった価値観ですよね。さっきしいたけ.さんがおっしゃった終身雇用制の話も似ていて、経営側も労働力を「所有」することから遠ざかっています。かつては家や車や家族を「持つ」ことがひとつの社会的信用でもあったのに、いまでは持っていることがリスクとなっている。たとえばお金を借りるのでも職に就くのでも「信用」が問題になるわけですが、現代ではどんなことが「信用」になるのかということが、まだちゃんとは定まっていないのかなとも思います。

A:なるほど、そうかもしれませんね。

I:いまは、どういうものなら信じられるんでしょうね。信じられるものを探している段階ということなんでしょうか。

S:いまの話、とてもおもしろかったのですが、あの、1回くだらない話をしていいですか? 僕はキャバクラとかホストのドキュメンタリー番組が大好きなんですが(笑)、先日、テレビ局に勤める知り合いと話をしていた時に、いまどきって、男性が金持ちかどうか、服装ではわからなくなってきているということを聞いたんです。

I:それは納得ですね。

S:特にデジタルネイティブに近い人たちほど服装で注目されることを煩わしく感じるみたいで、一年中、Tシャツにデニムにサンダルでいる人も少なくない。服装や勤めているビル、住んでいるエリアなんかでチヤホヤされたくないという思いがある半面、でも承認欲求がなくなるわけではないので、それがいまは、フォロワー数とかアクセス数に向かっているのではないか、と。最近は、フォロワー数がお金に還元される仕組みも現れましたしね。ただ僕はなんとなく、それはそれでキツくないかなと思うわけです。だってユーチューバーになったら、毎日企画を考え続けないといけないんですよ。それってけっこう苦しいことですよね。

I:とても際立った企画が作れたとしても、すぐに真似されて、「ふつうにある企画」になってしまいますよね。しかもいまは、そのアイデアやセンスを誰に認めてもらえばいいかわからなくなっている状況もあるのかなと思います。一昔前なら「新人賞を取ってデビュー」みたいなわかりやすいルートがあったのが、いまはアクセス数とかフォロワー数のような、投票制みたいな「数」が力を持っているように見えます。村上龍さんが以前、どこかで書かれていたんですが「人を感動させようと思ったら、小説なんか書くより1発殴る方が早い」と。とりあえずびっくりさせれば、みんなこっちを振り向きます。実際、それに近いことがネット上でよく起こっている気がするんです。たとえばお店の冷蔵庫に入ってみたり、樹海で自殺者を笑ったりするのは、そういうことなんじゃないかと。ショックを与えることでとにかく振り向いてもらう、という発想が純化するというか。

S:とにかく「ゴールがわからない」というのは、あると思いますね。昔は、テレビに出ている憧れの人や、「あの店でごはんを食べればチヤホヤされる」(笑)と教えてくれる雑誌や恋愛指南書なんかもあったりして、それがある程度は信仰を集めていたじゃないですか。雑誌も、テレビなどのメディアも、「もう一歩上の立場にいくための指南書」みたいなところがあって、それをけっこう平和にのんきにやっていれば、ある程度「こいつはできるやつだ」って認められた部分はあると思うのです。でも、いまの「個性化の時代」にあっては、それだけだと採点が厳しい。さらにそこから自分の個性を出していかなきゃいけない。

I:そうですね、昔は「ある程度までなら信じられるもの」が一般的に共有されていたけど、いまはそれが正当に批判され、失われつつある。「では一体、どんな幸せを目指せばいいんだろう?」となった時、「いやいや、幸せはめいめいで探しましょうよ」と言われて、みんなで探し始めているところなのかなと思います。ただ、まだ確たるものが見つからない段階では、不安も強くなるのかもしれません。私自身も、そういう不安を抱えているところがあるような気がします。不安というか、諦念に近い怯えみたいなものというか。漠然としているんですが。

2回目に続く

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石井ゆかり
ライター。星占いの記事やエッセイなどを執筆。『12星座シリーズ』(WAVE出版刊)は120万部を超えるベストセラーに。『3年の星占い 2018-2020』(全12冊)(文響社刊)も発売中。主宰ウェブサイトは「筋トレ」http://st.sakura.ne.jp/~iyukari
現在発売中の「フィガロジャポン」9月号では、大人気の袋綴じ付録「石井ゆかり 星占いスペシャル」が登場。星占いムック本、第2弾「石井ゆかりの星占い2」が好評発売中。

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しいたけ.
占い師、作家。哲学を研究するかたわら、占いを学問として勉強。
2014年から「VOGUE GIRL」で連載をスタート。最近ではウェブサービスnoteにてコラムや占いなどを執筆中。著書に『しいたけ占い 12星座の蜜と毒』(KADOKAWA刊)など。最新刊『しいたけ.の12星座占い 過去から読むあなたの運勢』(KADOKAWA刊)は発売後すぐに増刷され、ベストセラーに。

texte : HARUKO MURAKAMI

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