Things to Do! 2020

タグチ・アートコレクションの田口美和に学ぶ、アートの買い方。

特集

本誌3月号の特集「Things to Do! 2020 世界はしてみたいコトであふれてる」の1テーマとして取り上げた「いよいよアートを買ってみる」。

コレクターの視点から購入の心得をアドバイスしてくれたのは、タグチ・アートコレクションを運営・管理する田口美和さん。今回、本誌の番外編として、ご自宅を訪問。アートの買い方や飾り方について話を聞いた。

200217-taguchi02.jpgカナダの作家ブレント・ワッデン『Alignent#24』(2013年)と出合った時のことを説明する田口さん。「繊維を織ることで幾何学模様のペインティング作品のように仕上げる手法と作風に惹かれました」

200212-taguchi02.jpg玄関を入ると鹿がモチーフの名和晃平『PixCell-Double Deer#5 』(2011年)(左)と、大野綾子の石彫作品『Training/運動 』(2018年)(右)が出迎えてくれる。

タグチ・アートコレクションのスタートは1991年に遡る。田口さんの父親であり、機械部品や金型部品の専門商社ミスミグループで代表取締役を務めていた田口弘さんが、社員にアート作品を見てもらい、発想の転換を生み出してもらいたいという思いからアンディ・ウォーホルなどの作品を購入。評価が固定したアート作品ではなく、新たな才能が生み出す異質な表現を目にすることがイノベーティブな発想につながる、そんな考えが背景にあったのだとか。

以後、会社とは別に、個人での収集を開始。2014年頃にコレクションを引き継ぎ、現代アートの普及活動に尽力する。

「作家が現存する現代アートの分野では、作品を購入することは、可能性を買うこと。その作家の今後の応援団になる切符を買ったということです。新しい展覧会やプロジェクトを見に行く時にも違った視点が生まれるでしょうし、その作家さんの変化や成長に立ち会えるのはとても楽しいことで、作家さんにとってもうれしいことなのですよ」

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現在は収集作品が約500点となり、作家の国籍は日本に限らずグローバル。作品収集はどのように行うのだろう。

200217-taguchi01.jpgスイス出身の世界的キュレーター、ハンス・ウルリッヒ・オブリストが手がけているプロジェクト「It’s Urgent」。19年EU議会選挙の際にオブリストの依頼で、アーティストたちがそれぞれの危機意識をポスターで表明した。田口さんは、チューリッヒの美術館で展示されたポスターの縮刷版を持ち帰って額装した。「このポスターはすべて無料。拡散を目指した企画に参加した感覚です」。「art enpowers(アートは力をくれる)」に始まり、アートにまつわる多様な言説をグラフィカルに描いたポスターはオラファー・エリアソン作。

200212-taguchi04.jpg和室に展示されているのはオノ・ヨーコのカリグラフィックなペインティングと、2011年の東北の震災現場で見つけた時計を復元したエディション作品。筆致に惹かれて購入したら、たまたま和室の空間が最適だったのだとか。

「特に集中してチェックするのはアートフェア、美術館の若手作家のグループ展、ビエンナーレですね。ギャラリーは行くところがどうしても限られますが、フェアでは行ったことのないギャラリーや知らない作家と出合うこともできます。とにかく集中していろいろなブースを眺めること。そうすると『この人、気になる!』という人が時々いるので、フォローするようになります。フェアではそうやってチェックを中心にして、購入はギャラリーでその後の個展を見たり、ほかの作品を見せてもらったりしてから決めることが多いです」

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何よりも作品を見ること、本物をできるだけたくさん見ること。その作品から何を感じるか、‟体感すること”が何よりも大切なのだとか。

200212-taguchi05.jpg高田安規子・政子『Trump/切り札 No.2 ♡Q』(2011年)は、ミニチュアの細かな手仕事に想像力の広がる世界を展開する双子の姉妹による作品。小品がさりげなく廊下に展示されているのも魅力的。

「いきなり買うのではなく、自分だったらどういう作品が好きなのか、どういう作品を前にした時に心を動かされたのか、ざわつくのか、ワクワクするのか、しばらくそういう意識を持って作品を見て、自分と向き合ってみることをお勧めします。それで自分の好みの作家が出てきたら、ギャラリーで個展を見たり、そこで作家本人と会ったり、ギャラリーの方にわからないことを聞いたりすればより理解も深まり、作品選びも確かなものになります。これからアートを買おうとする人たちを、みなさん歓迎してくれるはずですから」

ギャラリーは、たとえるならば‟セレクトショップ”。まずはまんべんなくたくさんの作品が集まる美術館へ、東京であれば東京都現代美術館の常設展などに足を運べば、自然とアートを見る目が養われるはずと言う。

「家のここの壁に合いそうとか、部屋の雰囲気をこうしたいから、などの感覚で購入することはお勧めしません。アートは家具ではないですから、部屋の模様替えをしたらいらなくなるとか、飽きちゃったらおしまい、では悲しすぎます。少し時間はかかりますが、まずはアートの前に立って、アートを好きになることから始めていただきたいです。そのアートを手元に置きたいと感じた時に購入すれば、作品の経済的価値にかかわらず、いつまでもそのアートと楽しく過ごせると思います」

299214-taguchi01.jpg階段にはウィレム・サスナルの作品『Untitled』(2016年)を展示。

299214-taguchi02.jpgオスカー・ムリーリョ『Untitled (moneymaker!) 』(2013年)は、前出したブレント・ワッデン『Alignent#24』の対面に展示されている。

299214-taguchi03.jpgトイレにはさりげなく杉戸洋『Untitled』(2014年)。

田口美和 / Miwa Taguchi
タグチ・アートコレクション共同代表。ソーシャルワーカー、大学講師などを務めたのち、ミスミグループ創業者である父親の田口弘氏が始めたアートコレクションを受け継ぎ、2014年より現職。特定の展示会場を持たず、要請に応じて各地の美術館で展覧会を開催すると同時に、若手アーティストの発掘と作品購入を通して現代アートの普及活動に貢献する。国内外のアートフェア、展覧会を毎年多数訪問している。
https://taguchiartcollection.jp/

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texte et photos : RYOHEI NAKAJIMA

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