愚か者のダメな日常がいとおしい、ソーンダーズ短編集。
Culture 2020.03.03
ソーンダーズが人間の愚かさを笑うワケ。
『十二月の十日』
ジョージ・ソーンダーズ著 岸本佐知子訳 河出書房新社刊 ¥ 2,640
これで万事解決なんて処方箋はこの世にはないってことが、ソーンダーズを読むと身にしみる。その薬を飲めば、目の前の相手と恋に落ち、薬が切れたら、即座に忘れられる。コントロール可能な愛のモルモットにされた若者の不毛さを笑え。戦地では獣になれと言われたのに帰郷したらピースフルに振る舞えと諭される帰還兵のやるせなさを笑え。人間は愚かだ。しかしグロテスクな正しさに一矢報いることができるのも、また人間の愚かさなのだと教えてくれる。
*「フィガロジャポン」2020年3月号より抜粋
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réalisation : HARUMI TAKI