水川あさみ & 窪田正孝、めぐりあう時間。

Fashion 2022.09.20

憧れの夫婦── ふたりが醸し出す空気にはそんな言葉が合う。彼女が監督し、彼が出演する短編映画をテーマに、ふたりにインタビュー。プラダを纏ったモードストーリーとともに届けます。

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水川:フラッフィな白のフェイクファーコート、ラインストーンが煌めく黒いメッシュドレス(ともに参考商品)、窪田:スリムなシルエットの白いシャツ¥100,100、グレーのタートルニット¥231,000(ともに予定価格)/以上プラダ(プラダ クライアントサービス)

リラクシングだけれど互いを尊敬し合う、理想的なふたりの関係。

女優・水川あさみが、短編映画制作プロジェクト「MIRRORLIAR FILMS」における「おとこのことを」で監督デビューを果たした。主演は俳優の窪田正孝。夫でもある。この作品はプライベートでパートナーとなってから初めての“共作”とも言える。普段から影響を受け合っているという新しいタイプの“オシドリ夫婦”のふたりに、そのバックストーリーを語ってもらった。

――水川さんは、どういうきっかけでカメラの後ろ側に回ってみようと思ったのですか?

水川 友人の山田孝之から「『MIRRORLIAR FILMS』という企画があるんだけど、監督やらない?」って唐突に電話がかかってきたところから始まったんです。それまで、まさか自分が監督するなんて思ってもみませんでした。でも、このプロジェクトが、これから映画を撮ろうとする人たちをサポートしたり、映画制作に携わるきっかけを作るような素敵な取り組みだったので、私も飛び込んでみようかなと思ったんです。

窪田 独立して自分の事務所を設立したり、私生活でも彼女が新しいことにチャレンジしていく姿を見ていたので、この企画を聞いた時は、また、ひとつ壁を壊して進んでいくんだな、と思って賛成しました。そういう姿勢を常に尊敬しています。

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日常の機微、人の心の小さな変化を辿る。

――どんなふうに制作を進めていったのですか?

水川 プロデューサーやスタッフの方々や脚本の勉強をしている親友などに助けてもらいながら進めていきました。プロジェクト全体の統一したテーマが「変化」だったのですが、私は日常の機微というか、小さいことだけれど、その捉え方が人によって違う。そういった微妙な“変化”を描きたいと思いました。

――窪田さんを主演に起用することは最初から決めていた

水川 それはまったくなかったんです。役者を当て書きする監督もいると思いますが、私はそんな余裕もなく、脚本が出来上がってから、この役なら彼に演じてもらうのがいいんじゃないか、とやっと出演者について考えることができた。初めての演出に不安もあったので、日々一緒に過ごしている彼なら、私のやりたいことを汲み取ってくれるんじゃないかなと思ったことも、お願いした理由のひとつです。

窪田 最初は、自分が出演していいのか、少し迷いました。

水川 日本では夫婦でひとつの作品に取り組むことってあんまりないよね、という話を、ちょうどしていた時期だったんです。海外だと監督と俳優とか、プライベートなパートナーが一緒におもしろい作品を作っている例はたくさんありますが、日本ではなかなか難しいのかな、と思うところも、彼に出演してもらったことが挑戦のひとつになりましたね。

窪田 ただ、それも僕たちの勝手な思い込みかな、と。脚本を読んでみたら、ほとんどセリフはない。この男をどう落とし込もうか、シンプルにみんなでテーマに向かって掘り下げていくのだろう、という印象を受けました。それって俳優にとっては難しいけれど、だからやりがいがあるとも言える。僕たちの関係性なら、もしかすると情報がないところから、隙間を埋めるように作り上げていけるかもしれないという可能性を感じました。

――気心知れた間柄ということは、実際の撮影現場でいい影響を与えましたか

窪田 できることは何でもサポートしたかったし、これまで女優としてやってきた彼女が、撮る側に回った時に自然と出てくるものを尊重できたらと思っていました。気心が知れているからこそ、リラックスした状態で撮影もできました。モニター越しに見られていることに対する、変な照れくささもまったくなかったです。

水川 ロケハンに一緒に行ったりもしたり、現場ではふすま外すの手伝ってくれたりもしてたね(笑)

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水川:白い襟と白いカフが潔い黒いレースのロングスリーブドレス(参考商品)、窪田:ウールのカーディガン¥181,500、タンクトップ¥117,700(ともに予定価格)/ 以上プラダ(プラダ クライアントサービス)

一緒にやって気付くことはたくさん! 着る楽しみも。

窪田 おもしろいな、と思ったのは、監督と演者の疲れ方はまったく違うみたいで。現場が終わって同じ家に帰るけれど、彼女は明日の撮影の打ち合わせをしたり、ほかにもやることがあって遅れて帰ってきて。気を張ってのぞんだ初日で疲れているはずなのに、監督と役者の体感の違いに驚いた、とうれしそうに話してくれました。

水川 監督と役者では思考も身体も使う部分が異なるということがわかりました。この発見はおもしろかった。あらためて、役者の大変さもわかりましたし、そういう意味でも発見だらけのプロジェクトだった。役者は地盤ができてからの参加になるので、映画制作の全体を把握できた経験はとても大きなものでしたね。

――今日はファッション撮影でもおふたりでコラボレーションしていただいたわけですが、いかがでしたか

水川 楽しかったです。どの角度が素敵に見えるかとか、探りながらみんなで作り上げていく。こういう共同作業はどの現場においても素晴らしいですね。

窪田 芝居の現場とは違う空気感が新鮮で濃縮されていて、楽しさも難しさも、やりがいも感じられた時間でした。ファッションは、以前はあまり興味がなかったのですが、彼女の影響を受けて着る楽しさも覚え始めて。ヴィンテージショップにも一緒に行ったりね(笑)

――今後もおふたりのコラボレーションが見られるのですね!

水川 私たちは、仲間みたいな意識もあるから。共演だけではなく一緒に何か、たとえば興味を持ったこと、新しいことには壁を作ることなくチャレンジしていきたいです。

窪田 今回、夫婦の共作に対するネガティブな概念みたいなものは壊すことができたので、さらに枠を広げていきたいという気持ちはあります。ホアキン・フェニックスが『ジョーカー』でアカデミー賞主演男優賞を取った後、素敵なドレスを着ているのにコンバースを履いたパートナーのルーニー・マーラと一緒に道端の階段でヴィーガンバーガーを食べていた写真を見て、本当にカッコよくておしゃれだなあと感じました。映画やファッション、環境運動など、同じ志向や価値観を分かち合えている関係性に憧れます。

水川 宮沢りえさんと森田剛さんのご夫婦も、一緒にいいものを作りたいという情熱にあふれている、エネルギッシュでとても素敵なカップル。道標となるような先輩がいてくださるのは刺激を受けますし、心強いですね。

Asami Mizukawa
1983年生まれ、大阪府出身。2022年はCX「ミステリと言う勿れ」、映画『太陽-TAIYO-』などに出演。Amazon Originalドラマ「モダンラブ・東京〜さまざまな愛の形〜」が10月21日より世界同時配信。映画『霧の淵』の公開も控えている。プラダのアンバサダーを務める。
Masataka Kubota
1988年生まれ、神奈川県出身。2006年に俳優デビュー。22年は『劇場版ラジエーションハウス』『マイ・ブロークン・マリコ』『ある男』(ヴェネツィア国際映画祭オリゾンティ部門選出)などが公開。23年は、『湯道』や、本誌に連載中の齊藤工監督作『スイート・マイホーム』が公開予定。
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『MIRRORLIAR FILMS season4』
「おとこのことを」

“変化”をテーマに36本の短編を4シーズンにわたりオムニバス形式で公開するプロジェクト、ミラーライアーフィルムズ。シーズン4内の9本中6番目の作品「おとこのことを」は、引きこもりの男の日常が変化する様を繊細な視点で捉えた作品。写真上奥は窪田出演のシーン。上は「水川組」と書かれたジャンパーを着た水川監督。
●監督/水川あさみ
●出演/窪田正孝
●2022年、日本映画
●配給/イオンエンターテイメント、ティ・ジョイ
●全国にて順次公開中
©1982-2021 ANDPICTURES, INC. & FOGG, INC.

 

●問い合わせ先:
プラダ クライアントサービス
0120-45-1913(フリーダイヤル)

 

photography: Yuki Kumagai styling: Miho Okabe hair & makeup: Tamae Okano interview & text: Atsuko Tatsuta editing: Ai Kikuchi Edwards

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