蜷川実花が世界へ発信! リアルで新しい東京の女性像。

写真家・映画監督の蜷川実花が初めて挑むドラマ作品「FOLLOWERS(フォロワーズ)」。女性たちが元気になれる物語を紡ぎたい、とかねてから願い続けてきた蜷川監督が長年温めていた物語が、数多くの話題作を生み出してきたNetflixにより、世界190カ国に独占配信される。早くも各方面で注目を集める本作に蜷川が託した思い、そして作品のモチーフであるSNSとの、自身の付き合い方とは?

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写真家として活躍する主人公、奈良リミを演じる中谷美紀。蜷川はリミについて「私自身が憧れる女性像になった」と語る。

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「FOLLOWERS」撮影現場での蜷川。

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日本で描かれてこなかった女性像。

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女優を夢見て上京するもまったく芽の出ない百田なつめを、池田エライザが演じる。

――「FOLLOWERS」は長年温めていた企画だそうですね。アイデアの出発点から聞かせてください。

『ヘルタースケルター』(2012年)の撮影が終わった頃に、軽やかでおもしろい物語をやりたいなという気持ちになったんです。ショートストーリーみたいなものを書いて、脚本家を探し始めたのがそれくらいだったかな。最初は“付き合っていた彼が自称DJだった”とか男女のネタを集めた話がスタート地点でした。でも脚本を書き進めているうちに、私にとってどうやら恋愛はメインディッシュじゃないらしい、と気付いて(笑)。最終的には友情や仕事を描く方向になっていきました。自分にとって何が大事で、何をカッコ悪いと思っているか。それが露呈していく過程も楽しかったですね。

――主人公のリミが監督と同じ写真家ということもあって、東京で働く女性たちのリアルなライフスタイルも描かれていますよね。みんなで集まってスーパーの納豆巻きを食べるシーンも楽しかったです。

私たちのような業界にいると、いつもシャンパンを飲んでオリーブを転がしているみたいなイメージを持たれがちですが、全然そんなことはないわけです(笑)。もちろんとても局地的な物語で、このドラマがすべての働く女性たちの物語をすくい上げているとは思っていません。でもこういう女性像を描いた日本のドラマや映画があまりにも少ないな、という思いがあって。

仕事は大好きだけど別に女を捨てているわけでもなく、結婚か未婚か、子どもがいるかいないかにかかわらず、楽しい日々を送っている女性たちが周りにはたくさんいます。年齢的なことでそろそろ子どもはどうしようか、っていう話を聞くことはありますけど、何が何でも結婚したい!みたいな女性像ばかりが描かれるという偏りに違和感を持っていました。男も女も大変なことはあるけど、女の人ってすごく楽しくない!?ってことを描きたかった。その気持ちがこのドラマのスタート地点ですね。

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中谷演じるリミの女性会仲間。左から、人気歌手の敏腕マネージャーあかね(板谷由夏)、リミ(中谷)、リミのマネージャーでありいちばんの理解者ゆる子(金子ノブアキ)、実業家として手腕を発揮するエリコ(夏木マリ)。

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SNSのネガティブな反応が燃料になる。

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池田演じるなつめ(左)は、ひょんなことから人気ユーチューバーのヒラク(上杉柊平/右)に出会い、惹かれていく。写真のカワイイモンスターカフェなど、いまの東京の風景が多く登場するのも本作の魅力。

――タイトルにあるように、SNSがひとつのモチーフになっています。

女優やモデルがどんなに大変な思いをしながら生きているかを私たちは知っているけど、メディアからだけでは伝わらないこともあると思うんです。たとえばキラキラしている部分だけしかアップされていないインスタグラムを見て「この人は子どもがいてもあんなに素敵なのに、自分はなんでこうなんだろう」っていうふうには、絶対に思わないでほしい。みんな大変だし、みんな大丈夫。一緒に頑張ろうよ、っていう気持ちで撮った作品です。

――ご自身がSNSで発信するうえで気を付けていることはありますか?

なるべくダサいところや弱いところも、うっとうしくならない程度には正直に出すようにしています(笑)。エゴサーチもよくするのですが、ネガティブなことには反応しないようにしているんです。でも私にとってエンジンをかけるために必要なガソリンは、ネガティブなことから発生する場合が多いんですよ。こんなことを言っている人たちを納得させてやるぞ!みたいな(笑)。楽しいことはリツイートしてみんなで共有して、ネガティブなことは自分の中の燃料にする、っていう感じですね。あとは、嘘を書かないこと。もちろん書かないことはあるけど、書いていることは絶対に自分が思っていることです。

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きらびやかな世界に生きるリミたちとは対照的に、無限の可能性を秘めながら葛藤しもがく、“まだ何者でもない”若者たち。左から、ノリ(ゆうたろう)、サニー(コムアイ)、なつめ(池田)。

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自分の考えを詰め込んだ、“言葉のドラマ”でもある。

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東京のシンボルのひとつである東京タワーもさまざまな形で登場する。

――「汝の道を進め、そして人々をして語るに委せよ」など監督からのメッセージが感じられるセリフも多く入っていますよね。

それは父からもらった言葉ですね。父からは「みんなが右に行っても、自分ひとりでも左だと思ったら左に行ける人になってほしい」ということをずっと言われていたんです。ドラマは話数がたくさんあるし、自分が生きている世界を舞台にした現代劇だったので、いままでにないほど普段の自分が考えていることをセリフに入れ込みました。リミはもちろん、そのほかのキャラクターも、みんなあっちでもこっちでもいいこと言ってたでしょ(笑)。もちろんいつものようにファッションやメイク、美術など何度も打ち合わせを重ねてすべてにこだわって作っていますが、今回は“言葉のドラマ”になっているかもしれませんね。

――監督にとって、その言葉を託せる方たちがキャスティングされているわけですね。

40代で自分の意志を持って凛とされていて、それでいてファッションが似合う方として中谷美紀さんにお願いしたいなと思ったんです。それで、金髪なんかいかがでしょう……?と提案させてもらいました。池田エライザさんは、年下だけど私よりもずっと大人で達観しているのですが、若い頃のがむしゃらな感じを思い出しながら演じてくれたみたいです。コムアイの飄々としたマイペースな感じも、ゆうたろうくんのいまっぽさもよかった。憧れの女性像を演じてくださった夏木マリさんはリーダー的存在で助けてくれましたし、板谷由夏さんのシーンもすべて大好きです。リミのマネージャーであるゲイのゆる子役を金子ノブアキさんにお願いしたのは、あっくん(金子)は私にとって会うとほっこりする親戚枠だから(笑)。撮影中は完全に女子同士の距離感でした。私自身、撮影が終わって作品が完成してからも、ドラマに登場するみんなのことを思い出したりするんですよね。なつめ(池田)は女優としてちゃんと頑張って成功しているかなぁ、とか。いつか続編ができたら楽しいだろうなと思っています。

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蜷川作品ならではのゴージャスな美術セットも魅力。「フィガロジャポン 」のファッションページもたびたび手がける美術デザイナーENZOが担当。

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撮影現場にて、中谷(中央右)と話す蜷川(右)。

蜷川実花 MIKA NINAGAWA
写真家、映画監督。国内のみならず、2016年の台湾・現代美術館(MOCA Taipei)での大規模個展、17年の上海での個展『蟻川実花展』など海外でも個展を行い、大きな話題に。現在、個展『蜷川実花展−虚構と現実の間に−』が全国の美術館を巡回中。映画『さくらん』(07年)や『へルタースケルター』(12年)、『Diner ダイナー』(19年)、『人間失格 太宰治と3人の女たち』(19年)など映像作品も多く手がける。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会理事を務めている。
Netflixオリジナルシリーズ「FOLLOWERS」
●監督・共同脚本/蜷川実花
●出演/中谷美紀、池田エライザ、夏木マリ、板谷由夏、コムアイ、中島美嘉、浅野忠信、上杉柊平、金子ノブアキ、眞島秀和、笠松将、ゆうたろう
2月27日(木)、Netflixにて全9話世界190カ国へ独占配信
http://netflix.com/followers

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interview et texte : MIKA HOSOYA

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