Culture 連載

Dance & Dancers

注目のアーティスト、川村美紀子にインタビュー。②

Dance & Dancers

前回に続き、才能溢れる若手ダンサー、川村美紀子さんのインタビュー中編です。

■川村美紀子は"創る人"なのである。

ダンスをはじめたのは16歳の時。
「きっかけは何でしたか、と聞かれるたびに、何かを思い出しては喋っていますが、いまだにはっきりこれだ、というのはわかりません。まあ、大したことがなかったのでしょう」
運動神経が良かったわけでもない。
「50メートル11秒でしたし、小中学生まで所属していたバスケットボール部ではずっとベンチを温めていました」
しかし、歌って踊っての応援パフォーマンスでは活躍したというから、やはり素養はあったのだろう。

具体的なダンス活動の開始は、高校生時代に部活動を通して出会ったヒップホップダンス、ということになるらしい。...あまり大きな声では言えないが、実はこの頃から、クラブやイベントの世界にも関心を持ち通い始めたそうだ。だからといって"私もプロのダンサーになりたい!"と夢見たわけではない...というか彼女にとって大切なのは"湧き上がってきたものを、それに対して自分が今知っている最適な方法で露出させていく"ことなのではないかと、話を聞いていて思うからだ。

なぜなら川村は、音も創るし、歌も歌う。

自分で作詞作曲したナンバーも数多く、発表の機会も持つ。あるイベントでは100枚用意したCDが完売したことも、あるそうだ。その歌詞は、時にクールでシニカル、時に切なかったり、ぷすっと笑わせてくれたりもするが、必ず、胸の片隅をちくちく突き刺してくる。

たとえば。

♪ひとつだけ ひとつだけ おねがいがあります/わたしにほんきにならないでください/きれいにかわいく ほほえみますから/おもうぞんぶん からかってください/つごうのよいときに よんでください/たくさんのうそを ささやいてください/こまったときは りようしてください/いらなくなったら すててください/あなたのことだけを かんがえる(にばんめのおんな)

♪才能があるってどんな感じ?/死んでいるかのような感じ?/天才のひとってどんな感じ?/ちょっとこわいひとな感じ?/あなたのみるわたし/わたしのみるあなた/ああ人間と周波数が合わない/ああ何故かしら/このサボテンの放つヘルツ(サボテン)

先日受賞したエルスール財団のダンス新人賞の授賞式では、カエルのおもちゃに手作りした真っ赤なリボンのカチューシャを合体させて、頭に被っていた。そしてインタビューの日に着てきたニットは、"手編み"。
「進学した高校では被服科に進みました。服やアクセサリーを作るのは大好きです。踊るときに身につけるものも、自分で手作りすることがほとんどです」

"創る人"なのである。

彼女の人生の中の今というタイミングで、必然的に突き動かされて創りはじめたものが、たまたまダンスになって注目された、というのが川村美紀子の今である、と思えてきた。

urano121217_05.jpg(左)『ダンストリエンナーレ2012』ショーケースより。(右)エルスール財団ダンス部門新人賞受賞式にて。


■プライベートでダンスの話はしない。

しかし、被服科から"まさかの日本女子体育大学進学"。
「ダンス部の顧問の先生が親身になって進路相談にあたってくださり、体育大学で舞踊を学んでみてはどうかと勧めてくださったんです。そこで、見学に行ったら、難しいからやめた方がいいよ"って言われてしまいました。むかっ、ときたからその発言をした(コンテンポラリーダンスの)松山先生のダンスクラスに通いまくり、そうしたら大学にも合格できました」

そして、そのキャンパスライフはというと、「夜はクラブで踊り、朝学校でシャワーを浴びて授業に出て、お天気のいい日は屋上でご飯食べて、空いた時間を図書室の受付のバイトに充てて。ほとんど家には帰らず、コロコロ(キャリーバック)に着替えと荷物を詰め込んで学校とクラブを行き来していました。...あ、当時はヘアスタイルがボウズや金髪だったのでバイトではロングヘアのウィッグを被ってました」好きな授業は実技よりも座学。「哲学的なもの、何か物事の真理をつくものが面白かったです。美の理論、なんて大好きでした」

クラブには通うが"遊ぶ"という感覚ではなかったそうだ。そして、当時も今も、友達は少ない方だという。「だからなのか、誰かとダンスについて語り合う、などということもないです。3歳の頃から通っている美容院のスタッフでさえ、私がダンサーと呼ばれるような活動していることを知らないと思います」

好きなダンサーも、特にいない。
「考えてみたら自分から積極的にダンスが見たい、と思ったことはないような気がします。たまたま見た映画に出演されていた舞踊家の存在感に心を動かされたり、ということはありましたが」

親しくしているのは、TVCMや映画によく一緒にエキストラ出演する仲間。"ちょっとアンダーグラウンドな匂いのする個性的なキャラクター"たちだ。

urano121217_002.jpg『すてきなひとりぼっち』 photo:BOZZO


次回は最終章、年明け早々、新たな展開を魅せる新作についてお話へ。

*To be continued

4
Share:
いいモノ語り
いいモノ語り
パリシティガイド
Business with Attitude
フィガロワインクラブ
BRAND SPECIAL
Ranking
Find More Stories