正装を覆す、ティモシー・シャラメの挑戦的なルック。
Fashion 2021.06.03
ジョニー・デップの跡を継ぎ、ウィリー・ウォンカを演じることが決まったティモシー・シャラメ。2020年のオスカー授賞式では、レッドカーペットの伝統とはかけ離れたプラダのルックで登場した彼。そのレッドカーペットでの輝きを振り返ってみよう。
2020年のアカデミー賞ではプラダのルックで登場したスクリーンの新星。(ハリウッド、2020年2月9日) photo : Getty Images
授賞式はいつも少し古風。レッドカーペットは、女性には限られた範囲の可能性(洗練されたスーツからメレンゲみたいな甘〜いドレスまで)を広げてくれるが、男性の装いは常に黒や紺のタキシードに限られてきた。
しきたりに新たな風を吹き込むためには、不謹慎な若者の登場が必要だったのだろうか。いずれせよ、2020年のアカデミー賞のレッドカーペットで人々を驚かせた24歳のティモシー・シャラメは、新風を吹き込む役目にぴったりの存在だ。
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真のファッションセンス
プラダがデザインしたナイロンのセットアップで登場したティモシー・シャラメ。(ハリウッド、2020年2月9日) photo : Getty Images
2023年に公開予定の映画『Wonka』(原題)で、奇抜な発明家を演じることになったフランス系アメリカ人のティモシーは、そのファッションで常にメディアの注目を集めてきた。2020年のアカデミー賞では、レッドカーペットでお決まりのタキシードではなく、プラダのネイビーブルーのナイロンのセットアップで登場。1955年に作られたカルティエのヴィンテージブローチをあしらったジップジャケット、足元を絞ったパンツ、黒のレザーブーツ...。正装の概念をガラリと変えるアンサンブルだ。
同時に、シャラメはプラダのジャケットに白いシャツを合わせることで、ハリウッドのエチケットに敬意を払うことを忘れなかった。ツイッター上では、彼の装いがガソリンスタンドの店員やゴーストバスターズのメンバー、さらには「ギルモア・ガールズ」シリーズでマイロ・ヴィンティミリアが演じたジェスと比較され、話題になった。
『君の名前で僕を呼んで』の発表会では、大胆なアンサンブルで、フォーマルなワードローブに再び揺さぶりをかけた。2019年10月にロンドンで行われた『キング』のプレミアでは、3000個のスワロフスキーをちりばめたルイ・ヴィトンのパーカーで登場し、センセーションを巻き起こした。さらに同作の発表会では、ヴェネチア国際映画祭ではサテングレーのスーツ、シドニーではシアンブルーのスーツを着用したが、いずれも彼のお気に入りのハイダー アッカーマンのデザインだった。
パリで行われた『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』のプレミアには、ステラ・マッカートニーがデザインしたフューシャピンクのスーツに、エッフェル塔のキーホルダーを指に付けて登場。こちらも大きな話題を呼んだ。
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ティモシー・シャラメはいま、何事にも果敢に挑戦する姿勢を見せている。カラフルなスーツ、刺しゅうの入ったヨーク、ジェンダーの規範にとらわれないカッティング...彼のファッションへのこだわりを示すチョイスだ。これらのスタイリングは全てシャラメ自身によるもので、彼に手を貸すスタイリストがいないことはよく知られている。
ハリウッド、そしてSNSの寵児である彼の人気はとどまるところを知らない。デヴィッド・ミショッド監督の『キング』やグレタ・ガーウィグ監督の『ストーリー・オブ・マイ・ライフ/わたしの若草物語』に出演し、今年はウェス・アンダーソン監督の『ザ・フレンチ・ディスパッチ』、ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『Dune/デューン 砂の惑星』にも出演予定だ。
しかし、歴史が情熱なしには語れないように、彼もまた、若き女優のリリー=ローズ・デップと噂されるロマンスなしでは語れない。恋人同士だったウィノナ・ライダーとジョニー・デップのグランジ・スタイルがいまだに参考にされているように、このふたりもずっと我々の想像力をかきたててくれるだろうか。続きは次のレッドカーペットで!
text : Charlotte Arnaud, Adrien Communier (madame.lefigaro.fr)