ポール・スミス、50周年を祝して。

Fashion 2020.10.01

移り変わりの激しいファッション界において、50年も自身のブランドを続け、世界各国で展開しているのは、偉業以外のなにものでもない。1970年、ノッティンガムのバイヤード・レーン6番地で小さなショップを立ち上げたところから始まったポール・スミスが、今年その偉業を成し遂げた。ブランド設立50周年を記念して、過去のアーカイブからのプリントやテーラリングを用いた特別なカプセルコレクションが発売される。

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1990年春夏コレクションで発表されたアップルプリントは、ミニマルな90年代の幕開けを象徴するよう。「このリンゴをプリントに用いるアイデアは、当時私が関心を持っていた”less is more”、余計なものを除くシンプルなアプローチをとるグラフィックデザインが根底にあったように思います。…ウィーンに建築家のオットー・ワグナーが造った有名な郵便貯金局があります。ウィーンを訪れたときに、そのガラスと鉄でできたシンプルな建物を一目見て恋に落ちました。時を同じくして、私はバウハウスとル・コルビュジエにも魅了されていました。このような状況が混ざり合い、アップルプリントへとつながっていったのです」。左:パーカ¥33,000、ジョガーパンツ¥29,700、キャップ¥13,200   右:パーカ¥33,000、パンツ 参考商品、バケットハット¥15,400

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このカプセルコレクションに用いられたプリントは、過去のコレクションの中からとくに評判となった、スパゲティ、シードパケット、アップル、マナーハウス、ローズの5種類。どれもビビッドな色と柄、ときにシュールな印象を与えることもある、ポールのプリントに対するユニークなアプローチを象徴するものだ。「1990年代に布地にフォトグラフィックプリントを請け負っている会社はほとんどありませんでした。私はフォトグラフィックプリントを商材に用いた最初の人物ではなかったものの、土産物屋で売られているティータオルやPVC素材のテーブルクロスにしか使われていなかったそれらをファッションへと昇華させたパイオニアは私であると言えるのではないでしょうか」とポールは語る。

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1994年の秋冬コレクションで話題をさらったこのプリントのきっかけは、ポールが旅した東京で目にしたスパゲティの食品サンプル! 「1980年代にスパゲティの食品サンプルを購入してから、それは長年私のオフィスに飾られていました。そしてフォトグラフィックプリントを思いついたのです」。バックプリントパーカ(メンズ)¥33,000、ジョガーパンツ(メンズ)¥29,700

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テーラードは、50周年のコレクションの中でも、ポールが大好きな繊細な手仕事や細かいディテールで表現。デヴォレ加工のベルベットスーツは、ジャケットとパンツともに繊細な花柄が施されている。「このスーツ地は、とても素敵な男性とその家族が経営する小さなフランスの会社が作っていました。デヴォレ(加工)というこの生地は、当時は主に女性のイヴニングウェアに用いられていましたが、メンズウェアには皆無でした。…デザインは、生地に施したフラワーモチーフがベースとなり、スーツとして仕立てました。おそらくこれはダンディズムへの回帰だったと考えています」

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1998年春夏コレクションで発表したデヴォレ・ベルベットのテーラードスーツ。この素材をメンズウェアで用いることは当時皆無だった。「正直に言うと、我々もこの生地がトラウザーズにするのに十分な耐久性があるかどうか確信はありませんでした」とポール自身もいま明かす。ジャケット¥300,300(日本ではウィメンズのみ展開)

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パンツ¥128,700(日本ではウィメンズのみ展開)

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今回のカプセルコレクションで展開されるプリントやデザインは、ポール・スミスの50年の歩みの中でも、ポール自身の心にとくに残っているもの。それぞれに彼のイギリスでの人生・暮らしや、旅先でのひょんな出合いから生まれたストーリーがある。このスペシャルな機会は、買い逃した傑作アイテムを手にするチャンスでもあるし、ポール・スミスの魅力を改めて発見する、楽しく、驚きに満ちたファッションアドベンチャーになるはず。

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1989年春夏コレクションで発表されたローズプリントには、英国らしさが漂う。「叔父のビリーがノッティンガム近くのチルウェルという場所にあるグレゴリーズ・ローズィズというバラ栽培農家で働いていました。…母に連れられてビリーのガーデンによく行っていたため、私はバラがとても好きです。…現在私の家の庭にはバラが植えられていて、その香りは当時の思い出を呼び起こしてくれます」。ドレス¥61,600、ニット¥59,400

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2002年春夏コレクションのマナーハウスプリント。「当時デコラティブな方向にトレンドが流れている中で、私自身、つねづねチョコレートボックスや壁紙などに見られる野暮ったくてキッチュなプリントに魅了されてきたことからマナーハウスプリントは生まれました。これは手書きのプリントで、非常に高い評価を受けるものとなりました。おばあちゃんの家の壁紙をイメージして作られたプリントです」。クルーネックカーディガン¥42,900

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ポール・スミスの50周年記念にぴったりの美しい書籍も発売される。内容は、英国のファッションアイコンであるサー・ポール・スミスの唯一無二のスピリットを、ポール自身が選んだ50のモノを通して浮き彫りにしたもの。パリでの最初のショー、ロンドンのフローラル・ストリート ショップ、アイコニックなストライプの進化など、自身が長年にわたりインスピレーションを受けてきた50のモノを通して、ポール・スミスに迫る。『ポール・スミス』 トニー・チェンバース編 植田まほ訳 青幻舎刊 ¥8,250(11/22発行)

●問い合わせ先:
ポール・スミス リミテッド
https://www.paulsmith.co.jp/stories/aw20/50th-anniversary-capsule-collection

 

texte : NATSUKO KADOKURA

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