「断然犬派!」になってしまう4冊を竹本祐子がセレクト。【いま知りたいことを、本の中に見つける vol.12】
Culture 2025.09.05
知りたい、深めたい、共感したい──私たちのそんな欲求にこたえる本を26テーマ別に紹介。各テーマの選者を手がけた賢者の言葉から、世界が変わって見えてくる贅沢な読書体験へ!
vol.12は「断然犬派!」をテーマに、エッセイスト、作家、翻訳家・竹本祐子が選んだ4冊を紹介。読み終えた後は、犬を飼っている人はより愛犬が愛おしく、飼っていない人も街で見かける犬につい惹かれてしまうかも......。
選者:竹本祐子(エッセイスト・作家・翻訳家)
断然犬派!
「人間の最良の友」といわれる犬たち。実は人間をよく観察している。その証拠に人間の声に敏感に反応し、ほめられたとわかれば喜び、叱られればしょんぼりする。尻尾や耳が心の動きを反映して、瞳も顔も見事なほど感情豊かに思いを物語る。人間のように虚勢をはることも、ウソをつくこともない。だから、犬好きの人間は犬との暮らしをやめられない。彼らの無垢な心に癒やされ励まされ、今日も生きていく。作家は犬との暮らしから多くのものを得て、作品へと昇華させる。
1. 『マーリー
―世界一おバカな犬が教えてくれたこと―』
ジョン・グローガン著 古草秀子訳 ハヤカワ文庫NF ¥838
映画にもなったので知る人は多い。アメリカのフィラデルフィアの大手日刊紙のコラムニストのグローガンが、飼い犬ラブラドールレトリーバーの日常を書いたエッセイ。原題は『Marley&Me』という。その犬のやんちゃぶり......ソファーはかじる、ごみ箱はひっくり返す、何でも口に入れる、人間に体当たりする......ばかりでなく、いつも大切な家族の一員としての存在が、人の心を揺さぶる。
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2. 『少年と犬』
馳星周著 文藝春秋刊 ¥1,760
読んでいて涙が止まらなかった。直木賞受賞と知った際、犬を主役にした小説が受賞したのは初めてではないかと思った。もちろんこのシェパードは思いを語るようなことはないが、ひたすら目的の地に向かって日本列島を旅する。作家をインターネットで調べると、バーニーズマウンテンドッグ2匹と肩を並べた写真が載っている。この小説の源を見る思いがする。
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3. 『犬と生きる』
辻仁成著 マガジンハウス刊 ¥1,980
男手ひとつで育てあげたひとり息子が大学生となって自立したのを機に、ミニチュアダックスフンド三四郎と暮らし始めた作者の心温まるエッセイ。フランスでの暮らしともなると、食生活や人々との関わりに、何やら豊かな薫り漂う空気を感じる。フランス人は発音しにくいので、三四郎をサンシーと呼ぶ。そんな中で、短い脚で懸命に歩くミニチュアダックスフンドに、作者が日々心を揺らめかせながら語りかける。
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4. 『ミステリアム』
ディーン・クーンツ著 松本剛史訳 ハーパーBOOKS ¥1,300
スリラーの帝王とも呼ばれ、ベストセラー作品を量産しているクーンツだが、愛犬トリクシーの名で作品を発表するなど、大の犬好き。読み応え十分なこのミステリ、ストーリーは読者をぐいぐい引き込み、一気読みしたくなる筋立てで、人間と意思疎通できる特異な能力を持ったゴールデンレトリーバーが、自閉症の天才少年とシンクロする。この小説以外でも作者はさまざまな大型犬が登場するストーリーを発表している。
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1954年、長野県松本市生まれ。上智大学卒業後、英文翻訳に従事。著書に『上高地から帰ってきた犬』(郷土出版社刊)、『犬のバトン』(幻冬舎ルネッサンス刊)などがある。
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*「フィガロジャポン」2025年9月号より抜粋
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