パリ、グラフィック・デザイナーの
フィフィ・マンディラックが気になる。
Culture 2009.10.21
大村真理子の今週のPARIS
フィフィ・マンディラック。響きも楽しいこの名前。もしパリで可愛いポストカードや文房具をみかけたら、すみっこを見てみよう。小さくこの名前が書いてあるかもしれない。パリの左岸ならボン・マルシェ、マグナ・カルタなどで見つかる。右岸ではリリ・ビュルという子供服&雑貨のブティックが、ベビー用のロンパースまで彼女がデザインするほぼすべての品を扱っている。でもパリに行かずとも、ホームページでショッピングができる。彼女のカラフルでユーモラスな世界に思わず、"可愛い!"と次々とページをクリックしてしまうはず。
フィフィ・マンディラック。パリ郊外、自宅の庭の奥に構えたアトリエが仕事場。壁には自作の陽気なグラフィックをパッチワーク。
フィフィがブランドをはじめたのは今から、9年前。
カードをディスプレーしているアトリエの一角は、小物をあしらってフィフィらしい飾り付け。
「グラフィック・デザイナーとして広告代理店で仕事をしていたのだけど、好きな仕事ばかりではないでしょう。だから、自分一人でやりたくなって......。すでに、友達に頼まれて出産の通知のカードを作り始めていたの。そして自分が2000年に結婚したときにわかったのは、なぜ、友達が私にカードを頼みに来るかってこと。だって、どこを探してもすごくクラシックか、うーむ???というようなタイプばかりで、モダーンなのもがなかったから。それで仕事を辞めて、ブランドをおこしたのよ。勇気ある? そうかも。でも、好きなことするのだから......。代理店で楽しめない仕事を続けるほうが、私には勇気がいることだと思うわ」
パリの名所の昔の写真にイラストをあしらったポストカード。赤い鳥はフィフィの作品によく登場し、バンダナにもあしらわれている。
こうして結婚や出産を通知するカードから始め、その後、フィフィはノート、レターセットなどアイテムを広げ、さらに、カエル(フランス語でグルヌイユ)が靴をはいたキャラクター"ヌイユ"も生みだした。これは未来のハロー・キティ?
かえるのヌイユ。カード 各3ユーロ。ヌイユをプリントしたコットンのよだれかけは14ユーロ。(いずれもインターネット販売価格)
「ヌイユを思いついたとき、試しに周囲の子供たちにみせたところ、これで髪留めが欲しいとか、いろいろリクエストされたの。もし、ヌイユで何か作ったら、ハロー・キティのようにすごく人気になるって確信してるわ! ビニールボールとかパジャマとかあったら、2歳半の私の娘が喜ぶだろうって思う。彼女にはまだカードは書けないのだから。私、カラフルな模様をつけたベビー用のロンパースも作っていて、それにヌイユも加えたのよ」
商品の幅はとても広い。バッグやバッジもあるので、ぜひホームページを覗いてみて。
明るい色彩と心なごませる温かみのあるイラストが特徴のフィフィの仕事。でも、子供の世界に結び付けられるのを彼女は拒む。自分自身を対象にデザインをしているのだから。彼女と趣味を分かち合う女性、特に日本には多そうだけど、まだ、日本での本格的展開ははじまってないそうだ。
フィフィの商品がパリで一番揃っているリリ・ビュルの店内。フィフィの仕事に一番最初に注目したブティックだという。
「私一人の小さな企業。だから例えばカップやクッションとか作りたいと思っても、量産のための投資ができないし、倉庫もないし。どうしても紙のような二次元の商品が多いのは、そういうわけなの。でも最近、ビオのコットン製の小さなスカーフというかバンダナをインドで生産したのよ。これは投資したわ。私、インディでいたいから、少しずつ少しずつ仕事を広げていこうと思ってる」
2年位前にプランタン・デパート内に期間限定ミニ・ブティックをオープンしたことがあるそうだ。自分の世界を創りあげることのできるブティックを持つのは、夢のまた夢だと言う。彼女のグラフィックワークが生きたあれこれが集まっているスペースなら、そこにいるだけで楽しい気分になれそうなので、気ながに待つとしよう。
LILLI BULLE リリ・ビュル 3, rue de la Forge Royale,
75011 PARIS
tel 01 43 73 71 63
営)10時~13時30分、15時~19時(月~金) 11時30分~19時(土)
休)日、月
ww.fifimandirac.com