久しぶりのハグにビズ。注意すべきポイントは?

Culture 2020.07.05

新型コロナウイルスによる外出制限が解除されたフランス。久しぶりに親しい人と再会するとなると、頬を合わせる「ビズ」やキス、ハグをしたくてうずうずしている人は多い。こうした愛情表現と感染予防を両立させることはできるのだろうか。“コロナフレンドリー”なハグとは? ふたりの衛生学専門医にアドバイスを聞いた。

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感染リスクを最小限にするため、頬へのビズは禁止。うなじ、髪の毛、額ならOKだ。photo : iStock

大げさな音を立てるビズや、力のこもった握手が好きでない人も、人との接触が制限された生活が3カ月以上続くと、さすがに人肌が恋しくなる。デンマークではこの喪失感を表現するため、「hudsult(人肌渇望症)」という言葉が生み出された。

リサーチ会社「YouGov」が実施した調査によると、外出制限が解除されたいま、ビズを再開したフランス人は26%()。感染症対策を守り、過度な接触は避けながらも、身近な人に愛情を表現するにはどうしたらいいのだろうか。ストラスブール大学病院で感染学および衛生学を専門とする内科医ステファンヌ・ガイエと、ボルドー大学病院公衆衛生ならびに病院衛生の専門医であるピエール・パルネクスはこう説明する。

*アンケートは2020年6月12日から14日までの期間に、18歳以上のフランス人1004人を対象にオンラインで実施された。

信頼できる相手?

たとえ身近な人であっても、触れ合う前にまずは十分な注意を払おう。ガイエは、咳、熱、鼻水の有無や、味覚・嗅覚の異常など、新型コロナウイルス感染の初期症状がないことを互いにあらかじめ確かめるよう忠告する。「相手を信頼することが必要です。状況によっては、念のため『体調はどう?』『最近旅行した?』などと質問してみると良いでしょう」

マスクを着ける。

相手に近づいて挨拶するなら、マスクを忘れてはならない。「マスクをしていないと、ウイルスを含む飛沫が相手の口や鼻、目に届く恐れが増します」とパルネクスは説明する。

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キスは額、髪の毛、うなじに。

ビズ支持派にはまず、ビズは本来、まだ禁止であるということを知っておいてもらいたい。「この種の密接な接触は感染リスクの高い行為です。ビズは口元、すなわち呼吸器官に顔を近づけることになりますから」とパルネクスは言う。また、「頬を感染者にキスされた場合、顔にウイルスが移る可能性があります」とガイエは続ける。

もしどうしてもビズをしたいのならば、手の甲、髪の毛、うなじ、額など(場所は相手との関係次第だが)、できるだけ口から離れた部分を選ぶようにすべきだとガイエは言う。それでも感染リスクがあるということはしっかり頭に留めておこう。また、「自転車など、スピードの出るスポーツをしている時に咳をすると、空気の流れに乗って飛沫が自分の顔に届き、付着します」とガイエはさらに説明する。親しい人と会う前には、顔に付いた飛沫を除去しよう。ガイエによれば、ウェットティッシュかぬるま湯で湿らせたティッシュで拭き取るだけでも効果はあるという。

触れるなら服の上から。

幸いなことに、唾液を心配しなくていい愛情表現もある。顔、うなじ、肩、背中など身体の一部を手で触れる行為は、「とても人間的で愛情深く、かつリスクの少ないボディコンタクトです」とガイエは語る。ただし「その前に手の消毒を忘れずに」とパルネクスは言い添える。感染リスクの高い人と再会する時の愛情表現としてふたりが勧めるのはこのスキンシップ方法だ。ウイルスに感染しやすく、重症化しやすい70歳以上の人と会う時は特に配慮する必要があるとガイエは強調する。

ガイエに言わせれば、万全を期するには、服で覆われた場所に触れること。「ウイルスが繊維を介して感染するとは考えられません。表面がツルツルしているものなら微量の病原体が残ることもありますが、通常の布では、ウイルスの粒子が繊維に付着しても、3時間もすれば乾燥して感染力を失います」

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顔を背けてハグする。

抗ストレス、鬱や孤独感の改善……ハグには多くの健康効果がある。身体的接触が不足しているこの時期にも、出来ることならその効果を利用したい。安全にハグするためには、後ろからでも正面からでも、顔を近づけずに抱き合うと良いとパルネクスは言う。抱擁の瞬間は、お互いに顔を反対側に向けよう。「これなら、相手の顔に息がかかることがありません」

会話と呼吸をコントロールする。

触れ合いはごく短時間に。そして、この瞬間を最大限に満喫するためにも、スキンシップ中はなるべく口を閉じておくこと。「話したり、大声を出したり、歌ったり、咳をすると、呼気流量が増大します。こうした気流は到達距離が長く、感染リスクが高まります」とガイエは忠告する。

それなら息を止めてハグをすればいいと考える人もいるかもしれない。しかし、それは間違った考えのようだ。ガイエによると、「呼吸を止めることに慣れていないと、一気に息を吹き出してしまう可能性があります」

抱擁の後は一歩下がって。

こうして愛情と優しさのこもった挨拶をして気持ちが落ち着いたら、すみやかに距離を取ろう。この時も身体の動きをコントロールすることが大切だ。「自然に身体を離し、相手との間に少なくとも1メートル距離を取ってから穏やかに会話を始めましょう」とパルネクスは助言する。

とはいえ、頭のてっぺんから足の先まで消毒したり、服を着替えたりする必要はない。「度が過ぎると、今度は気持ちが置き去りになってしまいます。不安な人は、過剰防衛をしておかしなことになるよりは、ハグはもう少し待ったほうがいいでしょう」とガイエはアドバイスする。

ビズやハグのマナーにも「ニューノーマル」が適用されそうだ。

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texte : Tiphaine Honnet (madame.lefigaro.fr)

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