56本の入選映画が、「カンヌ・レーベル」を獲得。

Culture 2020.06.06

例年なら5月に開催されるものの、今年は通常開催を断念したカンヌ国際映画祭。6月3日、映画祭ディレクターのティエリー・フレモーはオフィシャルセレクションを発表して、映画祭の健在ぶりを示した。

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コロナ禍の影響で開催をキャンセルしたカンヌ国際映画祭だが、バーチャルな形で存続する。6月3日、映画祭ディレクターのティエリー・フレモー(中央)と映画祭プレジデントのピエール・レスキュール(右)は、オフィシャルセレクションを発表した。(フランス・パリ、2020年6月3日)photo:Getty Images

開催を待ち望む声、ためらいの声の両方があったけれど結局、映画界最大のイベントのひとつであるカンヌ国際映画祭は開催されなかった。その長い歴史のなかでも、開催されなかったのは第二次世界大戦中と、1968年の5月革命、過去たったの2度だけ。世界に広がった新型コロナウィルス感染症による恐慌はすべてをなぎ倒し、飲み込み、2020年の美しき5月も奪っていった。

撮影は突然中断され、プロジェクトは一夜のうちに崩れ去り、俳優たちは公の場から消えて、小さなインスタグラムのスクリーンから音沙汰が届くだけ。世界中から映画が失われた。フランスで映画館がその扉を再び開けるのは6月22日のことになる。

「カンヌ・レーベル」の創設。

それでもカンヌ映画国際祭ディレクターのティエリー・フレモーは諦めない。「諦めたりキャンセルするのは問題外だった。今回の応募作はこれまでで最多の2067本。監督たちの仕事を受け止めるのは当たり前のことです」。6月3日、フレモーと映画祭プレジデントのピエール・レスキュールが、パリのUGCノルマンディ映画館で発表したオフィシャルセレクション作品は56本。映画祭の実質的な開催がないなか、バーチャルで異例のセレクションというわけだ。公式選出作は、従来のような部門別ではなく、映画祭の支援を保証する「カンヌ・レーベル」を与えられた。たとえば、今後行われる他の映画祭に参加しやすくなるなどの利点があるという。

選出されたのは昨年より3本少ない56本。非常に期待されつつも、この異例のセレクションに入っていない作品は(たとえばヴィルジニー・エフィラが出演するポール・バーホーベン監督の『Benedetta』)、2021年の同映画祭に登場すると思われる。また、フランス映画も数多く選ばれ、21本に上った。

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待望の第1作たち。

このセレクションでは、初監督作品の数も注目に値する。15本を数えるデビュー作には、有名俳優によるものもいくつかある。ニコラ・モーリーが監督し、ナタリー・バイと共演する『Garçon Chiffon』、ヴィゴ・モーテンセンの『Falling』。ローラン・ラフィットのコメディ『L’Origine du Monde』や、シュザンヌ・ランドン(サンドリーヌ・キベルランとヴァンサン・ランドンの娘)による『16 Printemps』などだ。女性監督による作品も数を増やし、昨年より2本増えて16本を数えた。

カンヌの常連もいる。ベニチオ・デル・トロ、フランシス・マクドーマンド、レア・セドゥが共演する『The French Dispatch』は、ウェス・アンダーソン監督作品。フランスからは、フランソワ・オゾン(『Eté85』)、マイウェン(『DNA』)。日本から河瀨直美(『朝が来る』)、イギリスからはスティーヴ・マックイーン(2本の社会派映画)、デンマークのトマス・ヴィンターベア(『Druk』)、アメリカのジョナサン・ノシター(『Last Words』)、そしてベルギーのリュカ・ベルヴォー(ジェラール・ドパルデュー出演の『Les Hommes』)などが名を連ねる。

「若手」「第1作」「コメディ」など、シンボリックなカテゴリーに分類された作品もある。エマニュエル・ムレの『Les choses qu’on dit, les choses qu’on fait』やマリー=カスティーユ・マンシオン=シャールの『A Good Man』は、「若手」のカテゴリーにお目見えした。

フレモーは、このセレクションの重要性についてこう語った。「映画祭の形はいつもと違うが、別の形で開催し、存在していることを示さなくてはいけなかった」。ひとまず、今年の公式作品の発表は行われた。秋以降の映画祭との連携、そして2021年の第74回の映画祭はどうなるだろうか。

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texte : Richard Gianorio (madame.lefigaro.fr)

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