衝撃のパペット・ミュージカル『アベニューQ』が来日!
人形に生命を吹き込むパフォーマーにインタビュー。
Culture 2010.11.25
かわいくてどこか懐かしい、パペットたちが繰り広げるミュージカル『アベニューQ』がブロードウェイからやってくる。ほのぼのとしたその姿からは想像もつかないブラックユーモアと挑発的なテーマが話題となり、2003年にオフ・ブロードウェイで初演後すぐにブロードウェイに進出、翌年にはトニー賞3部門を制覇した話題のミュージカルだ。
来日したパフォーマーたち。左から、ミセスT、ベアーをはじめ多くの人形の動きを担当するケリ・ブラッキン、怠け者ニッキーやポルノ中毒のトレッキー・モンスターなどの動きや声を担当するマイケル・リスシオ・ジュニア、主人公の青年プリンストンと投資銀行勤務でゲイという噂のロッドを演じるジョナサン・ルート、キュートなケイト・モンスターとセクシーなルーシー・ザ・スラットなどを演じるアシュリー・アイリーン・バックナム。
大学を卒業したばかりの青年プリンストンは、大きな夢を胸にニューヨークへと引っ越してくる。家賃の安いアベニューQ界隈に住みはじめた彼が出会うここの住人たちは、怠け者のニッキーや彼のルームメイトで投資銀行に勤めるロッド、インターネット中毒のトレッキー・モンスター、幼稚園の先生のアシスタントをしているケイト・モンスター、そしてアパートの管理人で元人気子役ゲイリー・コールマン(!)など、個性豊かな人(と人形)ばかり。彼らが恋愛、失業、人種差別、セックス、ホモセクシュアルといったリアルなテーマを孕んだ、抱腹絶倒コメディを展開していく。
公演に先駆けて、パペットを扱う俳優たちが来日。このユニークなパペット・ミュージカルの見所を聞いた。
大学を卒業し、ニューヨークへ引っ越してきたプリンストン(右)と、幼稚園の先生のアシスタントをするケイト・モンスター(左)。
AVENUE Q National Tour 2009
Kate Monster, Jacqueline Grabois, Princeton, Brent Michael DiRoma
© John Daughtry 2009
――初めてこの作品に関わることに決まったときはどう思いましたか?
アシュリー・アイリーン・バックナム(以下A):「最初からカルト的なファンがついていた作品で、私も大好きだったから、自分が参加できると知ったときは興奮したわ」
ジョナサン・ルート(以下J):「僕が初めてこの作品を観たのは2004年。これまでに観たどの作品とも違っていた。パペットを使ったショーはほかにもあるけど、『アベニューQ』では実際に操作する人間もパペットと一緒にパフォーマーとして立っているから、舞台上に観るべきものがたくさんあって、気がゆるむ瞬間がまったくないんだ。おもしろくてハートウォーミングで、それでいて鋭く核心を突くようなテーマを扱う作品。こんな舞台はそれまでブロードウェイになかったし、いまもまだ出てきていないと思うよ」
マイケル・リスシオ・ジュニア(以下M):「僕も初めて観たのは2004年。実は『アベニューQ』のことを何も知らずに行ったんだ。サントラも聞いていなかったし、見当もつかなかった。で、観たら、床を転げまわるくらい涙を流して笑ったよ! ウィットに富んだ最高の舞台だと思った。すばらしいメッセージがあるし、コンセプトもすごくいい」
ケリ・ブラッキン(以下K):「私もブロードウェイで観たのは2004年。ちょうどトニー賞を受賞した直後だった。私も何も知らずに観にいって、大爆笑! 特にすばらしいと思ったのは、いろいろな社会問題を扱っているところ。タブーもあるし、人によっては挑発的に感じる内容もある。でもすばらしい脚本によって、それらがスマートに、笑えるように盛り込まれているの」
無職だけれど気ままなニッキー(左)を自分のアパートに住まわせる共和党員で銀行に勤めるロッド(右)。ロッドはニッキーに、君がゲイでもかまわない、と言われるが・・・・・・
AVENUE Q National Tour 2009
Kerri Brackin, Nicky, Rod, Brent Michael DiRoma
© John Daughtry 2009
――ご自身が演じるキャラクターの好きな部分と、やっていて苦労した点を教えてください。
J:「自分が演じているキャラクターのことは全部好きだよ。物語はプリンストンの目線で進んでいくから、彼を演じ、観客と一緒に楽しむことができるのはうれしい。ロッドも楽しいよ。やりすぎなところもあるけれど、感受性が豊かで繊細な面を見せる瞬間もある。クレイジーな彼が、物語が進むにつれてだんだん地に足が着き、人間らしさを備えたキャラクターになっていくんだ。
でもプリンストンやロッドだけでなく、登場人物はみんな等身大で、魅力も欠点もある。そして誰にでも煌くことのできる瞬間があると、みんなが教えてくれるんだ。そしておもしろいのは、パペットを介することによって、観客はタブーと対峙し、その問題をより受け入れやすくなるんだと思う。
演じていて難しい点は、何だろう・・・・・・最初は、パペットを持って演じるということ自体が初めてだったので、新たな挑戦だった。でもいったん慣れたら、いまでは一緒に演じているという感覚だよ」
M:「最初に難しいと感じたのは、演じているとき、相手のパフォーマーを観るのではなく、その人が扱うパペットを見て、パペットに対してリアクションをすること。そういう演じ方に慣れなければいけなかった」
A:「この作品にはきっと誰にとっても、感情移入できるキャラクターがいるの。だからこれだけ支持されているのだと思う。私にとって大変だったのは、ケイト・モンスターと、ルーシー・ザ・スラットという、真逆ともいえるふたつのキャラクターを同時に演じることね。ふたりが対峙する場面があるんだけど、声を変えて、ひとりで会話をしなければならない。さらに、わたしはひとつのパペットをもっていて、ケリがもうひとつを操作している。だから彼女が持つパペットの声で話すときは、自分の手は動かしてはいけないの。ここは"多重人格シーン"って呼ばれているのよ(笑)」
K:「最初はパペットを動かすということ自体が難しかったけれど、いまではパペットたちは俳優としての私の延長のようなものね。私自身はせりふは言わないことが多いけれど、ほとんどのパペットの操作を担っている。ほかの人が演じているキャラクターを動きにして、体現するというのは、ときに大変だけれどとても楽しいわ」
アメリカの人気番組『アーノルド坊やは人気者』にアーノルド役で出演していたゲイリー・コールマンが、いまではプリンストンの住むアパートの管理人(右)という設定も話題に。
AVENUE Q National Tour 2009
Kerri Brackin, Nicky, Jason Heymann, Nigel Jamaal Clark
© John Daughtry 2009
――では最後に、日本の読者に向けて、それぞれの見所や、注目してほしいシーンなどをお願いします。
A:いちばんスキャンダラスなのはパペットのセックスシーンね。みんなそれを楽しみにしてるわ。ほかでは絶対に観られないから。誰か早く続けて!私が変態みたいに聞こえるじゃない(笑)
J:(笑)。この公演は、第1幕はクレイジーなコメディで始まり、大爆笑しながら楽しめる。そして観ているうちにふと、キャラクターたちのことを、コメディの登場人物である以上に好きになっていることに気づく。彼らの言葉や行動がいろんな意味を持ちはじめて、最後には、キャラクターたちと一緒に旅をしてきたような感覚を味わえるんだ」
K:「気がついたら完全に感情移入していることに気づくの」
A:「最初はどのキャラクターもステレオタイプのように感じる。でもジョナサンが言うように、最後には全部のキャラクターを大好きになっている。ステレオタイプを描いただけではなく、それぞれから学ぶことがたくさんあるのだと分かるの」
M:「ひとりひとりのキャラクターに人間的なクオリティがあり、ただおかしいだけじゃなく、誰でも共感することができるんだ。それがこの作品のすばらしいところだと思う」
作品への愛着いっぱいに語ってくれた4人のパフォーマーたち。いよいよ来月、初来日を果たす、愛すべきパペットたちが繰り広げる、過激でハートウォーミングなミュージカルをぜひお見逃しなく!
●12月15日~26日
●東京国際フォーラム ホールC(東京・有楽町)
●S席¥9,800、A席¥7,800、B席¥5,800
問い合わせ先:キョードー東京 Tel 03-0570-064-708
http://www.AveQ.jp
*日本語字幕あり