創設の地であるフィレンツェへ、グッチのアーカイブを訪ねて。
Fashion 2021.11.01
1921年フィレンツェで創設されたグッチは今年100周年を迎えた。1世紀という時を経てなお、人々に夢と喜び、驚きを与え続けてきた貴重な存在。この記念すべきタイミングに、これまでグッチが作り続けてきた貴重なアーカイブコレクションを保存する拠点として、フィレンツェのカルダイエ通りの宮殿「パラッツォ・セッティマンニ」に収蔵拠点を開設。一般非公開となるこの施設、今回特別に見学することができた。
収蔵拠点となったこの宮殿は、かつて職人たちの工房が多くあったアルノ川左岸のオルトラルノと呼ばれるサント・スピリト地区に位置する。16世紀にメディチ家が移り住んで以降は貴族や裕福な家も増えて、街が洗練され栄えた歴史を持つ。
グッチは1953年よりこの宮殿を所有している。これまで工場やワークショップ スタジオ、ショールームなどさまざまな目的で利用してきたが、今回、クリエイティブディレクターのアレッサンドロ・ミケーレの「私の役割はたくさんのものをあるべき場所へ戻す、つまり本来の家族の元に帰す手助けをすることでした。一見すると過去が保存されているのだけれど、実際には現代との架け橋となるような、そんな場所へ。古い建物は生きているのです。まるでファッションのように」という発言を受けて、アーカイブの収蔵拠点へと変貌させたのだ。
宮殿はミケーレの手によって、これまで過ごしてきた年月それぞれの時代の魅力を引き出し、増築された部分はあえて取り除き、新たに中庭を造ったりした。地元との繋がりを尊重するために、これらの修復作業のすべては地元の職人や専門家たちに委ねられた。空気と光を取り入れた宮殿は、現在と過去の架け橋となる場所へと美しく姿を変えたのだ。その丁寧な修復ぶりはまるで”博物館”や”美術館”のようでもあった。
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宮殿の広さは合計2800㎡に及び、地下1階を含む5つのフロアから構成される。グッチで初めて作られた服から、最新のコレクションにいたるまで、バッグやシューズはもちろんスカーフやジュエリー、レジャーアイテムに乗馬、文房具やラゲージ、キッチン用品まで! 想像を超えるあらゆるアイテムのアーカイブが収められた。
ユニークなのは、それぞれの部屋につけられた名前だ。たとえば1階に位置するヴィンテージハンドバッグの部屋は「Hortus Deliciarum(歓喜の庭)」。ヴィンテージやコンテンポラリージュエリーが展示された部屋は「Le Marché des Merveilles(驚きのマルシェ)」。2階には「The Alchemist's Garden(錬金術師の庭)」や「Aveugle par Amour(盲目の愛)」といった名前の部屋にスカーフやドレスなどテキスタイル作品とシューズを収められている。アレッサンドロ・ミケーレのビジョンが、部屋の名称にまで感じられるのだ。
アイテムの収蔵方法も興味深く、たとえば服は見えそうで見えない半透明のガーメントに入れられていたり、はさみを模した取っ手の付いた収納家具や照明器具、箱ひとつをとっても麻の生地を纏うなど細部にまでこだわりを感じる。美しく、機能的でありながら、アレッサンドロ・ミケーレのアイロニックなアイデアが随所にちりばめれられているのだ。
また、この施設は、グッチで働く者たちが活用できるよう、社員へのユニークな教育機関「グッチ エデュケーション」の本部を兼ねている。オンラインで繋がるトレーニングなどはもちろん、図書館のようなスペースも用意されていて現地で学ぶことも可能だ。アレッサンドロ・ミケーレは、ここを家のように寛げる場所というコンセプトで造っている。
この宮殿は時空や文化を超えた対話を生み出す場所として、新たなグッチの歴史を刻み始めている。
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パラッツォ・セッティマンニ
www.gucci.com/jp/ja/st/stories/inspirations-and-codes/article/gucci-archive-new-home
グッチ ジャパン クライアントサービス
0120-99-2177(フリーダイヤル、受付時間:10時~21時)
photography: Courtesy of Gucci, text: Kiyoe Sakamoto