Culture 連載
イイ本、アリマス。
台湾で人気のコミックエッセイ
『接接在日本(ジェイジェイザイニッポン)』
イイ本、アリマス。
日本語を話せる人も多い。ホテルのフロントの人やレストランの人が語学に堪能なのは仕事上必要なのかなと思うけれど、それにしても親切だ。朝市に行けば、おじいちゃんおばあちゃんもペラペラだったりする。地図とにらめっこしていたら「どこにいくの?」と日本語で話しかけられたことも1度や2度ではない。台湾は、戦前、日本の植民地だった時代がある。その時期に日本語教育を受けた人たちは<日本語世代>と呼ばれ、今でも日本語がしゃべれるというわけだ。
戦後、台湾の人たちがいかに過酷な歴史を乗り越えてきたかを思えば、あの大らかさ、優しさが一層、魅力的に思えてくる。
戦後の台湾史と言えば、候孝賢監督の映画『非情城市』を思い浮かべる人もいるかもしれない。最近だと龍應大のノンフィクション『台湾海峡一九四九』にも詳しい。台湾、香港でベストセラーになった『台湾海峡一九四九』は、日本でもこの夏、翻訳・刊行され早くも話題になっている。震災の時、台湾の人たちがあっという間にびっくりするくらい多額の寄付を集めてくれてくれたあの親愛の情の不思議を解き明かす鍵は、この頃の複雑な台湾史をさかのぼり、ひもといていかなければ本当にはわからないのではないか。
とはいえ、台北を歩けば「全家(ファミリーマート)」もあるし、台湾の「セブンイレブン」のCMにはAKB48も出演している。「多拉A夢(ドラえもん)」も「海賊王(ワンピース)」もおなじみだし、テレビをつければ「あたしンち」がやっている。書店に行けば、ミステリーとマンガを筆頭に日本のベストセラーは速攻翻訳されて並んでいたりする。両さんでおなじみ「こちら亀有公園前派出所」は「烏龍派出所」だったりするけれど。台北大学のそばには「海辺のカフカ」という名前のカフェまであるのだ。
作者の接接さんは、写真の通り、とてもかわいらしい女性。
パートナーのくにさんは日本人。彼が出張で台湾に来た際に知り合い、遠距離恋愛の後、2004年に日本に留学。1年後に入籍する。以来、日本と台湾を行き来するようになった接接さんはブログに日本での生活文化をルポした絵日記をupするようになる。こうして生まれた『接接在日本』は、台湾では既刊の2刊が累計3万部のベストセラーになるほどの大人気だ。接接さんは、言う。
「日本に留学していた頃、日本語学校に通う以外にやることがなくて暇な時間をもてあましていたら、彼に絵日記を描いてみたらと提案されたのがきっかけでした。台湾では日本への関心が高いので、台湾と日本の文化の差異という話題にはもともと需要があったんだと思います」
接接さん自身、美術を専攻し、過去に漫画家のアシスタントやゲームのキャラクターデザインなどを手掛けてきただけあって、主人公たちのキャラクターも実に表情豊か。
切り口も実にユニーク。「終電を逃したらどうすればいい?」→「朝方までやってる居酒屋で始発を待つ。もしくはまんが喫茶かカラオケに行く」というお助け情報もあれば「電気のスイッチをわざわざ切りに行くのは面倒だから、日本人は電燈のヒモを長くする」(よく見てますね~)。「暖卓(こたつ)」は多目的に仕様できるため、机の上が「満満満!(あれやこれやでいっぱいに)」など実際に日本に暮らしてみないとわからない視点も人気の秘密だろう。「浴衣と和服の違い」「バーゲンで福袋をゲットするには」「初めてのお抹茶」など、女子ならではのテーマも満載。
「ファッションやデザインに興味があるので、よく新宿のミロードや原宿のラフォーレでブラブラしてました。大好きですよ、福袋!日本の漫画家だと鳥山明さんが好きです」
恋人同士の会話にも、国民性の違いはある。
接接さんが「我想你(愛してる)」は日本語でなんていうのかを彼に聞いたら「会いたい」だと言われる。そんなはずはないと「では<Ⅰ miss you>ならどういうのか」を日本語の先生に訊ねると「直訳すれば<あなたがいなくてさびしい>だけれど、よく使うのはやっぱり<会いたい>ですよ」と。「来抱抱(直訳すると、抱いて~)」なんて言おうものなら、遠回しな表現を好む日本人にはドン引きされてしまうというわけだ。
「台湾人の5割は0型ということもあるのかもしれませんね。O型の性格が国民性に出ている感じがします。日本人だとわかって、逆に親切にしてくれる国なんて台湾くらいじゃないですか。いろんな国に支配されてきた台湾だけれど、台湾人は日本のことが一番好きで、もっといろんな方面で助け合っていきたいと思っています。一度台湾に来てみませんか。絶対台湾人のあたたかさに癒されますよ。能天気ばかりだけど(笑)」
8月には3巻も刊行される。「日本語版が出たらぜひ見てみてほしい」と接接さん。その日が来ることを楽しみに待ちたい。とはいえ台湾版も漢字なので、なんとなく意味がわかるのが愉しい。台北の大型書店、誠品書店などで入手可能なので手にとってみてください。興味がある方はこちらの接接さんのブログも、ぜひ。
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