うまくやれない人間が愛おしい、短編の名手の最新作。

Culture 2020.02.09

ユーモアこそ、絶望の処方箋かもしれない。

『銀河の果ての落とし穴』

2001xx-livre-03.jpg

エトガル・ケレット著 広岡杏子訳 河出書房新社刊 ¥2,640

「夜に」は心配事を抱えて眠れない家族の話だ。たった2ページなのに、ひねりの利いた着地点にクスリとさせられる。「クラムケーキ」の主人公は50歳の誕生日を母親と祝う無職の男なのに心温まる読後感が待っている。短編の名手ケレットにかかれば、日常こそが解決不能の問題が山積みのディストピアなのだ。絶望を凌ぐための苦肉の策は、どうしたって調子っぱずれになる。うまくやれない人間をこんなにも魅力的に描かれたら好きにならずにいられない。

【関連記事】
言葉のプロが選ぶ、2019年に勇気をもらえた3冊の本。
アメリカの人気作家が繊細に描く、孤独を形作るもの。
フランス文学を代表する作家たちの、思いがけない素顔を知る。

*「フィガロジャポン」2020年2月号より抜粋

réalisation : HARUMI TAKI

Share:
  • Twitter
  • Facebook
  • Pinterest

フィガロワインクラブ
Business with Attitude
パリとバレエとオペラ座と
世界は愉快

BRAND SPECIAL

Ranking

Find More Stories