美しい服の理由。 シャネルのコレクションができるまで。

Fashion 2021.11.10

一着の服によってもたらされる高揚感や喜びは、何ものにも代えがたい。その服に込められた力は、いったいどこから来るのだろう。クリエイションの原点やメゾンのアティチュード、ものづくりの哲学など、私たちが愛してやまないファッションの物語を紐解いてみよう。今回は、シャネルの話。

CHANEL
[ 永遠のエレガンスを紡ぐ ]

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パリの伝説的なクラブ「カステル」を舞台に、モデルが自分たちのためにショーを行う“ガールズナイト”をテーマに新たな物語を紡いだシャネル。透け感のある繊細なシルクムスリンのワンピースのスカート部分にあしらわれたのは、煌めくルサージュのツイード。軽やかさと重量感のある素材のコントラストがユニークだ。軽やかな素足に合わせたボリュームたっぷりのブーツで、瑞々しさとエレガンスを備えたモダンなアリュールを描く。ジャケット¥2,443,100、ドレス¥1,845,800、バングル各¥410,300、ブーツ¥257,400/以上シャネル(シャネル カスタマーケア)

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新たな物語が生まれるアトリエ

トゥーマッチすれすれが大好き。それはとてもシャネルらしい。でもプロポーションや着やすさという点で、本物の服を作りたい。私にはそれしかできないから……と、今回のショーの前日に、シャネルの現アーティスティック ディレクターであるヴィルジニー・ヴィアールが私たちに語った。

昼はスキーリゾートで楽しみ、夜はパリのシックなナイトクラブに女友だちと繰り出す……そんなストーリーから生まれたシャネルの2021/22年秋冬 プレタポルテ コレクション。メゾンのアイコンがちりばめられた多彩なルックを“シャネルらしく”仕上げるために必要不可欠なのが、メゾンダールと呼ばれる専門のアトリエと工房で尽力する職人たちの卓越した技術だ。刺繍にプリーツ加工、さらには靴、金銀細工など、多岐にわたる専門のアトリエと工房で長年、引き継がれてきた伝統的な手法に最先端の技術を融合させることで、唯一無二のシャネルの世界を紡ぎ出す。

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ルサージュのアトリエ:編んだ糸、リボン、ブレードなど表情の違うさまざまな素材を組み合わせてツイードを織り上げる。

今回の撮影で起用した繊細なシルクムスリンを用いたワンピースに同素材のカーディガンを羽織ったルックは、今秋冬のコレクションの中でも、シャネルが誇るメティエダールの素晴らしい仕事が際立つ仕上がり。まずは、ワンピースのスカート部分のツイードを手がけたアトリエ、ルサージュ。1858年に創業したルサージュは装飾的な刺繍を得意とし、メゾンのアイコンであるツイード生地の手織りまで幅広く担当する。

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図面に沿って、トレーシングペーパーに穴を開けていく。

ガブリエル・シャネルがクリエイションに刺繍を取り入れたのは1910年代のこと。彼女が考えるスタイルにおいて重要な役割を担った刺繍は、単なる装飾ではなく、ものづくりの一部だった。ガブリエルの意思を継ぎシャネルのアーティスティック ディレクターに就任したカール・ラガーフェルドによって、ルサージュとのコラボレーションがスタート。ルサージュは1996年に織物アトリエも新設し、特殊な素材を織り込むなどシャネルのクリエイションには欠かせない革新的なツイードの制作も担う。その後、2002年にシャネルのメゾンダールに加わり、ヴィルジニー・ヴィアールと刺激的な関係を築いている。

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カギ状の針を使いビーズを縫い付けるリュネビル刺繍も取り入れる。

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通常、アリババルームと呼ばれる倉庫。ガラスビーズやチューブが色ごとに並べられている。

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そして、繊細なシルクムスリンのワンピースとカーディガンにパールを入れ込んだ刺繍を施したのが、ここで紹介するもうひとつのアトリエであるモンテックス。2011年にシャネルのアトリエに加わったモンテックスはコンテンポラリーな刺繍を得意とし、伝統的な技術に最先端のテクノロジーを取り入れ、斬新で洗練されたデザインを生み出している。

とはいえ、刺繍制作に要する地道で繊細な作業は、いまも昔も変わらない。シャネルのクリエイションスタジオで承認されたサンプルをもとに、製図職人が刺繡のモチーフをパターンに描き、再び、シャネルのスタジオで確認作業を行う。サンプル通り正確に生地に刺繍を施すため、モチーフをトレーシングペーパーに写しステンシルのための穴を開ける。さらにフェルトの粉叩きを用いてパウダーを穴に叩き込むことで、ドットのラインを生地に写していく。

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モンテックスのアトリエ:素材の違う細かいピースを正確に縫い付けていく。

詩的で示唆に富み、極めて独創的なモンテックスの刺繍は、ニードルワークをはじめ、生地の裏側から施すリュネビル刺繍のクロシェ、19世紀に登場した手動のコーネリーミシンなど、さまざまなテクニックを駆使している。その熟練の職人たちの手により進められる幾つもの工程を経て、服に息吹を吹き込んでいくのだ。さて、右ページにてモデルが着用した今回のルックにつきモンテックスが刺繍に費やしたのは、ジャケットで75時間、そしてワンピースで22時間。その膨大な時間と、職人たちの妥協なきものづくりが、シャネルをシャネルたらしめる、大きな理由のひとつとも言える。

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ピンセットを使い、組紐からプラスチックを取り除いていく。

●問い合わせ先:
シャネル カスタマーケア 0120-525-519(フリーダイヤル)

*「フィガロジャポン」2021年10月号より抜粋

photography: Mitsuo Okamoto styling: Tamao Iida hair: Yusuke Morioka (Eight Peace)  makeup: Nobuko Maekawa (Perle Management) text: Tomoko Kawakami

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