年末年始は海外ドラマ三昧。#01 【海外ドラマ】新章も話題沸騰、赤裸々に描くイギリス王室の内幕。

Culture 2019.12.01

イギリス女王エリザベス2世を中心とする英国ロイヤルファミリーの人間模様を、社会背景とともに描く傑作シリーズ。待望のシーズン3は治世初期のエリザベスを演じたクレア・フォイから、『女王陛下のお気に入り』（2018年）でアカデミー賞主演女優賞を受賞したオリヴィア・コールマンにバトンタッチ。そのほかのキャストも入れ替えて、1964年から77年までの2度のウィルソン内閣を中心とする時代を、華やかな衣装や美術セット＆映像美でつづる。

「ブロードチャーチ〜殺意の町〜」「Fleabag フリーバッグ」などドラマでも大活躍のオスカー女優、オリヴィア・コールマンの堂々たる女王ぶりは圧巻！

「ザ・クラウン」（2016年～）

コールマンの演技力を知っている人なら誰もが、新たな女王役に期待せずにはいられなかったはず。その予想をはるかに超えてくるほどに、冒頭からコールマンの演技は研ぎ澄まされ、静かな気迫と圧倒的な威厳に満ちている。初々しさも人間味も感じられた等身大の女王から、自信を持ち、女王としての風格を備えた人物へのシフトは完璧！　それゆえシーズン3では身近さや共感よりも、王室――かつてエリザベスが畏怖の念と、あるいは反発を覚えていたかもしれない――という名の底知れない闇に飲み込まれ、同化したといった印象も。無言のクローズアップで微細な表情の変化と面構えによって、コールマンが物語る王冠を戴く者としての“業”は、かくも過酷で残酷なのかと思わずにはいられない。

いっぽうで、「アウトランダー」（2014年～）のトビアス・メンジーズが演じる女王の夫フィリップのミッドライフ・クライシス、『ゴッズ・オウン・カントリー』（17年）のジョシュ・オコナーが完コピと言える演技を見せるチャールズ皇太子が、プリンス・オブ・ウェールズとして戴冠する際に見せた反抗心。そして王室から追放された前々英国王のウィンザー公（「グッド・オーメンズ」のデレク・ジャコビ）が、今際の際まで切望し続けたイギリス王室への復帰。彼らをフィーチャーしたエピソードはいずれも今年屈指のベストエピとも言える完成度の高さで、これまでにも描かれてはきたが、常に女王の影の存在として生きる人生を強いられる男性側の視点にも重点が置かれているのが好ましい。

ヘレナ・ボナム=カーターが演じる女王の妹マーガレット。すっかりすれっからしになってしまった姿もなかなか味わい深い。

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とはいえ、シリーズ序盤と最後で話題をさらうのはヘレナ・ボナム=カーター扮するマーガレット王女だ。こちらもコールマンに負けず劣らず、口角をグッと下げた不敵な面構えには、常に姉の2番手に甘んじる人生へのやり切れなさと不満を隠しもしない。破綻した結婚生活、年下の愛人スキャンダルなど、ゴシップには事欠かないエピソードの数々に、私たちがよく知っている王室スキャンダルに近づいてきたなあなどと、後ろめたくもわくわくしたり。

ゴシップという意味ではチャールズとカミラ、社交界の人気者アンドリューの三角関係を巡るエピソードも。事実がこのとおりだったかは別として、愛する人との恋愛もままならない現実に胸が痛む人も多いはず。王室に生まれたというだけで多くの犠牲を強いられる人生を見せつけられるたびに、日本の皇室について考えを巡らせる人もいるかもしれない。そしてシーズン4に登場する若き日のダイアナを待ち受けている暗い未来を思うだけで、いまから悲しみを覚えてしまう。