インドの叙事詩を現代的に再解釈した、美しい写真展。
Culture 2019.09.10
古典と現代を行き来するインドの道行き。
『A Myth of Two Souls 二つの魂の神話 ヴァサンタ ヨガナンタン 写真展』
1985年フランスに生まれたヴァサンタ・ヨガナンタンは、マグナム・フォト・アワードなど各賞に輝いた注目の写真家だ。ドキュメンタリーとフィクションの間にある作品世界は、自然光に基づく独自のカラーパレットをもとに展開。『A Myth of Two Souls 二つの魂の神話』では、伝統的な手彩色の技法を学んだインドの画家たちと協働して、ムガル帝国時代のミニアチュール(細密画)の流れを汲む、鮮やかで柔和な色彩を表現した作品も展示。
プロジェクトは現在進行中で、作家が共同設立した出版社より『ラーマーヤナ』全7巻が7冊のフォトブックとして出版される予定。
『Longing for Love』
本作で着想を得たのは、紀元前300年頃に詩人ヴァールミーキが編纂した『ラーマーヤナ』。『マハーバーラタ』と並ぶヒンドゥー教の聖典のひとつで、何世紀にもわたり繰り返し再解釈され、現在もインドや東南アジアで、舞台やコミック、テレビドラマなど多彩なメディアを通じて親しまれる叙事詩だ。この古典を現代的に読み直すため、彼は物語の道筋を辿る旅に出た。インドを北から南へ、現地の人々と生活をともにし、現代の日常生活に見られる物語の影響からインスピレーションを受けたという。
『The Crossing』
展示は、現代を生きるインドの人々にとって伝説となった風景の写真と、撮影地の人々が自身の心に刻まれた『ラーマーヤナ』の役柄を演じる写真で構成される。大判カメラで撮影したモノクロ作品に着色を施したイメージは、夢と現(うつつ)の境界を越え、時空を旅する道程へと誘うだろう。
会期:開催中~9/29
シャネル・ネクサス・ホール(東京・銀座)
営)12時~19時30分
無休
入場無料
tel:03-3779-4001
https://chanelnexushall.jp
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※『フィガロジャポン』2019年10月号より抜粋
réalisation : CHIE SUMIYOSHI