マッチングアプリ狂想曲 商社マンが、マッチングアプリで結婚相手を探すワケ。

Culture 2021.04.24

馬越ありさ

コロナ禍で人との出会いが減り、「マッチングアプリ」が気になっている方も多いのではないでしょうか? ひと昔前は「出会い系」などと呼ばれ、ともすればマイナスのイメージを漂わせていましたが、コロナ禍ですっかり市民権を得た様子。現代の恋愛模様は、マッチングアプリの普及でどう変わったのでしょう。マッチングアプリを通じて見えた悲喜劇を、ライターの馬越ありさが綴ります。

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写真はイメージ  photo:Tero Vesalainen_iStock

彰さん(34歳)総合商社勤務の場合

「どうしてマッチングアプリをやっているかって? 効率が良いからですよ」

苛立ちを隠さない口調から、同じ質問を何度もされてきたことがうかがえる。早稲田大学卒の商社マンという肩書に、男性アナウンサーのような清潔感のある顔立ち。体育会で鍛えたと思われる厚みのある肩で、スーツを完璧に着こなしている。マッチングアプリに手を出さなくても、合コンで無双状態なのではないだろうか。

「確かに、合コンはたくさんしてきました。だからこそ、アプリの方が効率が良いと断言できます」

なぜか勝ち誇ったように言う。

「世間のイメージにたがわず、僕も入社してからしばらくは合コンに明け暮れていました。当日でも呼べば来てくれる女の子の知り合いが、何人もいましたね。ただ、そういう子とは、真剣に付き合いたいと思えないですよ。合コンの序盤から、さりげないフリをして勤務地を聞いてこられて。丸の内なのか、外苑前なのか。財閥系の商社か否か値踏みされている不快さを、下心で上書きする日々でした」

「それに、あの“幹事MAXの法則”って何なんですかね。幹事の子がタイプならすでに口説いてるんだから、友達枠でいる意味を察して、自分より可愛い子を連れてきて欲しいのに。そういうサービス精神もない子との合コンでも、こちらが奢らなきゃいけないのが、アホらしくなってきたんですよね」

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友達からの紹介に隠された罠

合コンは真剣な出会いを求める場ではなく、仕事のストレスを忘れる気分転換、と割り切った頃には、駐在を見据えて結婚する同期が出てきたそうだ。

「この間まで一緒に合コンで悪ふざけしてた奴らが、次々と、美人で家柄も良くて一流大学出身の女の子と結婚していって、焦らなかったと言えば嘘になります。でも、自分だって、そういう子と結婚できるスペックだという自信はありました。妥協して結婚せずに1回目の駐在に行く決心をした自分を、むしろ褒めてやりたいと思っていました」

30歳を過ぎて駐在から戻った時には、すっかり合コンをするメンバーもいなくなっていたという。しかし、そこは商社マン。帰国を聞きつけた周りの女の子から“友達を紹介する”との申し出が殺到する。

「サークルやゼミの同期、社内の一般職の子という、素性がハッキリしている子からの紹介なんで、期待してたんですよ。でもそれが、会ってみたらタイプじゃない子ばかりで。初めっから、僕に合う女の子を紹介しようというより、僕が連れてくる男友達目的で、女友達が場を設けようとしたんだと気付いた時には、何で奢らなきゃならないんだって憤りを感じましたね」

頼んでもいない紹介に対し、紹介返しを強要されるという、ハイスペックな男性ならではの悩みもある様だ。男女共に、モテすぎるとチームプレーは向かないのかもしれない。彰さんも、すぐにマッチングアプリに登録。すっかりハマってしまったそうだ。

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加工詐欺女を見破る方法

「まず、事前にビジュアルが分かるのが良いですよね。僕はかなりの面食いなんです。同世代のサラリーマンの中では稼ぎが良いだけじゃなく、自分で掃除・洗濯・料理……家事全般できちゃうんですよね。だから、可愛いってテンションが上がる子じゃないと、付き合う意味がないっていうか。女子アナに引けを取らないレベルの子としか、会いたくないというのが本音です。実際に、同期では女子アナと結婚してるヤツもいますしね」

しかし、アプリでは加工詐欺もあるのではないだろうか……? 思わず質問すると、まるでテレビで人気のニュースの解説員のように教えてくれた。

「おっしゃる通り。だから、僕は面倒くさがらずにメッセージのやり取りをして、インスタを交換するんです。交換したら、その子のアカウントではなく、タグ付けされている方の写真を確認するのがポイント。だいたい、男性のアカウントに掲載されている写真は、加工がされていないものが多いですからね」

そうして探し出した、弁護士秘書をしているという天然美人とスムーズに交際を開始。交際当初から、自然と結婚の話は出ており、何もかもが順調だと思っていたと言う。

「ビジュアル、家柄、学歴とスペック的には理想通りの彼女。今度こそタイミングを逸しまいと、彼女の29歳の誕生日にサプライズでプロポーズをしたんですよ。……そうしたら、“あなたとは合わないと思う”と言われフラれてしまいました」

突然の出来事に落ち込んでいる彰さんの元へ、友人から“彼女のインスタの別アカウントを見つけた”との知らせが舞い込む。「#プレ花嫁」 として人気を博しているアカウントには、薬指の太さと同じくらいのダイヤモンドがあしらわれた婚約指輪を付けて微笑む彼女の姿が。

「さかのぼって見てみたら、5つ星ホテルでのプロポーズの様子が投稿されてました。僕がプロポーズした日と、近い日付で」

更に、そのお相手が外資系の金融機関勤務の男性であるという事実から、彼女を邪推してしまい、自己嫌悪に陥ったという。

「スペックだけで惹かれあうのは脆いって、学びましたよ……」

力なく呟いた、彰さんの一言が印象的だった。

次回は5月1日公開予定

texte: ARISA MAGOSHI

馬越ありさ

東京都出身。慶應義塾大学を卒業後、メーカーで販売促進に従事しつつ、ライターとしても活動。

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