いま、相手の声に耳を傾けるようになっていませんか?

Culture 2020.04.25

外出制限や外出自粛を強いられるなか、人との絆が強くなったり、生の声で語り合うことを再発見していませんか? 現代人が失いつつある能力「コンシャス・リスニング(意識的なリスニング)」に、いまこそ耳を傾けてみよう。

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photo : iStock

いま1日に何回、「本物の」会話をしていますか? 3回?5回? それとも10回? いずれにしろ、いつもよりずっと多くなっているはず! 昼間の多くの時間、そして夜も、電話で話す時間が多くなっているのではないだろうか。そこには、「バラガンに20時ね」「OK」などと、簡単なメッセージのやりとりしかなかった友人たちとの長電話も含まれているはずだ。

「声を聞いたり、面と向かってしゃべることができなくなったいま、人の声は貴重なものになっています」と、『Trêve de bavardages(おしゃべりの休戦)』の著者であり、TEDxで「Changer le monde, un conversation à la fois(世界を変える、同時カンヴァセーション)」を語ったばかりのファニー・オージェはいう。「この独特な時期、私たちにとって聞くことが明らかに変化しています。機械的に交わしていた、『元気?』などの純粋な挨拶の問いかけが、どれも本来の意味を取り戻しています。自分が熱心に相手の答えを聞くようになったことに、誰もが驚いているはずです」

ティーンエージャーでさえ、食事のマナーを注意されても反抗せず、会話に参加する。私たちはみんな知らないうちに、「コンシャス・リスニング」を始めているのだろうか? コンシャス・リスニングとは、意識して聞くという意味。コミュニケーションの専門家であるジュリアン・トレジャーが提唱するコンセプトだ。それを取り戻せるとしたら、外出制限期間の貴重な収穫というわけだ。

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コクーンから出る

「コンシャス・リスニング」とはなんだろう。820万ビューを誇るTEDxの「5 ways to listen better(聞き上手になる5つの方法)」を見た人ならご存じだろう。それは現代社会で壊れ、失われていった能力――つまり、本当に相手に耳を傾ける能力のこと。歯に衣着せないトレジャーによれば、「世の中は本当に騒々しくなった。視覚的にも聴覚的にも不協和音があふれるなかで、聞くことは難しく、非常に疲れる作業です。誰もがひどくせっかちになり、長々と語られると怒りさえ感じてしまう。会話は個人的なメッセージの垂れ流しに置き換えられてしまった」

トレジャーが指しているのは、もちろん大量のSNSのこと。そこでは「聞くこと」の質は二の次だ。やり取りはなく、文章になるかならないかの独り言を積み重ねていく。「対話と演説の違いが希薄になっています」とオージェも言う。「聞くことはまったく違う行為です。それは他者と繋がること。この外出制限は通常の状況ではなく、なかにはたったひとりで自宅にこもっている人もいます。この状況下で、私たちは聞くこと、答えること、語ること、もう一度“本当の意味で”聞くことの繰り返しが、生きるために不可欠だとわかってきた。注意を傾けること、好奇心や疑問を持つことはとても大切なのですから」

「5 ways to listen better(聞き上手になる5つの方法)」。Japanese translation by Takahiro Shimpo

トレジャーは「私たちは聞く力が減退し、感受性が鈍ってしまっています」と指摘する。オフィスのオープンスペースで、電車の車中で、みんながヘッドフォンをしているのも、各人の孤立が拡大していることを示している。ヘッドフォンはもちろん周囲の騒音から守ってくれるけれど、それぞれを自分のプライベートな音響のコクーン(まゆ)に閉じ込めてしまう。「誰もが誰の声も聞かない世界なんて恐ろしい!」とトレジャーは講演を締めくくる。

オージェもトレジャーも、「聞く力は、読み書き、算数とともに、学校で教えられるべき必要不可欠な力」と位置付けている。失われゆくこの能力をどうしたら取り戻せるのだろうか? トレジャーが考案した、聞く力を再教育するプログラムの5つのポイントを紹介しよう。

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聞く力を取り戻すためには?

「ミキサー」遊び
とてもうるさい場所(たとえば賑やかなカフェ。いまなら、みんなが動き回っているアパルトマン内)で、一つひとつの音を聞き分けるエクササイズ。冷蔵庫の音、子どもの積み木が崩れる音、閉じた扉の向こうに聞こえるパートナーのオンライン会議の声……といった具合に。聴覚を研ぎ澄ますのが目的。

耳をリセットする
腰を下ろして、沈黙に3分間耳を傾ける(沈黙が無理なら、「比較的静か」を聞くのでもいい)。

「なじみの」音を好きになる
トレジャーによれば、どんな騒音にも、たとえどんなに嫌な音でも、それぞれに魅力がある。よく聞くと、乾燥機の音がワルツに聞こえてくる……かもしれない。“秘められたコーラス”の世界をのぞいてみよう。

聞く「ハンドル」を操作する
能動的/受動的、批判的/好意的、控えめ/外交的などなど、音階を奏でるように、さまざまなレベルの聞き方を遊んでみる。すっかり達人になるまでやってみよう!

RASAの頭文字を徹底する
コンシャス・リスニングの基本の頭文字。Receive(他者に注意を向ける)のR、Appreciate(うなずいたり相づちを打つ)のA、Summarize(特に「つまり」のような言葉を使いながら確認する)のS、Ask(尋ねる、質問する)のA。

外出制限の宙ぶらりんな時間を利用して、熱心に実行してみたい。いまがチャンス! 外出できるようになった時、お互いによりよく耳を傾けられるようになっているはず。

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texte : Valérie de Saint-Pierre (madame.lefigaro.fr)

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