『エルメスの世界』最新号を連れて「ルモンドキオスク」が丸の内にやって来る。

Fashion 2022.09.07

9月8日から11日まで、東京、丸の内の丸ビル前に、「ルモンドキオスク」が出現する。フランス語で街角のニューススタンドを意味するこのキオスクは、機関誌『エルメスの世界』とともに、エルメスの年間テーマ「もっと軽やかに!」を楽しく演出するもの。このキオスクにお目見する『エルメスの世界』最新号について、編集長のオリヴィエ・ウィッカーに話を聞いた。

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丸の内に4日間出現するルモンドキオスク。エルメス色のキオスクは、さながらパリの街角にいるような佇まい。

『エルメスの世界(Le Monde d’Hermès)』を一度でも手にしたことのある人なら、そのユニークな存在感を覚えているに違いない。世界10か国語、60万部が印刷されるエルメスの機関誌は、年2回発行。カタログとは一線を画し、その文学的なテキスト、美しいビジュアルと秀逸なグラフィックにはファンが多い。創刊は1973年、ブランドが発行するマガジンの先駆者である。
「創刊の理由は、極めてシンプルだったと思います。言葉や文学を愛した5代目会長のジャン・ルイ・デュマが、戦略も計算もない、エルメスの価値観を表現するマガジンを望んだ。純粋な楽しみから生まれました」というのは、2015年以来、同誌の編集長を務める、オリヴィエ・ウィッカー。「創刊当初の自発性、思い切りの良さ、自由な考えは今も大事にしています。ユーモアがあり、シリアスにならず、ちょっとシニカルな面も持つ、そんなエスプリです」。

エルメスには、アーティスティック・ディレクターのピエール=アレクシイ・デュマが毎年定める年間テーマがあり、各メチエ(製造部門)のディレクターは、このテーマをインスピレーション源にコレクションをクリエイトする。
「3年前に『エルメスの世界』の位置づけを少し変え、年間テーマに捧げることにしました。テーマを掘り下げ、あらゆる角度から観察し、正確で研ぎ澄まされた表現で読者に説明します」。
そのために、年間テーマについて独特の視点をもたらすゲスト編集長とアーティスティックディレクターを迎え、テーマをより良く表現するためのフォーマットを探す。テーマが毎年変わるように、『エルメスの世界』も、毎年変化することになった。
「変わらないのは判型とロゴだけ。毎年、机の上にカードを並べ直して、新しい『エルメスの世界』を作る。毎年リニューアルしているようなものです」

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「ルモンドキオスク」で配布される2022年秋冬号のタイトルは「軽やかさについての覚書VOL2」。「前号よりももっと思い切って、もっとクレイジーで、面白く、驚きに満ちています」とオリヴィエ・ウィッカー。©Camille Summers-Valli

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最新号の目次。コンテンツが重さ順に並んでいるのがわかる。「テーマの順番はアイデアの重さ順ですが、重さと言っても非常に主観的なもの。科学的根拠は全くありません」©Hervé Le Tellier

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「隠し場所」。ページ下には、恐竜の卵、カササギの卵からエビの卵17個までの重さが記され、合計すると、61万5550 .69キログラムに。科学的根拠はないというけれど、なんとなく頷けてしまう。©Jean-Marie Binet

今年のテーマは「もっと軽やかに!」。軽やかさについて語れるチームとして、ウィッカーが選んだゲスト編集長は、独特のユーモアを作風とするアーティストで作家のクレマンティーヌ・メロワ。アーティスティック・ディレクターには若きデザインチーム、ステュディオ・メイビーを迎え、軽やかさについての覚書VOL1とVOL2が誕生した。
「テーマを最もよく表現できるフォーマットを探して見つけたのが、軽やかさについての真面目な辞書ではなく、“覚書”という形でした」
ポストイット、クリップ留めされたメモ、ハサミや鉛筆などが添えられて、まるで作りかけのような、あるいは読者の想像を誘うようなレイアウトが楽しい。誌上に登場するオブジェは、テーマをよりよく伝え、表現していることがセレクトポイントだ。たとえば、帽子の奥に隠れていたタグからは、イラストを実際のシーンを再現するアイデアが生まれた。

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帽子の裏に潜むタグを発見。ここから、実際のモデルで同じシーンを撮影するアイデアが誕生した。「これこそ、エルメスのユーモアとエレガンス。エスプリの軽やかさを表現しています」©Camille Summers-Valli

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雪だるまのアイスクリーム?「食いしん坊」は6.52キログラム。©Jean-Marie Binet

「時計や靴やバッグのようなコレクションのオブジェと同様、エディションにおけるエルメスらしいオブジェを作ろうと考えています。大胆でエキセントリックでエッジーな本作り。たとえ60万部印刷していても、気持ちは1冊1冊がユニークピースのような気持ちです」
「エルメスは言葉のメゾン」とウィッカーはいい、「紙媒体の力は、ビジュアル、言葉、グラフィックの力。それを生かせば大きなチャンスがある」と語る。それゆえに、言葉と文章についてのこだわりは大きい。
「文学的なレベルの高さと、年間テーマについて語る力。執筆者選びは大事です。今年は、2020年のゴンクール賞作家のエルヴェ・ル・テリエが素晴らしい文章を寄せてくれた。古代ギリシャの哲学者がスキーをしながら軽やかさの定義を語り合うものです!」

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1行ずつ切り取って組み合わせると詩が作れるキット。文章は、スキーをする哲学者の文章と同じく、エルヴェ・ル・テリエによる。©Hervé Le Tellier

年間テーマに捧げられた『エルメスの世界』は、いま、紙媒体としての機関誌のほかにもいくつかの形を持っている。どれもがそれぞれの特性を活かしながら、テーマを表現し、エルメスの価値観を伝える。たとえば3年前に始まったポッドキャストは、紙媒体とは違うコンテンツでテーマを表現している。今年は、オブジェが語る物語。耳元に囁きかける親密なストーリーテリングは、ポッドキャストならではの力を持っている。

一方、今回東京にやって来る「ルモンドキオスク」は、機関誌の最新号をめぐる小さなお祭りのようなもの。そこではキオスクの主人が『エルメスの世界』について語り、歌い、訪れる人は、しばし足を止めて夢を見、驚きと喜びのひと時を分かち合う。昨年秋にプラハで誕生したこの試みは、軽やかでエスプリに満ちたイベントとして、その後もベルギーやシンガポール、バルセロナでも行われて成功を収めている。
「『エルメスの世界』は、もともと、大らかなプレゼント。「ルモンドキオスク」は、道ゆく人へのプレゼントなのです」。

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今年6月にはロッテルダムで開催され、2022年春夏号が配布された。

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バルセロナでは、本のお祭り、サンジョルディのタイミングで開催。似顔絵描きや朗読が行われた。東京ではどんなアニメーションが行われるか、楽しみ。©javidardo

「ルモンドキオスク」
会期:2022年9月8日(木)〜9月11日(日)
会場:東京都千代田区丸の内2-4-1 丸ビル
営)11時〜17時
入場無料
www.hermes.com

https://www.hermes.com/jp/ja/story/305435-le-monde-d-hermes-kiosk/

text:Masae Takata(Paris Office)

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