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Yogee New Waves 角舘健悟 / WONK 長塚健斗、濃密な音楽談義。

特集

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左:長塚健斗(WONK) 右:角舘健悟(Yogee New Waves)

近年注目を集める新世代シティポップの旗手となったバンド、Yogee New Wavesの角舘健悟(ボーカル、ギター)と、ソウルやジャズを軸に自由な発想で音を紡ぐ新進気鋭のバンド、WONKの長塚健斗(ボーカル)が登場。音楽業界の若い担い手として活躍する彼らの音楽観から制作方法、ライブの楽しみ方までじっくり語ってくれた。西新宿で撮影を終え、帰りにふらっと入った新宿の喫茶店でおもむろに会話を交わしはじめる。

結果、その時惹かれる音楽になればいい。

長塚健斗(以下、長塚) Yogee New Wavesの音楽を初めて聴いた時の印象は、単純にいい音楽だな、と。その後いろいろなイベントで一緒になったよね。
角舘健悟(以下、角舘) 情報を色々集めて教えてくれるスタッフがいて、「これ、いま、キテるよ」って聴かせてくれたのがWONK。歌も良いし、演奏も上手いし、日本人でこういう音(ブラックミュージックの要素を取り入れたロック)をやっている人たちがいるんだって。
長塚 僕らは同じ世代への意識がほかの世代より強い気がして、僕も「同世代でこんなバンドがいるんだ!」とうれしくなるミュージシャンのひとりとして(角舘)健悟を認識していましたね。仲間であり、ライバルという感覚。
角舘 そうだね。
長塚 どのバンドも、いま、時代の転換期が来ている、と感じているように見える。自分たちが、これまでの流れを壊して良い音楽を広めようと考えているんだと思う。だから、良いものに対して賞賛と嫉妬を持っているんだ。



言葉は交わさずとも、互いを意識して刺激し合う世代。年輪のようにその時代その時代を表す音楽を手がける彼らは、世代としての強みを自負しているのか。クールに見えて、その実、中身は相当アツい。そんな、世代全体が持つ情熱の灯火を、個々で独自に光らせているんだと、ふたりの話に耳を傾けて思う。

角舘 俺は、世代の強みってあまり感じていない。それこそこの世代にはWONKのように洋楽カルチャーに近いバンドもいれば、Yogee New Wavesのような脈々と受け継がれているJ-POPやJ-ROCKの流れにいるバンドもいて。また、先輩にシャムキャッツやceroがいるけど、俺にとって音楽をやっていればみんな兄弟のイメージだし、時代の流れや世代で人の性格も好みも変わる。ここ数年俺らの人気が上がって来たとして、俺らのセンスに少し惹かれた人が多かったと思うだけ。たまたまその時に打てる球が来たから打っただけ、という認識。WONKとしては、この世代の強みって感じてる?
長塚 強みではないけど、これからフォロワーが増えていくテイストやジャンルという感覚は持っていて。いままで、日本人がソウルやジャズやR&Bを英語で歌うってどうなの、って感じがあったかもしれないけど、最近は英詞も多いし、そんな先入観を取っ払って活動しているアーティストも増えてきている。僕らも自由度の高いテーマを打ち出すことで、実際に音楽好きの人が注目してくれる感触がある。だから、ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデを聴いているような女子高生にも、良い音楽のひとつとしてWONKが刺さればいいなと思っています。
角舘 それ、最高だね。健斗は海外でやりたいの?
長塚 うん、日本以外でも活動したい、という感じ。WONKには海外のリスナーも結構いるから、これから日本を飛び出して色んな土地にツアーで回りたいし、それこそ海外の有名なフェスとかにもたくさん出たいと思ってる。
角舘 おお、アジアの星になってほしい!



伝えたいから「伝えよう」と歌う。

音楽業界で華々しく、かつ豪快に燃える若い炎は、サウンドの魅力だけを燃料にしているのではない。歌詞もまた独特な世界観があり、多くのリスナーの心の奥をビビッドに照らす。角舘は日本語を、長塚は英語を主に歌詞を作る。クリエイターではない我々に届く歌詞は、あくまで日常の出来事の発信なのか、もしくはよくできた物語の語りかけなのか。聞くと、彼らの答えは、“どちらも”だった。

角舘 もちろん自分の普段の感情が歌詞の火種になるけど、友達から聞いた話や読んだ本に感動したら言葉になる。要は、人が共感する物語を作っているということは、歌詞は自分の記憶というより他人の記憶なんだろうと思う。名曲を生んだユーミンや松田聖子の作曲陣、作家陣は感情の元素的な部分を歌にするために、自分のことじゃなく歌詞の中の主人公を現実逃避させた内容を作っている。俺はそれに自分で勝手に当てはめて泣いたりする。
長塚 なるほど。僕が英詞を書き始めたのは、WONKに携わってから。いま書いているのは自分の経験と周りの社会や人に対して思っていること。僕はそれしかできない。いろいろな書き方に挑戦したいから、これからは健悟が言ったようなストーリーも作れたらいいなと思う。健悟は歌詞を書き溜めてるの?
角舘 うん、物事に対するいままでと違う捉え方や感情の揺れ動きは、小説みたいにしてまとめている。ストーリーを立ててね。そこに出てきた主人公がどういう動きをするのかは俺にも読めないけど、俺が作った子だから“こう動くな”とか想像したりして。
長塚 おもしろいね。僕はいま伝えたいことを前提に言葉が出てきて、それをひとつの作品=歌詞に落とし込む時にストーリーを求める。そこで起承転結が欲しくなる時もあれば、伝えたいことを繰り返す時もある。
角舘 長塚くんの生活をしていないと、長塚くんの歌と言葉と音って絶対でない。俺だったら、週に何回か喫茶店に行って考え事しないとアイデアが出ない。それってこの先大事になることだろうなと思っていて。怒ってないと怒っている音が出ないし、悲しくないと悲しい音が鳴らない、とか。最初に“感情”があるからそこに音が纏っているだけで、あるから言葉が出てくるというか、アートの本質というか、それに沿ってないと嘘つくことになる。つまり、ステージでいい顔で歌えなかったり。それは気をつけて制作してる。ギターが良いソロを弾くと俺は言葉を失って、自分の言いたいことはギターが歌っているからもう歌いたくないって瞬間もあって(笑)。音に意味をはらんでいるからレコーディングも大事。「HOW DO YOU FEEL?」という曲は、疲れている感じを出したいというリズム隊の意向もあって、ひたすら収録した後に録ったり。そこに嘘はないから、聴いている人たちにも思いは伝わっていると思う。
長塚 それいいね。その話、すごく好き。僕たちはというと、そういうことをあまり話さないんだよね。WONKは今のところ音先行で、かつ音楽の土台は他のメンバーが作っていて、自分は歌詞を一任されているんだ。メロディは一緒に考えるけど、何を伝えるかは僕が決めている。
角舘 じゃあ、歌詞にバックサウンドが合わないと思うことは?
長塚 それはまったくない。他のメンバーはみんな僕よりキャリアが長くて、お互いに全面的に信頼しているし、もちろんきっちり答えてくれる。
角舘 ジャズマンだ。
長塚 うん、本当にみんなを尊敬してる。彼らが後ろにいるから僕は歌えている。メンバーからこう歌ったほうがいいと言われれば、そうなんだろうと思えて、そうすると実際よいことが多い。ただ、そういった楽曲制作の中で歌詞の意味を僕なりに咀嚼してどう表現するかは、常日頃から考えている。
角舘 俺も歌詞先行じゃないな。記憶や感情の記録みたいなものはあるけど、それは読み返しなくて。夏の夜にひとまずギターを弾き始めた。俺の中である感情が湧き起こった。それが昔書いた小説とマッチしてる。そんな環境や状況の下でメロディと歌詞が一緒に出てくる。どのカテゴリが優先ってことはない。俺がよくいうのは、お風呂に入りたくない子どもに対して、親がお風呂は楽しいよと伝えたいから「おふ〜ろは〜いろ〜う♪」という歌を作る表現方法と同じ。君に伝えたいから「君に伝えたい」と歌う。言葉が変わるだけで、その形を極力自然でナチュラルな状態のまま、何も付け加えずに形作っていくんです。

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ライブは、ありのままの自分をぶつける場所。

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6月のとある夕方、西新宿を闊歩するふたり。

時に真剣に、時に笑いあって語り合う彼らは、「ナチュラル」が自身の大切なキーワード。より多くの人から注目を集め、ライブの規模が大きくなるにつれてそれに気づいた、という。自分に嘘をつかず、音楽へのスタンスはオープンになっていく。なぜなら、映し鏡であるファンの心が純粋でナチュラルだから。

長塚 ライブが始まると、バンドメンバーとお客さんと音でコミュニケーションを取っている。その真ん中でつなぎ役に徹するだけなので焦ることはない。自然にそこにいるだけだから、緊張もあまりない。歌うコンディションを整えておくことだけに気を使っている。
角舘 昔は緊張を隠すためにバケットハットを被ってギターをシャラランなんて気取ってきたりもした。だから、50人くらいのキャパの会場でやっていた時の方が、俺はカッコよかったんだよ(笑)。観客がオープンマインドでいればいるほど、どんどん俺は素に近づいていくんだと気づいた。みんなが心を開いているのに、俺が閉じるのは失礼。自分自身ナチュラルでいることが大事で、たとえミスしても、練習苦手な俺が必死に演奏して、それをみんなが出迎えてくれているなら無理する必要ない。今年6月、赤坂ブリッツでは自然な気持ちで1500人の前に立って、すごく盛り上がってくれて。もう気取る必要がなくなったって思った。「あー、助かったありがとう」って。
長塚 いいね。
角舘 最近は観客が「かくだて〜っ!」って屋号みたいに大声で呼ぶんだ(笑)。それが俺のケツを蹴り上げる瞬間で、めちゃめちゃうれしい。こっちもガチンコしようぜってスタンスだから、あっちも気持ちよくブン殴ってくれる。インスタのコメントに「今日のライブはよくなかった。(対バンの)サナバガンの勝ちだな」って普通に書いてくる。俺らも「うぜー」って言って、次がんばるって気持ちになるんだよね(笑)。
長塚 めちゃくちゃ、アツい!
角舘 そういうヤツらがこれからも俺たちのこと好きでいてくれるって信じてる。WONKのファンは結構クールかな?
長塚 そんなことないよ。この間まですごく音楽に詳しい、いわゆる“音楽オタク”とも呼べそうな、音楽に詳しいおじさんたちが多かった。彼らは、ライブの後に「あそこでやったあのカバー、よかったよ」と、自分たちの狙いを理解してくれる人がいてすごくうれしい。最近は裾野が広がった感じがあって、ファッションやアートに関心を持つ若い層も多く来てくれる。いろいろな人にライブの良さを伝えたいから、アレンジはいつも変えているかな。
角舘 聴いてくれる人たちの幅が広がって来たんだね。俺らも、ライブでの音作りは日によって違うし、たとえばギターにうれしいことがあったらうれしい音になって、それにみんな引っ張られるし、俺も気分がいい時は歪み一個増やして歌おうってなる。その日限りで再現性は興味ない。
長塚 ライブの醍醐味だよね。
角舘 オザケン(小沢健二)も、ライブでは同じ曲でもキーを変えたりアレンジを変えたりして、同じようにやってなくて客を喜ばせたって聞いたことがあって。俺らはそのやり方がいいなと。
長塚 そこで思うのが、自分の歌がマイク通していちばん後ろの、関係者席の後ろで立っているおじさんにちゃんと届いているかということじゃない? 音量的な問題でなくて、自分の感情がそこに届いているかということ。
角舘 ライブ中に「後ろの人、聴こえてますか」って確認するやつ。
長塚 そう。WONKはもともとバンドとして、MCもないスタンスでいこうって感じだったけど、最近はフロアをしっかり盛り上げたくなるんだよね。
角舘 いいねいいね!
長塚 歌っているとわかると思うけど、自分をさらけ出さないとお客さんに曲の本質が伝わらない。
角舘 そうなんだよね。
長塚 僕は聴き手に自分の感情をまっすぐ受け取ってほしいと思っていて、そのためにもっといろいろな歌を歌いたいし、勉強したいし、もっと長塚健斗をさらけ出せるようになっていかなきゃいけない。
角舘 すごい楽しみだなぁ。
長塚 ありがとう。バンドとしてクールなサウンドを作りつつも、ライブでどこまでもアツいバンドでありたいし、アツいボーカリストでもありたい。
角舘 超いいね。俺もそう思う。



「ごちそうさまでした」と手を振り喫茶店を後にするふたり。それぞれ別の方向に歩き出し、街の雑踏に溶け込む。気取らない素の彼らの背中を見て不思議な感じがする。心をさらけ出し情熱たっぷりに歌う彼らに、ステージでまた会いたいと思ってしまう。

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Yogee New Waves角舘健悟、WONK長塚健斗に5問5答!

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・好きな映画
長塚:『バベル』。「あとはマーベル作品や古いフランス映画も好き」
角舘:『太陽をつかんだ男』。

・好きな漫画
長塚:『最終兵器彼女』。「この漫画は最高です。漫画は好きでジャンプとマガジンは毎週買っています」
角舘:『火の鳥』。「あれは生命の神秘を体感できる」

・自分の弱点
長塚:裁縫。「料理人もしていて手先を使っているけど、針が苦手。ボタンがつけられない……」
角舘:かわいい女の子。「いわゆる世間的にかわいい子、いろんな意味で無理(笑)。妄想しちゃうんですよね。下心出るし、うまく話せない。写真をお願いされて肩組んでくださいと言われると『ホーリーなものなので』とか言って断る。好みの子は比較的大丈夫。バックグランドも見えるし、それを含めて好きになる相手だから」

・オフの日の行動
長塚:「完全なオフの日は、朝起きて歯を磨いたらお酒飲む! そのほか、部屋の整理をしたり料理をしたりするなど、リラックスする時間を作ります。あまりアクティブじゃないかな」
角舘:「彼女がいたらデート。喫茶店や映画やうまい店を巡る。ひとりでは、水泳とサウナへ。あと、どんな時もバンドのことを考えている」

・好きな香り
長塚:人そのままの香り。「シャンプーや香水もいいけど、きれいすぎる香り、まとまりすぎている香りが苦手だから」
角舘:夏の初めと終わりの香り。「俺ってその時期に大体曲を書くんです。人の家の匂い(個性を感じられて)も好きだな」

かくだてけんご●1991年、東京都生まれの26歳。現代のシティポップを体現するバンド、Yogee New Wavesのボーカル&ギター。数多くの媒体
で年間ベストディスクに輝いた『PARAISO』から約2年半ぶりとなる最新アルバム『WAVES』が発売中。さまざまな夏フェスへの出演の他、10月28日より「DREAMIN' NIGHT TOUR 2017」をスタート。
yogeenewwaves.tokyo

ながつかけんと●1990年、東京都生まれの27歳。ジャズやソウル、R&Bが巧みに交差するエクスペリメンタルソウル・バンド、WONKのボーカル。2013年に結成し、16年にリリースしたファーストアルバム『Sphere』が世界基準とされ、支持される。9月6日にアルバム『CASTOR』『POLLUX』を2枚同時リリース。9月15日より「"GEMINI" TOUR 2017」を開催。
www.wonk.tokyo

角舘:ニット ¥105,840、中に着たニット ¥62,640、パンツ ¥93,960、シューズ ¥89,640/以上メゾン マルジェラ(メゾン マルジェラ トウキョウ) 
長塚:ジャケット ¥250,560、シャツ ¥37,800、パンツ ¥73,440、シューズ ¥101,520/以上ドリス ヴァン ノッテン
ドリス ヴァン ノッテン tel: 03-6820-8104
メゾン マルジェラ トウキョウ tel: 03-5725-2414

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texte : HISAMOTO CHIKARAISHI, photos : NAOYA MATSUMOTO, stylisme : MASATAKA HATTORI, coiffure : KOTARO (SENSE OF HUMOUR)

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