江國香織が綴る、心を鼓舞してくれる旅の記憶の数々。
Culture 2019.10.27
日常を離れ、旅する気持ちを掻き立てられる。
『旅ドロップ』
江國香織著 小学館刊 ¥1,512
どうして旅に出るのだろう。このエッセイはひとつの答えになるかもしれない。距離や時間の長さの問題ではない。たとえ日帰りでも、ひるむ気持ちを鼓舞してくれる記憶の数々。初めて行ったパリで途方に暮れた時、女友達が言ってくれた言葉。嵐の日にバターパンを買うためだけに小倉に向かった日のこと。旅先で行く最初の店があるのは素敵だ。思い出の味。思いがけない出会い。日常を離れ、深呼吸するように自由を味わう方法が惜しみなく開陳されている。
【関連記事】
世界に「再発見」された女性作家の輝きに満ちた作品集。『掃除婦のための手引き書 ルシア・ベルリン作品集』
芥川賞作家・朝吹真理子の少し不思議な初エッセイ集。『抽斗のなかの海』
*「フィガロジャポン」2019年11月号より抜粋
réalisation : HARUMI TAKI