芸術家を刺激してやまない「眠り」をめぐる美術展。
Culture 2020.12.14
「眠り」の表現に秘められた人間性の本質。
『眠り展:アートと生きること ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで』
生きるために欠かせないだけでなく、芸術家たちの創造を駆り立ててきた「眠り」の表現を探る企画展が開催される。全国6館の国立美術館の幅広いコレクションから厳選した合同展の第3弾となる。
ペーテル・パウル・ルーベンス『眠る二人の子供』1612~13年頃、国立西洋美術館蔵。同館珠玉のコレクションの一点だ。
「眠り」の表現は、癒やしや休息はもちろん、夢と現実、生と死、意識と無意識といった、相反する概念の間を迷いつつ、行き来する人間のありようを問いかけてきた。1799年に銅版画の連作『ロス・カプリーチョス』で『理性の眠りは怪物を生む』を発表し、人間性の暗面を混迷の世に突きつけた巨匠ゴヤを案内役に、本展は美術における眠りが持つ可能性を、序章から終章まで7章の構成で辿る。
塩田千春『落ちる砂』2004年、国立国際美術館蔵。塩田自身によるパフォーマンスに生と死の陰翳を見る。
序章「目を閉じて」ではルーベンスが描いた子どもたちの無垢で無防備な寝顔にほろりとさせられ、第1章「夢かうつつか」ではエルンストの描いた夢と現実の間にある無意識世界に酔いしれるだろう。第2章「生のかなしみ」では、内藤礼や塩田千春ら現代作家が宿命的な死のメタファーとしての眠りに託した生の哀しさと愛おしさを知ることとなる。
「眠り」のイメージを表現した展示設計をトラフ建築設計事務所が手がけていることにも注目したい。生命を維持するために繰り返される睡眠とサステナビリティをリンクさせ、環境保全を目指して前会期の壁面の多くを再利用するという。彼らならではのしなやかな発想から生まれるデザインに、これからの美術展の空間構成の未来像をも予感できそうだ。
会期:開催中~2021/2/23
東京国立近代美術館(東京・竹橋)
営)10時~17時( 金、土は~20時)
休)月、年末年始
料)一般¥1,200
●問い合わせ先:
tel:050-5541-8600(ハローダイヤル)
www.momat.go.jp
*『フィガロジャポン』2021年1月号より抜粋
réalisation : CHIE SUMIYOSHI