マルベリーのグリーンなものづくり宣言とはいかに?

Fashion 2021.05.22

「グリーン」であることを定番に……。ブランド創立50周年を迎えるマルベリーは、「長く愛用できる製品づくりを行うビジネス」をこれからも目指し、新たなマニフェスト「Made to Last(メイド・トゥ・ラスト)」を、4月22日のアースデーに宣言した。

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マルベリーの歴史は、1971年に創業者ロジャー・ソウルが台所のテーブルを作業場とし、革の切れ端やスクラップレザーを使ってレザー小物を制作したところからスタート。以来、イギリスの伝統と革新的なアイデアを融合させたスタイルで成長を続け、独自の地位を築いてきた。
それから半世紀が過ぎたいま、より良い社会を目指し、長く愛用できる製品づくりを行うことができただろうかとマルベリーは自問。
もちろん、マルベリーは、いままでもファッション業界でのさまざまなサステイナブルな取り組みに参加してきたが、原料の調達から製品として購入者の手もとに届くまでのサプライチェーン全過程において、再生型・循環型ビジネスモデルへの移行に、より真摯に取り組むべきと結論づけたのだ。

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マルベリーの基盤を成すレザーグッズは、実にコレクションの90%を占めている。マルベリーは、農場での家畜飼育から製品の完成にいたるレザーのサプライチェーン全体において、透明性、再生、循環性を確保するための取り組みを行なっている。スコットランド・ダンディ近郊にある、アンガスの地で牧畜を営んできたアンドリュー&ロバート・ブリュースター兄弟は、循環再生型農業経営者。「農業に携わる者たちが、環境再生型農業のメリットを十分に認識していないと感じています。問題は牛肉ではなく、その生産方式が問われているのです」

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「レザーはサステイナブルな素材となり得るのか?」「青いバッグも『グリーン』なバッグになり得るのか?」「誰が新しいバッグを必要としているのか?」「古くなったバッグを再び活かすことはできるのか?」「バッグで世界を救えるのか?」
こうした一筋縄ではいかない問題の解決策として、たとえば、有機農業や環境再生型農業を行う農家から原料を調達し、二酸化炭素排出量を世界最小に抑えたレザーの開発に取り組み、この革新的な調達・生産モデルを2030年までにレザーのサプライチェーン全体において実現するという目標を掲げている。これは、つまりマルベリーのバッグがどんな色であっても、つねに「グリーン」なものとする目標。

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スコティッシュ・レザー・グループでサステナビリティ&イノベーション部門のディレクターを務める、公認環境保護主義者のウォーレン・ボーデン博士。彼は、皮革化学者協会の会員で、特許技術を使用した熱エネルギー発電機を世界に先駆けて開発した研究者でもある。「持続可能な方法で牧草飼育を行なった動物に由来する素材を使用し、製品寿命の最後に回収されて調達量が実質ゼロになるのであれば、バッグは世界を救うことができると思います」

そのほか、寿命に達した古いレザーを燃料に変え、新たなレザー生産に役立てるという革新的な再生スキームの構築、オペレーション全体において完全に「ゼロ・ウェイスト(ゼロ廃棄物)」を実現する試み、マルベリーのバッグがどんな状態になっても熟練職人が集まる修理チームによって長く愛用できるようにするサービスなども。
マルベリーのマニフェストは、ファッション業界がこれから歩むべき道を照らし、いち消費者としては、ショッピングの際の大事な選択基準にもなるはず。

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マルベリーの修理チームの一員、エリー。「修理して使うことで製品寿命も長くなり、サステナビリティに貢献することができます。それぞれのバッグに、さまざまな思い出が詰まっていることを意識しながら修理を行なっています。 ―これだけ包括的な修理サービスを行なっているラグジュアリーブランドは極めて少なく、マルベリーのようにレザーやパーツなど、過去35年分の膨大なアーカイブを保存しているブランドはほとんどありません」

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そして2021年は、このマニフェスト「メイド・トゥ・ラスト」の取り組みを体現したコレクションが数回にわたり発表される。その第3弾となる「タイポグラフィ カプセルコレクション」が発売中。

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バッグ「ミニ サッチェル」(H21×W16.5×D9cm)¥68,200/マルベリー(マルベリージャパン)

今コレクションは、サステナビリティの基準を満たすよう新たに開発されたエコ・スコッチグレインレザーを使用。これは食用に適さず、本来は破棄されてしまう穀物で作られたバイオシンセティック(生合成素材)のこと。マルベリーのアイコニックなモデルにこの新素材を用い、コンテンポラリーなグラフィック加工を施した。1970年代の創業初期にデザインされたオリジナルのロゴを、よりシャープかつコンパクトにまとめ、現代らしいユニセックスなスタイルに仕上げている。まさに、ブランドのDNAを進化したかたちで表現したもの。マルベリーの革新的な取り組みから、ますます目が離せない。

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バッグ「ジップト ウィークエンダー」(H28×W46×D14cm、ショルダーストラップドロップ 最長52cm)¥137,500/マルベリー(マルベリージャパン)

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上:カードケース「クレジットカード スリップ」(H7.5×W10cm)¥15,950  下:財布「ジップト コインポーチ」(H9×W13×D0.5cm)¥20,900/ともにマルベリー(マルベリージャパン)

●問い合わせ先:
マルベリージャパン(マルベリー)
0120-097-428(フリーダイヤル、受付時間:平日10時~19時)
www.mulberry.com

texte : NATSUKO KADOKURA

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