Culture 連載

きょうもシネマ日和

男子ウケの映画だなんて思わないで、知的な女性に薦めたい『アルゴ』

きょうもシネマ日和

jp-pub-photomain-argo_large.jpg

「いつも映画ってどこで観てるの?」"公開よりも前の作品をご紹介する"という仕事をする私は、時々友人からそんな質問を受ける。大抵は、その配給会社のフロア内に作られている"試写室"なるもので拝見するのだけど、映画館のように沢山人が入る訳でもないし、皆さんお仕事で来られているので、たとえコメディであっても、そんなに笑ったりしない。なので、面白い時には所構わず思いきり笑ってしまう私の声が響きすぎて、「あれ、私の声、目立っちゃってる?」みたいな恥ずかしい事はしょっちゅう。

でも『アルゴ』の試写は違った。

周りは、だんまり観ているタイプの"おじさま"な記者の方ばかりだったのに、その方々が嬉々として声を上げて笑っていらっしゃるのだ。

私は作品の面白さに加え、その状況も何だか面白かったのでちょっと遅れて笑ってしまい、結果、また私の笑い声だけが悪目立ちするハメになってしまった、、、。

そんな、おじさま達を魅了した『アルゴ』、もちろん映画業界の女性の間でも話題の的なのである。どんな作品かはまずはストーリーから。

jp-pub-photosub2-argo_large.jpg

◆ストーリー

1979年、イラン革命に沸くテヘランで、アメリカ大使館が過激派に占領されて、52人もの人質が取られてしまう

その中のアメリカ人6名は大使館から脱出して、カナダ大使の自宅にかくまってもらう事に成功した。しかし、バレるのは時間の問題。そこで、彼らを救出する為、CIAのトニー・メンデス(ベン・アフレック)が立ち上がることに。

彼らを国外に脱出させる為に作った作戦が、なんと!架空のSF映画「アルゴ」の製作を企画し、6人をその撮影スタッフに偽装させて出国させようという前代未聞の作戦だった。果たしてこの計画が成功するのか!?

◆信じられないけれど、実話

もし彼らがイラン側に見つかったら即虐殺されるという状況の中、映画の撮影クルーとして脱出するという、コメディ映画のようなこのアイデア、実は実際の物語というから驚きだ。この事件から18年後、クリントン大統領が機密扱いを解除してこの前代未聞の作戦の全容を公開したのという。それにしても、どうやって騙し通せたのかが気になるところ。その詳細はもちろん本作できっちり描かれているのだけれど、当時の街並みや機器なども完璧に再現されていて、当日を知る人は事件そのものをアメリカ側、イラン側から目撃したかのような気持ちになる。

jp-pub-photosub1-argo_large.jpg

◆政治情勢に疎くても大丈夫

と書いても、あまり政治情勢に明るくない方にとってはいくら実話でも興味そそられないかも?というか、私がそうだった。お恥ずかしいくらい政治に疎い、地図も読めない、地球儀なんて回す以外に使ったことがない。

そんな私が楽しかったのは、まずは72時間以内にイランからアメリカ人6名を脱出させなければならないというスリリングな展開とその突飛な方法。加えて、ハリウッドまで巻き込んで架空の映画を作り上げるというそのプロセスが、まぁ面白いのですよ。しかも、かなり嘘っぽいSF映画(笑)。だから、政治をあんまり知らなくたって大丈夫、何も心配はない。

◆手がけたのは、ベン・アフレック

本作を手がけたのは、俳優やプロデューサーとしても知られるベン・アフレック。

マット・デイモンと共同で製作・出演した『グッド・ウィル・ハンティング』で脚光を浴びて以来、数々の有名作に出演を重ねたものの、『ボーン』シリーズで一躍有名になったマッド・デイモンと比べると、コレ!と言った代表作が浮かびづらかった。(ファンの方ごめんなさい!)

しかし、彼がメガホンを撮るとその注目が再び!2007年の『ゴーン・ベイビー・ゴーン』『ザ・タウン』でその手腕が国内外から高い評価を受け、本作では『アカデミー賞に近い男』とまで言われるほど大絶賛されている。そして、本作ではアルゴ作戦を遂行するCIAを演じ、いい味を出しているのだ。

jp-pub-photosub4-argo_large.jpg

◆誘われたら、断ざるべし

主演のベン・アフレックを固めるのは、アラン・アーキン(『リトル・ミス・サンシャイン』ほか)、ジョン・グッドマン(『ビッグ・リボウスキ』ほか)、ブライアン・クランストン(『ドライヴ』ほか)といったベテラン勢。巧みな脚本をより面白く、深みを持たせているのが本当にさすが。普通、グラマラスなヒロインを登場させるくらいの脚色があっても良さそうなのに、そんな女性は出てこない。彼らだけで十分なのだ。

最後の最後まで手に汗握り、いや、心臓が汗をかきそうなくらいドキドキして、最後までその緊迫感が続く。

どうしても物語のテーマや出演者を見ると、女性的には「男性向けの映画なのかな」と思ってしまいがちなのだが、まったくそんな事はない。是非、ウィットな会話やスリリングなストーリー展開を楽しんで。もし彼や気になる人が「観に行きたい」なんて言っていたら、絶対について行くことをオススメします。


10月26日(金)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー。
監督:ベン・アフレック
出演:ベン・アフレック、アラン・アーキン、ブライアン・クライストン、ジョン・グッドマンほか
http://wwws.warnerbros.co.jp/argo/
©2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.
4
Share:
夏の暑さへの準備はOK? 涼しいメイク、ひんやりボディケア。
35th特設サイト
パリシティガイド
フィガロワインクラブ
Business with Attitude
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories

Magazine

FIGARO Japon

About Us

  • Twitter
  • instagram
  • facebook
  • LINE
  • Youtube
  • Pinterest
  • madameFIGARO
  • Newsweek
  • Pen
  • CONTENT STUDIO
  • 書籍
  • 大人の名古屋
  • CE MEDIA HOUSE

掲載商品の価格は、標準税率10%もしくは軽減税率8%の消費税を含んだ総額です。

COPYRIGHT SOCIETE DU FIGARO COPYRIGHT CE Media House Inc., Ltd. NO REPRODUCTION OR REPUBLICATION WITHOUT WRITTEN PERMISSION.