年末年始は海外ドラマ三昧。#04 【海外ドラマ】ゼンデイヤがティーンの闇をさまよう、衝撃作。

Culture 2019.12.04

『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』(2019年)のMJ役でも人気のゼンデイヤ。ディズニーチャンネルの「シェキラ!」(2010〜13年)や、人気ダンスコンペティション番組「ダンシング・ウィズ・ザ・スターズ」(05年〜)では、見事なダンサーぶりを発揮。歌手としても活躍する多彩なゼンデイヤは強い個性を持ち、同時にヘルシーで快活なイメージがある。そんな彼女が、ドラッグとアルコール依存症の女子高生を演じる衝撃作が「ユーフォリア/EUPHORIA」だ。

191125-EUP_102_Promo_Shot1_20190514.jpg女性キャラクターのキラキラと輝く蛍光のシャドウやスワロフスキーのフェイククリスタル、パールなどを使ったユニークでインスタ映えするメイクは、Z年代の間でひとつのムーブメントに。

「ユーフォリア/EUPHORIA」(2019年)

ティーンエイジャーのリアルを伝える衝撃作といえば、「13の理由」(2017年〜)を思い浮かべる人も多いに違いない。「13の理由」はミステリー仕立てのドラマの中で自殺や虐待、いじめ、レイプ、メンタルイルネス、そしてデジタルネイティブ世代のSNSをめぐる問題を描いて物議を醸した。だが、それすらも甘かったと思えるほど、本作は文字とおりの”劇薬”。登場人物たちの他人には言えない問題の数々は深刻で、ショッキングなエピソードの連続だ。言いようのない絶望感と、耐えがたいほどの痛みから目を逸らすことなく高校生の日常を群像劇として描き切ることで、Z年代が抱いているリアルな感情を浮き彫りにする。

ゼンデイヤが演じるルーがドラッグとアルコールに溺れて浮かべる恍惚とした表情や、薬欲しさに嘘をつき、親を騙し、自分のことを心配してくれる売人に悪態をつきながら薬を売ってくれとすがる姿は、みじめで哀れとしか言いようがない。そうした役に果敢に挑戦するゼンデイヤは、まさしく若手を代表する俳優のひとりと言えるだろう。共演者もまた新世代の才能にあふれている。

191125-Euphoria-2.jpgドラッグ&アルコール依存症のルー(ゼンデイヤ、右)と心を通わせるトランスジェンダー女性のジュールズ(ハンター・シェーファー、左)。心を通わせるふたりの関係性もまた複雑なものとなっていく。

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ルーと心を通わせるトランスジェンダー女性のジュールズ役は、実際にトランスジェンダーでモデルとして活躍し、LGBTQを支援する活動家としても注目を集めているハンター・シェーファー。近年盛り上がりを見せるボディポジティブ活動家のハービー・フェレイラが演じるキャットも超個性的。『キスから始まるものがたり』(18年)で注目されたジェイコブ・エローディが体現するネイト役の内なる暴力性はトラウマ級だ。

淡々としたナレーション、ヒップホップなどを中心とした音楽(プレイリストを要チェック)、そしてなんともいえない独特の空気が流れる映像美。ありえないほど悲惨なのにうっとりと酔いしれるような感覚には、本作のタイトルにもなっている“多幸感”すら感じられる。だがドラッグで得られる快楽と同じように、この“多幸感”は幻なのだ。大胆で挑発的な意欲作。賛否も好き嫌いも分かれる作風でもあるが、いまの空気をダイレクトに映した10代の憂鬱は、誰にとっても他人ごととは思えないものがあるはず。

191125-EUP_102_20190507_Promo_Still.jpg原案はイスラエルの同名ドラマ(12~13年)。「ゲーム・オブ・スローンズ」の放送局HBO、ラッパーのドレイク、アカデミー賞作品賞受賞の『ムーンライト』を手がけている「A24」が製作に携わっている。

「ユーフォリア/EUPHORIA」予告編。

「ユーフォリア/EUPHORIA」

原題/Euphoria
製作総指揮/ドレイク
出演/ゼンデイヤ、ジュールズ・ヴォーン、ネイト・ジェイコブス、キャット・ヘルナンデス、ハンター・シェーファーほか
スターチャンネルEXにて配信中

 

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texte:SACHIE IMA

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