マッチングアプリ狂想曲 マッチングアプリ人気No.1美女が、幼稚舎男と結婚した方法。

Culture 2021.04.10

コロナ禍で人との出会いが減り、『マッチングアプリ』が気になっている方も多いのではないでしょうか? ひと昔前は『出会い系』などと呼ばれ、ともすればマイナスのイメージを漂わせていましたが、コロナ禍ですっかり市民権を得た様子。現代の恋愛模様は、マッチングアプリの普及でどう変わったのでしょう。マッチングアプリを通じて見えた悲喜劇を、ライターの馬越ありさが綴ります。

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写真はイメージ photo:kokouu_iStock

文/馬越ありさ

美華さん(31歳)フラワーデザイナーの場合

「マッチングアプリで、どうやって幼稚舎出身の男の人と結婚したか、知りたいですか?」

いたずらっぽく微笑みながら、美華さんは言った。その勝ち気な口調から、女性からの羨望という名の嫉妬を、一身に受けてきた事が分かる。女性の嫉妬から身を守る為に、強くならざるを得なかったのだろうか。そう、美華さんはマッチングアプリに手を出さなくても、出会いに困るはずのない美女だ。聞けば、10代の頃は大手芸能事務所に所属していたという。よくいる女子アナ系ではなく、女優の様な華やかさがある顔立ちだ。

「まぁ、確かにモテてはきましたよ。……でもね、だからって良い事ばかりじゃなかったんです。私は、幼稚園から一貫の女子校で育ったんですけど……女子高生になると、他校の男の子と合コンもするじゃないですか? その度に、友達の意中の男の子からアプローチされて、どれだけ嫌な思いをしたか」

よほど嫌な事があったのだろうか。美華さんは、しばし黙り込んだ。モテる人ならではの苦労というのは、理解を得難いのだろう。

「女子高生の時は、自分の世界が狭かったから…お嬢様、という共通点しかないメンバーで遊んでいたから、私だけ目立っちゃって。だから、同じレベルの見た目の女の子と一緒に遊べば良いんじゃないかって、大学生になって港区デビューをしたんです。いわゆる、港区女子的な生活を何年か送っていました。25歳まではひたすら楽しかったんですよ。女友達同士、いかにイイ会に誘ってあげるか競い合って。けどね、美貌だけを取り柄に玉の輿に乗ろうとする女が集まれば、やっぱり足の引っ張り合いが起きるんです。インスタが流行りだしたせいもあり、動向を監視される様になって…。みんなで楽しんでいる所を投稿したら、誘ってない子から嫌味を言われたり。ほとほと、チームプレーでの婚活に嫌気がさしたんです」

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モテ女がマッチングアプリを始めたら。

そこからの美華さんの行動は早かった。27歳の時に、ハイスペックな男性会員が多いという謳い文句のマッチングアプリに主戦場を移したのだ。

「マッチングアプリって、条件を入れて検索するんですけど……港区で自分の市場価値を学んでおいて良かったなって思いました。年収1,000万円以上で絞っても、マッチングする相手には困らなかったです」

年収1,000万円というのは、意外だ。元芸能人で港区女子であれば「最低でも3,000万円!」と息巻きそうなものなのに。

「私が見ているのは、年収だけではなく、資産ですから。正直、この東京では、年収1,000万円でもぜいたくな暮らしができる訳ではありません。かといって、年収数千万円を稼ぎ続けられる人は本当にひとにぎり。仕事のストレスから浪費家になってしまう人や、結婚後に夫からのモラハラに苦しむ友人を多く見てきました。それなら、安定した収入と実家がある方が、良いと思いませんか?」

そう言って、また勝ち気な笑みを浮かべた。美華さんは、自分の笑顔の威力を存分に分かっているのだろう。

「なので、年収1,000万円というのは、あくまでも足切りライン。そこから、生まれ育った家庭環境が似ていて、一緒にいて楽しいと思える男性と出会う為に、いっぱい努力も工夫もしましたよ。私より可愛い子がいっぱいいる事だって、港区で学びましたから」

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自分の理想の男性とマッチしやすいプロフィール欄とは?

「まずは写真ですね。正面だけでなく、横顔、全身を載せ、加工詐欺じゃないと安心してもらえる様に。お洋服は黒のシックなワンピースからカジュアルなデニム姿、髪型はアップスタイルや軽い巻き髪など様々なスタイルの写真を載せ、交際したら楽しいだろうな…とイメージしてもらえる様にしました。また、はなから甲斐性のない人は願い下げだったので、高級店でのディナーの様子も意図的に載せていました。合わせて、自宅での自炊の様子を載せるのも忘れませんでしたけどね」

すると、どうだろう。美女ひしめくアプリの中で、美華さんは瞬く間に人気No.1に君臨したのだ。けれど、そこからが大変だったと言う。

「現実の世界も、アプリの世界も同じ。モテるのって良い事ばかりじゃないんです。毎日100通以上メッセージが来て、全てをチェックなんて出来ませんでした。中には、とりあえず1位だから…と、私のプロフィールも見ないで連絡してくる人もいて。そこで、プロフィール欄も更新しました。個性を前面に押し出したんです。例えば、趣味は映画鑑賞とだけ書くのではなく、CG炸裂のハリウッド大作よりも、一見地味だけどメッセージ性がしっかりした邦画が好き、といった具合に。そうする事で、私に本当に興味を持ってくれる男の人を、ふるいにかけたんです」

また、美華さんは相当な読書家で、好きな作家の話、それもいわゆるベストセラー作品ではなく、本当に読書家でないと知らない作品について触れたそうだ。

「…その作品を、わざわざ読んでから連絡してきてくれたのが、いまの主人なんです。私の個性を魅力だと思ってくれる人と出会えて、幸せです」

元芸能人のお嬢様が、これだけ戦略を練って挑んだマッチングアプリの世界。今後ももっと、覗いてみよう。

次回は4/17公開予定。

馬越ありさ
東京都出身。慶應義塾大学を卒業後、メーカーで販売促進に従事しつつ、ライターとしても活動。

 

texte::ARISA MAGOSHI

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