ライター栗山愛以による、パリコレ日記。東京から遠隔でコレクション取材を続ける栗山が、マニアックな視点で気になる最新トレンドを綴る。
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PARIS COLLECTION
DAY 3
Loewe
#18
#41
#50
コートやドレスにはメタルプレートが組み込まれ、従来の服の形をきちんとなしていないようなルックが続き、何がどうなっているのやら!? すべてがてんでばらばらに見えて、各ルック同士が関連性を持っているのかどうかもよくわからない。
一体どんなテーマが貫かれているのか、と戸惑っていたが、着想源が16世紀イタリアのマニエリスムの画家、ヤコポ・ダ・ポントルモと聞いて腑に落ちた。
ルネサンスに確立した絵画の典型例をずらしていくことで新しい表現方法を探ろうとしたマニエリスムは、激動の時代に既成の価値観が揺れ動く中で生まれた。きっとコロナ禍は芸術家たちに当時と同じくらいのインパクトを与えているんだろう。クリエイティブディレクターのジョナサン・アンダーソンがマニエリスムに共感したのも自然な流れなのかもしれない。
着るのに気合いが必要になりそうなパンチのあるルックが並んでいるが、光り物には目がないのでスパンコールのスリップドレスは手に取ってしまいそう。
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Valentino
#11
#16
#35
会場はマレ地区にあるカロー・デュ・トンプルとその周囲のストリート。パリコレに行くと必ずチェックするセレクトショップ、ザ・ブロークン・アームの近くの建物で、あー、あの辺かあ、と懐かしくなる。ぐるっと周るとカフェが並んでいるんですね。
手の込んだ刺繍など、いつものようにクチュールライクなテクニックを駆使しているが、鮮やかな色の無地のアイテムが新鮮。そしてまたお腹や背中を見せるアイテムがちらほら。
アニマルプリントのコートなど、一部はアーカイブを参照しているようで「Valentino Archive」と書かれたラベルが付いているそう。
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Hermès
#7
#51
#56
軽やかで穏やかなコレクション。そしてこちらもいつもより肌の露出が多い。でもヘルシーでエレガントな印象がするのは、ボトムがハイウエストでおへそまでは見せていないからか。大人がトライするならこのくらいの感じでいった方がいいのかもですね……
乗馬の世界発祥だということは重々わかっているのだが、レザーに金属があしらわれるとパンキッシュに見えてしまう性質。今季はスタッズ付きのラムスキンのジャンプスーツなんかがすてきだ。
フィナーレにパリ在住のアーティスト、フローラ・モスコヴィチによる絵画の背景が動き、飛行場が姿を現わすのは壮観だった。SNSで現地にいた人の感動のコメントをいくつか見たが、生で体験してみたかったなあ。(涙)
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Balenciaga
#16
#50
#62
メットガラで顔まで覆うバレンシアガのルックを着用したキム・カーダシアンとクリエイティブディレクター、デムナ・ヴァサリアが話題となったが、それは前フリだった!?
いまデムナは社交界に関心を持っているのか、バレンシアガは映画のプレミアのフォトコールという形式で新作を発表した。モデルにはプロに混じってスタッフやセレブもいて、フォトグラファー、ユルゲン・テラーのパートナー、ドヴィールや、いまやブランドのミューズのような存在になっている女優、イザベル・ユペールなんかがかっこよかった。エリオット・ペイジが履いていたゴス風クロックスコラボはぜひ手に入れねばならない。
その後公開されたのは、短編映画『The Simpsons / Balenciaga』。パゴダショルダーのドレスを着たマージがドアに突っかかったりするのは自分を見ているようだったし、モード界の有名人もたくさん登場していろいろ笑える。たくさん資料を渡されたんだろうなあ。22年スプリングでザ・シンプソンズのプリントアイテムが発表されていたが、何だか持っておかねばならないような気になってしまった。
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Stella McCartney
#9
#13
#29
「センシュアルな女性らしさ」がテーマ。それを表現するために、またやって来たカットアウト&ボディコンシャス! 春夏とは言え、ここまで皆が肌見せするシーズンがいまだかつてあっただろうか。コロナ明けが現実的になってきたことによる解放感なのか、ボディポジティブの流れなのか。
そして今回はドキュメンタリー映画『素晴らしき、きのこの世界』(2019)で描かれていた菌類の性質にも着想を得ていて、手描きのキノコのプリントに加え、マッシュルームレザー製のバッグ「フレイム マイロ™️」も披露。いま注目のレザーの代替素材のアイテムがどんな価格帯、色・サイズ展開になるのかが気になるところ。
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Maison Margiela
#6
#10
#40
アーティザナルに引き続き、代表作に『エディット・ピアフ~愛の讃歌~』(2007)などがある映画監督オリヴィエ・ダアンがフィルムを手がけ、若者たちが集まって歓喜する様子を描いた。漁師のワードローブも着想源になったようで、釣りをしたり、船に乗ったりするシーンも。フィジカルでの発表に踏み切るブランドが多い中今回もオンラインを選んだのは、クリエイティブディレクターのジョン・ガリアーノが世界観を作り込めるフィルム作りにはまっているのも一因になっていたりして……いつも真っ白な空間でショーを行なっていたが、それとは真逆の方法である。
「タビ」シューズ好きとしては、リサイクルラバーのカラフルなブーツに釘付け。漁師用の長靴をアップサイクルしたブーツも気になる。
text: Itoi Kuriyama photos:imaxtree