テレワークを経て、オフィススタイルはどう変わった?
Fashion 2021.10.02
完全テレワークが終了し、フランスでは、人々がオフィスに復帰して数週間が経った。だがみんながお堅いオフィススタイルに戻ったかというと、そうでもなさそうだ。
数カ月に及ぶロックダウンやテレワークの後で、オフィスルックはハイブリッド化が進行中。スポーツウェアの快適さとワーキングウェアのストリクトなエレガンス、凝ったデザインとオリジナリティがミックスしている。
(左から)ローラン・ムレ、ステラ・マッカートニー、イザベル・マランの2021/22年 秋冬コレクション。photo : imaxtree
もともとはハイヒールにカラフルなスーツ、凝ったデザインの装いが得意だったパリ在住のグラフィックデザイナー、エルザ(28歳)は、この1年半の間に自転車を購入した。彼女にとって、レギンス、サイクルパンツ、フラットシューズ以外はもう考えられない。「私の生活はいまや快適さ重視。見た目を整えるためにどれだけの時間を失っていたのか気づきました。いまは自分の身体に満足しています。オフィスに戻ることになっても、服装を変えようとはまったく思いませんでした」
ここまで極端ではないが、1回目のロックダウン以来、売上げが急激に伸びた“ラウンジウェア”やスポーツウェアを取り入れた装いも、年齢や立場や職種によるとはいえ、社内で見かけられるようになった。「柔らかな素材の服や、簡単に脱ぎ着できる服が増えている」と指摘するのは、ブランドコンサルティング会社ネリーロディの消費者トレンド&インサイト部門ディレクターのヴァンサン・グレゴワールだ。
「ブランドは多くのニットアイテムを発表し、メンズファッションでも、ゆったりしたソフトな仕立てのスーツや、スーツとスポーツウェアを組み合わせたハイブリッドなパンツはメンズにも登場しています。靴もフラットシューズやローヒールが目立つ。こうした装いはとくに、上の世代に比べて気取らないスタイルに慣れている30~40代に人気です。きちんとした印象と、テレワークで味わった快適さを同時に叶える装いが求められています」
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ハイブリッドなオフィスに適したテクニカルウェア
快適さの追求は、軽めのメイクが好まれる傾向にも表れている。なかにはノーメイクに移行した人もいる。「仕事に行く時はノーメイク」と言うのは、テレビ業界で編集アシスタントとして働くクレール。「ロックダウンの間にメイクをやめてアロエベラでスキンケアを始めたら、問題だらけだった肌の調子がよくなった。仕事場に復帰したら、みんなに褒められました! 夜に出かけるときも、マスカラと口紅を少しつけるだけ。あと、みんなと同じように、ブラジャーもしなくなったわ」
誰もが同じとは限らないが、確かにテレワークとロックダウンは身体と姿勢について考えるきっかけになった。いまやスポーツウェアメーカー各社は新商品の開発に勢力を注いでいる。キッチンの椅子で仕事をするのは、人間工学に基づいたオフィスチェアで仕事をするのとは別問題だからだ。
「ホームウェアも機能性が重視されるようになり、進化しています。まだ先でしょうが、そのうち、たとえば生地が擦れるのを防ぐために、肘や腰の部分をキルティングで補強したウェアも登場するでしょう」と前述のグレゴワールは話す。
「また個性的な眼鏡の需要も高まっています。ビデオ会議でスクリーンを見つめる機会が増えた目を保護する機能のあるものや、シンプルな装いにスパイスを与える、デザイン性の高いタイプが人気です」
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ストリクトでも、遊び心を
再びエネルギーが街にあふれることになれば、ビジネスライクだけれど軽やかでカラフルな、凝ったデザインの装いが戻ってきそうだ。赤いパンツ、プリントのブラウス、パステルカラーの大振りのメガネ……。「ゆっくりとした変化ですが、色や柄物など、パンデミック前に身につけていたものとは一線を画す大胆なアイテムも今後、徐々に現れそうな気配です」とグレゴワール。
「やりすぎになる可能性もあるくらい。たとえば、これまでデニムとポロシャツが定番だった社員たちがみなネクタイをしてスーツを着るようになるとか。かっちりしたビジネススタイルが逆にクールな気分ですから」
パンデミックは私たちからおしゃれも、人との繋がりも、軽やかさも奪ったけれど、ちょっとした気まぐれを起こす口実も与えてくれたようだ。オフィスに少しだけ奔放な風を吹き込むのも悪くない。
(※)名前を一部変更しています。
text:Sofiane Zaizoune (madame.lefigaro.fr)