さまざまなジャンルが衝突し合う、22/23AWバーバリー。

Fashion 2022.06.15

春夏シーンズも落ち着きを見せたこの頃。次のシーズンに向けて、最新コレクションを振り返ろう。


3月11日火曜、リカルド・ティッシがバーバリー2022/23年秋冬コレクションをロンドンで発表。まさに「体験」と呼ぶにふさわしいショーが繰り広げられた。

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バーバリーのショーに出演するジジ・ハディッド。(ロンドン、2022年3月11日)

太陽が雲間に見え隠れするロンドン、最後は雨が勝利。ソー・ブリティッシュなにわか雨が降る午後、傘を差したゲストたちが続々と到着する。ナオミ・キャンベル、ケイト・モス、カーラ・ブルーニ。アイコニックなトップモデルたちは、バーバリーのチーフ・クリエイティブ・オフィサーであるリカルド・ティッシの長年の友人でもある。彼にとって“ライブ”でショーを行うのは2年ぶりだ。その今回のバーバリーのコレクション発表は、ショーというよりむしろ「体験」と呼びたくなるようなイベントだった。会場はウェストミンスターのセントラル・ホール。劇場のような趣の巨大なチャペルはすっぽりと暗闇に覆われていた。自分がどこにいるのかもわからない。招待客たちは自分のスマートフォンのライトで周囲を照らしながら進むしかない。

椅子もなければ、フロントロウもなし。あえて混沌を生み出すことを狙った今回のショーを招待客は立ったまま鑑賞することになった。手探りで進むうちに、ホールの中央に丸いテーブルが並んでいるのに気づく。テーブルは完璧にセッティングされている(白いナプキン、銀のカトラリー、バーバリーのロゴが刻まれた皿。すべてがっちり固定されている)。用意の整ったテーブルでランチが供されたわけではないようだ。それもそのはず、これはいわばモデルたちのための台座、つまり今回のショーのランウェイなのだ。薄暗がりのなか、不安定な足取りでテーブルの上に登るモデルもいた。

 

確立したシステムを揺さぶる

メッセージは明快。リカルド・ティッシの狙いは、「老舗」と謳われるロイヤルファミリー御用達メゾンの確立したシステムやコードを揺さぶること。2018年3月にクリストファー・ベイリーの跡を継いでメゾンのチーフ・クリエイティブ・オフィサーに就任したイタリア人クリエイターに託された任務とは、バーバリーを“トレンディ”という意味でのリュクス、モダニティ、モードなブランドに押し上げること。ジバンシィで輝かしい業績を上げた47歳のデザイナーは、このミッションを遂行するのにこれ以上ない理想的な人物だ。

今回のコレクションでは、都市の若者たちのファッションから得たインスピレーションと贅沢な技巧を融合し、型破りな高級ストリートウエア(ロングスカートで登場したメンズモデルもいる)に昇華した。ステラ・マックスウェルやハディッド姉妹をはじめとする有名トップモデルが纏うイブニングドレスは、プレタポルテというよりもオートクチュールのような仕上がり。鮮烈、洗練、豪奢という言葉が相応しいコレクションとなった。メゾンを象徴するタータンチェックとトレンチコートも解体されているものの、頻繁に登場するモチーフであることに変わりはない。バルコニーからはオーケストラと100人のコーラスの奏でる音楽が響き、アヴァンギャルドなショーと対照的な、盛儀ミサのような厳粛な雰囲気が会場に漂った。

金曜夜にはショーの招待客のなかから厳選された顔ぶれが再びメイフェアのこじんまりしたクラブに集合した。派手なパーティーはなく、肩の凝らない「クール」なディナーが用意された会場は、ヒョウ柄に身を包んだケイト・モスやボクサーのリチャード・リアクポーレ、イタリア人歌手ムマード、ドラマ「ユーフォリア」で主役を演じるジェイコブ・エロルディを筆頭に、各界を代表するおしゃれなセレブたちで賑わった。さまざまなジャンルを衝突させるのはティッシの得意技だが、今後はバーバリーのお家芸となりそうだ。

text: Richard Gianorio (madame.lefigaro.fr)

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