アイコンバッグに宿る、ものづくりのものがたり。 歴史あるロゴが輝く、サンローランの「カサンドラ」。
Fashion 2023.03.03
1936年、フランス領アルジェリアの比較的裕福な家庭に生まれたサンローランの創業者、イヴ・サンローラン。幼いころから美しいものへの関心が高く、17歳でフランスに移住してパリの名門ファッションデザイン学校に入学。在学中にデザインコンクールのドレス部門で最優秀賞に輝いたことがきっかけで、1954年からクリスチャン ディオールに参画。サンローランの才能に感銘を受けたディオールは、彼を後継者として育成し始める。
1957年にディオールが急逝したのち、若干21歳でチーフデザイナーに就任。偉大なクチュリエの後継者という重圧を受けながら、初コレクションは大成功を収める。その後、アルジェリア戦争への徴兵を経てディオールを去り、1961年に自身のオートクチュールメゾン、イヴ・サンローランを設立。5年後にプレタポルテラインのイヴ・サンローラン リヴ・ゴーシュをスタートした。
アートとファッションを融合させたモンドリアンスタイルやタキシードを女性用に仕立てたスモーキングジャケット、パンツをスカートに代わるデイリーな女性用ボトムとして提案したパンタロン、それまでご法度だったシースルーなど、新時代の女性に向けたエレガンスを打ち出す革新的なスタイルを次々に発表。世は彼のクリエイションを“ニューモード”、彼自身を“モードの帝王”と称した。現在では当たり前とされているファッションの表現のなかに、サンローランが初めて打ち出したものは少なくない。紛うことなく、20世紀を代表するファッションデザイナーのひとりだといえる。
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メゾンの伝統に敬意を表したアイコンバッグ「カサンドラ」。
バッグ「カサンドラ(ミディアム/グレイン・ド・プードルエンボスレザー)」(H20×W24.5×D11.5cm)¥396,000/サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ(サンローラン クライアントサービス)
今回紹介するのは、現在クリエイティブディレクターを務めるアンソニー・ヴァカレロがうみだしたアイコンバッグ「カサンドラ」。2019年フォールコレクションでデビューしたバッグで、エレガントな佇まいと2種類のレザーに込められたストーリー、そして「YSL」のロゴをいかしたクロージャーなど、ムッシュ イヴ・サンローランへの敬意が込められたバッグだ。
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Variation
バッグ「カサンドラ(ミディアム/グレイン・ド・プードルエンボスレザー)」(H20×W24.5×D11.5cm)¥396,000/サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ(サンローラン クライアントサービス)
もっとも特徴的なポイントは「YSL」のロゴをあしらったクロージャー。「YSL」のロゴは、1961年にムッシュ イヴ・サンローランが自身のブランドを立ち上げるにあたってグラフィックデザインの巨匠、アドルフ・ムーロン・カッサンドルに依頼したもの。やや長体のエレガントかつミニマルなデザインは、ファッションの既成概念を打ち破ろうとするムッシュの感性にぴったりとマッチ。ブランドを象徴するロゴとして使用されるようになった。
「カサンドラ」ではこの歴史あるロゴをバッグのクロージャーとして採用。アルファベットをずらして開閉する“シフトロック”は、デザインと機能性を備えた秀逸なパーツだ。サイズはミディアムとミニの2種類。先に紹介したベーシックなブラックのほか、洗練されたホワイトも定番人気カラー。
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バッグ「カサンドラ(ミディアム/グレイン・ド・プードルエンボスレザー)」(H20×W24.5×D11.5cm)¥396,000/サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ(サンローラン クライアントサービス)
デビュー時から展開している2種類のレザーに込められたストーリーにも注目したい。ここまでに紹介した3点のバッグに使用しているのは、グレイン・ド・プードルエンボスレザー。上質なカーフレザーにエンボス加工を施し、1966年に発表された名作、スモーキングジャケットのテクスチャーを再現している。
19世紀に喫煙が一般化した際、紳士たちはディナーの後に書斎や喫煙室でスモーキングジャケットを羽織って煙草を吸っていたという。ザラザラした質感のジャケットは、灰をすぐに払うことができたからだとか。「カサンドラ」ではスモーキングジャケットの質感を模すことによって、風合いだけでなく耐久性や耐摩擦性も高めている。
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バッグ「カサンドラ(ミニ/クロム&メタルフリータンニンレザー)」(H16×W20×D7.5cm)¥396,000/サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ(サンローラン クライアントサービス)
もう1種類が、なめしの際にクロムや化学溶剤の代わりに植物性タンニンを使用したカーフレザー。環境に配慮した製法であると同時に、タンニンなめし特有の経年変化が楽しめる。使うほどに色が変わりツヤが増し、傷やスレなどがつき、自分だけの“味”がうまれるレザー。持ち物に宿るパーソナルなストーリーや、他人のものさしに頼らない自分にとっての価値を大切にするフランス人の美意識を体現した素材ともいえる。
バッグ「カサンドラ(ミニ/クロコダイルエンボスシャイニーレザー)」(H16×W20×D7.5cm)¥372,900/サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ(サンローラン クライアントサービス)
シーズンを重ねるに連れて、素材や色、ディテール違いなどバリエーションが増えてきた「カサンドラ」。こちらはカーフレザーにクロコダイルの型押しをプラスしたシャイニーなミニバッグ。上品な光沢は華やかなシーンにもぴったり。
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photography: BG002/Bauer-Griffin/Getty Images
クロコダイルの型押しタイプをヘイリー・ビーバーも愛用。マニッシュなコートとバッグはリュクスに、インに着たカットソーやトラックパンツ風のボトム、スニーカーはカジュアルにと、絶妙なテイストミックス! かっちりしたバッグがカジュアルになりがちなコーディネートを引き締めてくれる。
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New Item
バッグ「カサンドラ(ミニ/ラフィア+カーフレザー)」(H16×W20×D7.5cm)¥324,500/サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ(サンローラン クライアントサービス)
今季はラフィアとカーフレザーを組み合わせた新作が登場。軽やかなラフィアをカーフレザーのトリミングやハンドル&ストラップとゴールドの「YSL」ロゴでひときわリュクスに仕上げた、サンローランならではのデザイン。タウンユースはもちろん、ぜひバカンスにも連れていきたい。
サンローラン クライアントサービス
0120-95-2746(フリーダイヤル)
editing: Naoko Monzen