接近! 東京ミレニアルズ 勝ち続ける双子のキックボクサー、江幡睦&江幡塁!

Culture 2017.08.09

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左:江幡睦(むつき) 右:江幡塁(るい)

現在発売中のフィガロジャポン9月号では、これからの世代を担うミレニアルズをフィーチャーした『輝く、東京ミレニアルズ。』を掲載。4回目は、キックボクサーとして世界王者の称号を持つ双子、江幡睦と江幡塁。リングで見せる闘志みなぎるたたずまいとは違い、普段の彼らは笑顔と優しさにあふれた好青年だ。キックボクシングやプライベートについて話してもらった。

競技の未来を拓く世代という自負。

睦「競技を始めてから目指しているのは、ラジャ(ラジャダムナン・スタジアム。タイのバンコクにある競技場で、ムエタイの聖地)の下、キックボクシングでムエタイに勝って、ベルトを獲ることです」
塁「僕らが属している新日本キックボクシング協会、伊原信一会長は、アスリート性、スポーツ性を重んじて、競技そのものを大切にしています。チャンピオンである僕たちは、キックボクシングを極める義務があると思っていて。それが競技の最高峰であるムエタイのトップに立つことですかね」
睦「ムエタイのルールは勉強しているけど、キックボクシングのルールでどうムエタイに勝つのかに挑んでいるし、僕たちのスタイルでどう倒すかを研究しています。ムエタイに寄せていって、戦い方を変えることはしない」
塁「キックボクシングはいくつかの協会や団体があり、たくさんの選手が交われば確かに規模は大きくなっていくけど、“極めること”があいまいになる。それは競技としてよくないなと思う」
睦「『ノック・アウト』や『K-1』などの人気団体は、スター選手がいるから競技人口も認知度も広まっていて、いまはいったい誰がいちばん強いんだろうとみなさんが興味を持っています。僕たちもそこに参加できたらと思うとワクワクするけど、新日本キックボクシングとういう真髄をブラしてまで交わっちゃいけないと思っていて。まず僕らは夢を叶えてから交わるべきだと」
塁「この先僕たちがラジャでムエタイを倒したあと、一般の方にキックボクシングを認めてもらうために戦い続けなきゃいけない時に、みんなと交われる場所があるというのは心強いんです」
睦「那須川天心くんと戦いたいですね。戦い方が上手でつねに冷静な選手」
塁「そうだね。彼は3歳の頃から始めて、父親が先生でという新世代。天才と言われているし、怖さを知らない感じです」
睦「僕たちが頂点を極めたら、いずれ彼と交わらなきゃいけないと思っているし、そうしたら必ずキックボクシングはもっとおもしろくなります!」



ふたりは現在25歳。幼い頃は空手を習っていて、その頃から築いたファイティングスピリットを武器に圧倒的強さで連勝を重ね、新しい時代の到来を予感させた。そしていま、彼らが認める新世代の勢いが増す中、自らをどんな世代であるべきだと考えているのか。聞くと一言「伝説を作る」とつぶやく。

塁「かつては先輩の背中だけを見て強くなろうと追いかけていたけど、新しいキックボクシングの時代を作るトップを走らなきゃいけない世代になっていると思っています。下の世代のために僕たちが作らなきゃいけない」
睦「その証明のひとつがラジャのベルト。僕たちが始めた頃は、日本チャンピオンを獲得して防衛することが大きな目標だったけど、ムエタイを倒せるラジャの道だってあるんだよと、夢のある道を残せる。自分たちの夢はすべて、競技の未来につながっています」



感覚と役割を合わせることが、強さの源。

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見分け方はホクロの有無。終始キラキラと笑顔が輝く。睦(左):ジャケット¥70,956/ゴーシャラプチンスキー(ジャックポット) パーカー¥20,520/アレッジ(カラーズ) スウェットパンツ¥32,400、ニーパッド¥32,400、ソックス¥3,240 /以上アンダーカバー 塁(右):ジャケット¥63,720/プロパーギャング(ジャックポット) ヴィンテージジャージ¥8,424/ラボラトリー/ベルベルジン® スウェットパンツ¥30,240、ニーパッド¥32,400、ソックス¥3,780/以上アンダーカバー

良きパートナーとして、頼れる同志としてつねに強い気持ちを共有している。「片方を見ることで客観視している」と語る彼らにとって、双子であることが強さに影響していることは──「確実にある」。


睦「僕がいまキックへ熱量を加えられるのは、塁がいるから。幼い頃からいつもふたりで練習しているし、長い間競技をやっていると自然とモチベーションが保てない時もあれば、うまくいかなくて落ちている時もある。そこで塁が自分を引き上げてくれる」
塁「お互いそうだよね。僕たちは交互に試合をやっているので、睦の戦いが盛り上がったら僕もやらなきゃと気合が入ります。練習もそうですが、どちらかだけが諦めるということはできないし、しない。また、片方のセコンドに立つのですが、周りが倒しに行けと言うところでも、僕は睦が心境的に行けないとわかったら、別の指示を送る」
睦「大きな会場でもお互いの声は聞こえるんですよね。たとえ勝っていても塁の心の中や辛さが誰よりもわかる。これが双子であることの強さですかね。そして、この先ふたりで一緒に過ごしたいし、一緒に仕事もしたいし、叶えたいこともふたりでやっていこうと決めていて」
睦「そのためにある時から感覚のズレがないように、ジムが終わってから一緒に帰って話し合うことをしていますね。実は僕たちは感覚が違ってしまうと離れてしまうことをふたりとも理解していて、あえて感覚を合わせようとしている」
塁「必ずしも同じ感覚じゃなくてもいい。同じものを見てどう思うのか、どんな感情を抱いているかを知りたい。つまり、もともとは同じことを経験してもまったく違うので」



ふたりは同じ環境で同じように育てられたから、同じような人になってしまうのではなかった。「自然と足りないところを補い合って江幡睦と江幡塁という個人が作られた」という。彼らは、双子として同じであるところ、個人として違うところを強さに変えてここまで来た。

塁「大人になって気づいたのは、僕たちはひとりの人として欠陥している部分があったということ(笑)」
睦「いまさら、埋めるよりこのまま突っ走って行こうと選びました。自分の役割を理解しておく。無理に穴を埋めようとして、ふたりが合わなくなってうまくいかなくならないように、ね」
塁「僕は作戦を細かく立てる性格で、戦い方にそれが出ている。1ラウンドから相手の足を狙って、次第に上の守りが薄くなっていったところで上を攻める、次に真ん中を攻めるとか。戦いながら次はこう、その次はこうと考えます。こっち蹴ると見せて違うところを蹴ったりと、性格の悪い部分出さなきゃいけない……」
睦「僕は感覚的。ひとつひとつ組み立てるより感覚にしたがって全力で相手を詰める。自分が得意なものを知っているので、無理に引きずってでも自分なりのKOを決めることが多い。塁は性格が悪くて、僕は強引なタイプ(笑)。また、僕はいつも前に出て行って探すのが得意で、塁は僕が見つけてきたものをしっかり作り上げる作業が上手ですね」
塁「それは喧嘩しながらもすごく話し合った。相手の役割に手を出さないように。こうして、いま26歳で夢を叶えるために、感覚も役割も全部わかるようにした。まさに『タッチ』の上杉兄弟みたいになっちゃって、どちらかがいなくなったらすごく大変なことになるんです」
睦「でも、好きになる女の子はまったくかぶらないから安心で(笑)」
塁「見事にそうなんだよね。だから、これからも仲良くいられるね」



江幡ツインズは、“きれいな平行線のようにどこまでもともに歩んでいく”ように見えていたが、彼らの意思や行動を見ていると撚り糸のように強く交わりながら未来を進んでいることがわかる。その糸はキックボクシングをはじめ、関わるまわりの人々と思いを巻き込み、より鮮やかになっていくのだろう。

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江幡睦&江幡塁に、16問16答!

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睦(右):ヴィンテージパーカー¥19,224/ラボラトリー/ベルベルジン® スウェットパンツ¥32,400/アンダーカバー 塁(左):ヴィンテージパーカー¥38,664/ラボラトリー ベルベルジン® スウェットパンツ¥30,240/アンダーカバー

・好きなアプリ:
睦 NRC(Nike Running Club)。「走行ペースや距離がわかるので、これを使って走っています」。
塁 Netflix。「映画が好きなので楽しみ!」

・好きな音楽:
睦「平井大さんの曲が好き」
塁「ジムのスタッフにジャズ好きがいて、リラックスしたい時に流しています」

・好きな映画:睦
『キッズ』。「子どもの心を忘れちゃ行けないなと思える、大人になって観ると一味違う作品」
塁『ペイ・フォワード』。「睦は映画に詳しくて、2年くらい前に教えてもらった。映画は休憩時間に観ています。ヒューマンドラマが好きです!」

・自分のクセ:
睦 指を触る。「もともとうちの伊原会長のクセで、知らないうちに会長に近づきたいという気持ちから移った」
塁 なんでもよく考える。「練習も試合も作戦を緻密に練って挑む」

・尊敬する人:
睦&塁 新日本キックボクシング協会の伊原信一会長。

・好きな駅:
睦 学芸大学。「以前住んでいた街。家に帰るまでの通りが美味しい食べ物屋さんばかりでいつも試練でした。でもがんばってそこを通り抜けるのが好きだったな」
塁 代官山。「ジムが近いというのもあり、安心します」

・好きな本:
睦 浅田次郎の『天切り松 闇がたり』シリーズ、漫画『今日から俺は』
塁 竹沢うるまの『The Songlines』と漫画『はじめの一歩』

・いまの仕事を志した年齢:
睦&塁 13歳。「もともと空手をやっていて、キックボクシングに切り替えたのも同じタイミング。母がキックボクシングの存在を教えてくれたんです」。

・ウィークポイント:
睦 辛い食べ物。
塁 絶叫マシン。

・好きな犬の種類
睦&塁 フレンチブルドッグ。「実家で飼っています。あと、友達が飼っている猫のベンガルもかわいい」

・週末に食べたいもの:
睦&塁 肉! レストランに行ってそれぞれ650gくらい食べたり。平日は重いから、週末だよね」(塁)

・寝るときの格好:
睦&塁 「ピーチジョンのメンズラインのパジャマ。知り合いの方からいただいて愛用しています」(睦)

・好きな香水・香り:
睦 ビュリーのスミレの香り。「他にローズマリーの香りが好みです。リラックス効果があるみたい」
塁 エルメスの「李氏の庭」。「ジャスミンの香りも好き。お茶やクリームなど」。

・睡眠時間(オン/オフ)
睦&塁 試合前は多めに8時間ほど。

・いつもバッグに入っているもの
睦 インスタントカメラ、日記帳、練習着。
塁 名刺入れ、トランプ、白セージのスプレー、練習着。

・SMSやLINEでよく使う言葉
睦 はじめに「今時間ある?」「何してるの?」。「挨拶の代わりとして使いますね」
塁 最後に「いい1日をね」。「人に言われて気分が良かったので、僕も使うようにしています」

えばたるい●1991年、茨城県生まれの26歳。兄・睦とともに2007年にプロデビューを果たし、現在までに39戦33勝(うち17KO)3敗3分の戦績を残す。第9代新日本キックボクシング協会バンタム級王者、初代WKBA世界スーパーバンタム級王者。


えばたむつき ●1991年、茨城県生まれの26歳。2007年に新日本キックボクシング協会でプロデビュー以来、戦績は36戦30勝(うち20KO)5敗1分。第5代新日本キックボクシング協会フライ級王者であり、初代&第3代WKBA世界バンタム級王者。


●問い合わせ先:
アンダーカバー tel: 03-5778-4805
カラーズ tel: 050-3786-2333
ジャックポット tel: 03-3352-6912
ラボラトリー/ベルベルジン® tel: 03-5414-3190

texte : HISAMOTO CHIKARAISHI, photos : TAKANORI OKUWAKI (UM), stylisme : SHOTARO YAMAGUCHI (eight peace), coiffure : HORI (BE NATURAL)

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