アーティスト、カンタ・デロシュが語る、フィガロで表現したパリ。

特集

フィガロジャポン5月号「パリジェンヌが暮らす街。」で、アートディレクションを手がけたグラフィックアーティスト、カンタ・デロシュ。パリと日本を拠点にグラフィックだけでなくブランドディレクションなど幅広く活躍し、パリ・オペラ・コミック座のインビテーションカードや2017~18年にはフランス・メッスで行われたポンピドゥー・センター・メッスでの『Japan-ness et Japanorama展』のメインビジュアルも手がけた。2018年には、三越伊勢丹の年間広告を手がけ、その後も同社の四季折々のイベントへ作品を提供し続けている。今回、「アートとデザインでフランスと日本を繋げる」という彼の哲学に共感したフィガロジャポンは、創刊30周年特別号のパリ&パリジェンヌ特集のデザインをオファー。彼がデザイン&アートの世界に入った経緯やフィガロジャポンを通して表現したかったパリについて語った。

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Kanta Desroches  カンタ・デロシュ

パリ・フランス生まれ、グラフィックアーティスト。フランスと日本を拠点に、グラフィックだけでなくブランドディレクションなど幅広く活躍する。2010年、グラフィックデザインスタジオ「LSD STUDIO」を設立。フィガロジャポンの公式インスタグラムで動画メッセージを発信してくれている。www.lsd.studio

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フィガロジャポン5月号「パリジェンヌが暮らす街。」では、さまざまなパリジェンヌが、ファッションやグルメ、雑貨、アート、ホテルなど、パリのお気に入りアドレスを紹介。

――カンタさんがグラフィック&デザインの世界に入られた、きっかけを教えてください。

父がパリのギメ美術館のキューレターで、ゴッドファザーがルーブル美術学校のディレクターをしていたため、美術館の館内で遊びまわっていたような幼少期を過ごし、自然と美術全般に関心を持つようになりました。また、母は中世のタペストリー技術の先生だったことから、自宅にあった織り機やさまざまな手芸素材に触れて、デザインやものづくりにも関心を持ちました。幼い頃からノートを持ち歩き、パターンや抽象的な絵など、思いついたものをすぐに描いてきました。ファッションや建築にも興味があったのですが、僕が学生の頃は、グラフィックデザイナーという職業がまだメジャーではなかったんです。だからこそグラフィックという新しい手段で、自分の世界を表現したいと思って、この仕事に就きました。

――幼い頃からアートに触れる機会が多かったとのことですが、特に影響を受けたアーティストや作品など教えてください。

美術館で触れる機会の多かった古代の作品から、ジョットなどの中世の作品、そしてコンテンポラリーアートまで、影響を受けた作品の数は膨大です。幼い頃は、フランスの子どもたちが大好きなサン・テグジュペリ(『星の王子さま』著者)の世界に魅了されました。美術館に展示されていた作品からは、マティスの画期的な色使いやカットワーク、ジャン・アルプのフォルムなどに心を寄せ、また両親の影響からジャポニズムが果たした役割にも関心を持ち、その時代のアールデコにも心酔しました。同じ流れで、琳派の色使いや上坂雪佳の作品にも影響を受けたし、イサム・ノグチも大好きです。父が中国の現代作家、曾海文と親しくしていたこともあり、山水画に興味を持ったこともあります。ほかにもサイ・トゥオンブリーやピエール・スーラージュ、そしてカンディンスキー、また音楽だとエリック・サティやドビュッシー、バンジャマン・ビオレからも影響を受けました。あまり知られていませんが、ポーランドの現代作家ジェタ・ブラテスクも好きです。

――デザイン、アート、映画など、どんなクリエイションからデザインのインスピレーションを受けているのでしょうか。

インスピレーション源については、特に決まったルールなどはありません。あえて挙げるとすれば、さまざまな美術作品や旅で訪れた都市の日常風景、自然などでしょうか。

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カンタ・デロシュの静と動、和と欧の世界観。

――幾何学的に構築されたグラフィックがカンタさんならではの世界観ですが、その世界観はどのように生み出されたものなのでしょうか。

主にソフトウェアを駆使して制作することが多いのですが、常に「完璧なデジタルの世界で、いかに感情を揺さぶるような表現ができるか」が課題です。僕のなかには、計算された完璧な日本の「静」の美意識と、フランスらしい感情的な「動」という、ともすると相反する表現が共存しています。ソフトウェアの完璧な世界に、手作業でペーパーカットされたパーツをコラージュするように、独特の動きをつけることで、このふたつの世界を忠実に表現しようとしてきました。僕の作品は、日本らしさとフランスらしさを併せ持ちながら、同時にどちらにも属さないもの。そんな風に表現できるのではないでしょうか。

――これまで手がけてきたパリのオペラ・コミック座のインビテーションカードの中で、特に気に入っていらっしゃるものを教えてください。

すべて気に入っていますが、敢えて挙げるならば、『Les Pêcheurs de perles(真珠採り)』というオペラのための作品でしょうか。本来のストーリーはインドを舞台にしているのですが、日本人の演出家が設定を沖縄へ移し、日本的な演出を施しました。この演目のために、古くからの型紙(着物や手ぬぐいなどの染色用具物)からインスピレーションを受けて創り上げました。この作品は、波なのか、霧なのか、雲なのか、見る人によっていくつもの解釈がある点が気に入っています。

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オペラ・コミック座インビテーションカード『Les Pêcheurs de perles』(真珠採り)。

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オペラ・コミック座 インビテーションカード『Ciboulette』(シブレット)2013年。

――2018年のポンピドゥー・センター・メッスでの作品は、日本がテーマでした。国際的な感性を持つカンタさんがイメージする、日本の美とはどのようなものでしょうか?

欧米では主に人間を中心としたクリエイションが行われてきたのに対し、日本の美は、アカデミック色が強い欧米と比べてクラフト的な要素が重んじられる傾向があったと思います。感情よりも自然に寄り添うことでこそかなう日本のシンプルな美しさと、卓越した完成度に心魅かれます。

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ポンピドゥー・センター・メッス『Japan-ness et Japanorama展』2018年のタイポグラフィとメインビジュアル。

――日本でも伊勢丹三越のキャンペーンのアートディレクションを手がけられていましたが、どのようなきっかけで始まったものなのでしょうか。

きっかけはプライベートなご縁だったのですが、三越伊勢丹の父の日キャンペーンからスタートしました。その後さまざまなキャンペーンを任せてもらえるようになり、2018年の年間広告キャンペーンも担当させていただきました。特に最近のものでは、2019年の母の日の作品が気に入っています。結ばれず、ただ風になびくリボンは、自由な女性としての母親を連想させるもの。役割に縛られず、いつまでも若く、生き生きと自分の人生を楽しむ、そんなエネルギッシュな女性像を表現しました。

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三越伊勢丹、母の日キャンペーン 『Rubans Volants』(風に舞うリボン)2019-20年。

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パリとフィガロ、グラフィックの方向性。

――今回、フィガロジャポン5月号「パリジェンヌが暮らす街。」特集のアートディレクションを担当していただきましたが、どのようなイメージでグラフィックの方向を考えたのでしょうか?

パリの次期市町選の重要な争点であり、パリ市民が大きな関心を寄せているのが“環境問題”です。パリの美しさはいくつもありますが、なかでも建物と自然が融和した風景は特別です。いわゆるフランス式にデザインされた庭園から、18区や20区で目にするような自由に育った道端の植物まで、街に点在する緑はそれぞれの美しさで街に溶け込み、パリ市民と共生しています。植物は私たちの破壊的な生き方を顧みるきっかけとなり、また同時に、私たちの日常にロマンを与えて豊かにしてくれるもの。そんなパリの緑を感じてもらいたいと思い、今回フィガロジャポンのために、ギヨーム・アポリネールがかつて表現したようなカリグラムを使って、詩的なパリを意識しながらグラフィックを描きました。

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フィガロジャポン5月号「パリジェンヌが暮らす街。」より。

――特集テーマは「パリジェンヌが暮らす街。」でしたが、カンタさんにとってパリジェンヌとはどんなイメージですか?  パリジェンヌらしさとは何だと思いますか?

パリで生まれ育った、生まれ育ってないに限らず、パリで活躍する強い女性こそ最もパリジェンヌらしいと思います。そして世界のさまざまな文化や政治に強い関心を持ち主張する女性たちが、パリのコスモポリタンな豊かさを支えていると感じています。

パリだけでなく、日本での活動もますます広がっているカンタ・デロシュ。
4 月には、デザインを担当した銀座もとじとのダブルネームの風呂敷が発売される予定だ。
“繋がり”をテーマに、人と人との繋がり、自然との繋がり、宇宙との繋がりを大切にしながら、伝統文化を未来へ継承
していくというメッセージが込められている。日本古来より大切なものを包むための布として多くの人々に親しまれるア
イテムを通して、伝統文化の素晴らしさを見つめるきっかけとなってほしいという。

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「GINZA MOTOJI × Kanta Desroches」風呂敷(80cm×74cm)¥19,800は、4月19日より銀座もとじ全店オンラインショップにて販売www.motoji.co.jp

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