ウェディングドレス選びで失敗した花嫁からの助言とは?
Fashion 2023.06.17
選択の誤り、家族のプレッシャー、サイズ間違い……人生で最も美しいはずの装いが、時に、苦い思い出になってしまうこともある。経験者たちの声をフランスのマダム・フィガロがリポート。
判断ミスか、自己主張が足りなかったのか...ウェディングドレスの選択を後悔する花嫁たち。photography: Shutterstock
「結婚式の写真を見ると、胸が痛む」。34歳でコミュニティ・マネージャーとして働くエルザにとって、ウェディングドレスは、「人生最良の日」の幸せな思い出に結びつくはずだった。けれど、完璧なドレス探しは、予想通りにはいかなかった。式から7年経ったいまも、当日の姿を見るたびに、苦い思いがよみがえる。
フランスでは毎年23万人近い女性がドレスを纏って結婚式を迎える。ドレスは、自分自身が気に入るだけでなく、未来の夫や招待客の期待にも沿うのが理想。
さらに、象徴的な役割もある。「結婚のような、家系や家族同士の結びつきといった社会的な要素を持つ儀式では、服装はとりわけ特殊な役割を持っています」と語るのは、1996年にガリエラ宮で行われたテーマ展のカタログ「結婚」を手がけたアンヌ・ザゾ。このセレモニーがソーシャルネットワーク上で盛んに取り上げられることによって、社会的なプレッシャーがますます高まっている。その上、映画や「ブライズメイズ」(2011年)、「セックス&ザ・シティ」(2000年)といったドラマ、あるいは「私の人生のドレス」(フランスM6局)のような番組も、完璧なドレス探しの幻想に一役かっている。
たった一度しか着ることのない、けれど最低価格が500ユーロを下回ることが滅多にないドレスには、予算の問題もある。そんなわけで、ウェディングドレス選びはなかなか危険な賭けでもあり、時に、これらの問題を解決できずに後悔を残す花嫁もいる。そんな失望を体験した花嫁たちが、失敗談を語ってくれた。
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私に何の相談もなく。
この話は「もう終わったこと」と言うスージーだが、傷はまだ癒えていない。英国のオックスフォードで1985年5月25日に行った結婚式が素晴らしいものになるように、新郎新婦双方の両親はすべてを援助すると約束してくれた。つまり、全費用を負担してくれたのだ。
当時24歳だった彼女はまだ学生で、母親がドレスを作ってくれることに賛成。エンパイアシルエットのドレスを思い描いていた。「でも何カ月経っても、何も進まなくて……」と言う彼女は、式の数週間前になって、母を急かすことに。事態は悪化した。「母は、父と姉妹を連れてロンドンに結婚式の買い物に行き、ドレス用の布地とヴェールを購入してきたのです。私なしで、私に何の相談もなく」。結果は……布地は全然彼女の趣味ではなかった。「モチーフがはめ込まれたサテン地で、ちっとも綺麗じゃなかった」と言うスージーだが、当時はその失望を伝える勇気がなかった。「ひどいわ!と言うべきでした」と、いまも彼女は後悔している。両親が寛大に援助してくれたことにおじけづいて、騒ぎを起こす勇気がなかったのだ。
一方、花婿の方も同じ立場におかれ、家族が選んだネクタイに文句を言えなかった。以来、この話題はタブー。とはいえ、ふたりの結婚に影を落とすことはなかった。もうすぐ結婚38周年を迎えるスージーは、娘のウェディングドレス探しに付き添う番になった時、同じ過ちを犯すまいと固く誓ったという。「娘がとうとう“ワオ!”と言うまで、一体何軒の店を回ったことか」と彼女は誇らしげに語る。
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みんなに注目されたかった。
「それこそてんこ盛りでした」とサラは自分の盛大なウェディングドレスについて冗談めかす。彼女は2006年、学業終了後すぐに結婚することにした。挙式は7月9日、サンジェルマン=アン=レにて。22歳、誰よりも早い結婚だった。お手本もなかったから、当時のトレンドに従ってドレス選びに着手。「モード好きだったから、それが仇になった」と言うサラ。たくさんのドレスを試して選んだのは、ボーン入りのコルセットドレス。ロウウエストで、クリノリンスカートの上に長いチュール製のハンカチーフトレーンがのっていた。「ビュスチェの上には羽根とラインストーンを加えました……とにかくいろいろつけた。そしてもちろん、頭にはティアラ。みんなに注目されたかったんです」
賭けは大成功。ドレスは友人と花婿から喝采を浴びた。「どうしてもドレスがはみ出て、車に乗り込むのに30分はかかったと思う」と振り返るが、サラ自身も自分を「とてもきれい」だと感じたし、素晴らしいドレスゆえに、そんな着心地の悪さも不便さも気にならなかった。
だが、挙式がすんで時間が経つと、当時の時代の好みにぴったりだったものは急速に色あせ、「やりすぎ」なものに感じられた。結局サラは、式の準備中、ずっと口を酸っぱくしてもっとシンプルなドレスにするようにとすすめた母が正しかった、と感じている。「結婚したのが30歳だったら、もっといろいろ考えたと思う。それにいまなら、SNSやピンタレストがインスピレーションをくれるでしょう!」
17年経って、いまはモード界で働く彼女は、当時の自分の選択をユーモラスに振り返る。とはいえ、これから結婚する花嫁には、時を超えて流行り廃りのないものをすすめる。「私だって、笑ってはいるけれど、ウェディングドレスの名に値するドレスを買うためだったら、もう一回結婚したいくらいよ」
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サイズの問題
30歳だったマチルドは、ウェディングドレス選びに奔走するなんて避けたいと思っていた。ことに、パーティの夜に着るためのドレスのために、それは不要だと。
ロンドンに拠点を置く若き起業家だった彼女は、2021年にロンドンで行った結婚式のパーティのために、全部で6着のドレスを着る予定にしていた。パーティの夜の服は、いくつもの基準をクリアする必要があった。丈は短く、シックで色は白、それらしいけれど当たり前すぎず、そして値段もリーズナブルなこと。彼女が選んだのは、NYブランドのケイト。スクエア・デコルテでベビードール・シルエットのドレスはすべての条件をクリアしていた。ブランドのサイトで注文し、式の6カ月前に到着。「サイズについては心配していませんでした」とマチルドは言う。だから、届いたドレスを急いで試着することもなかった。式の2週間前になってようやくドレスを着てみることにした彼女は、ファスナーがバストの位置より上に上がらないことに気がついた。「どんな仕立て屋に持ち込んでも、布を付け足すのは無理だと言われました。10日間探してやっと直してくれる人を見つけた」
大げさな挙式は「絶対にいいや」といっていたマチルドは、この落とし穴は予想しなかったとほぞを噛む。ぎりぎりになって何とかお直ししたドレスが戻ってきたものの、その結果は期待したほどではなかった。「胸がギュッと締め付けられた状態でした」という彼女は、皮肉も込めて振り返る。「その上、私には本来ルールがあったんです。デコルテが大きく開いている場合、スカート丈は短すぎないこと。ですが、このイベントではルール違反になってしまった」。自分も軽率だったと認めるマチルドだが、それでも、サイトの採寸ガイドには苦言を呈する。ここから得た教訓は「必ず店で試着すること、少なくとも、サイト販売の採寸には疑問を持つこと!」
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ベビーブーム
結婚式もドレスも、キャロリーヌは重視していなかった。それもそのはず、彼女の計画は思惑通りには進まなかったからだ。2012年、キャリアを開始する直前の25歳の時に、彼女はパートナーと子作りを決意。けれど何カ月経っても妊娠しなかったため、2013年4月に結婚式を挙げることにした。「妊娠にトライするのは一旦やめよう、じゃないと結婚式の日は妊娠中、ということになるわ、と思った途端に妊娠したんです」とキャロリーヌはおもしろそうに語る。
挙式は計画通りに行うことにした。というのも、挙式の3カ月前に出産が予定されていたから。妊娠7カ月の時、彼女は、当然、妹にドレスの試着を任せ、ちょっといい加減な気持ちでドレスを選んでしまった。「ドレスをプレゼントしてくれるという母が、“これが好きだわ”と言い、試着した妹を見て、私も“そうね、これで行きましょう。よく似合っているわ”ということになりました」
出産と挙式当日の間に、キャロリーヌはとうとう、最終リタッチのためにドレスを試着。その時に気づいたのは、オーガンザ製で“ちょっとメレンゲみたいな”スカートのついたドレスが彼女にはちっとも似合わない、ということだった。でも後戻りするには遅すぎる。「ホルモンバランスがのせいで、自分が自分ではないような気持ちになっているんだ」と考えることにした。自分の姿に愕然としたのは、結婚式のアルバムが届いた時。細身の妹より10センチ背が低いし、胸が張っている……ドレスを着た自分の姿は、想像とは程遠かった。「夫でさえ“最高とは言えないね”って(笑)」とキャロリーヌ。後悔はないけれど、ドレスよりもベビーの方に気持ちが向いていたと認めて笑う。彼女の母だけが、自分の提案を擁護し続け、「とてもきれい」だと主張するのをやめない。
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モノプリのドレス
280人の招待客を数え、挙式の費用をすべて自分たちで賄うことにしたエルザとフィアンセにとって、予算はすでに目一杯。2016年8月にロワール=アトランティック県で挙げる結婚式で、ドレスは予算の最優先順位に入っていなかった。そこでエルザはリーズナブルなドレス探しに着手。この年、スーパーマーケットチェーンのモノプリが、ウェディングドレスブランドのローラ・フォルクとコラボ、リーズナブルなコレクションを発表した。「ドレスを見て、これこそ私のスタイル、と思ったんです。しかも値段も予算内。これこそ私に必要なドレスだ、と」
最初の困難は、1月に販売になったコレクションが大人気だったこと。彼女は全国で家族と立会人を総動員し、ドレスのゲットを試みた。「何とかことは進んだけれど」、苦難は終わっていなかった。
ドレスは見つかったが、未来の花嫁はガッカリ。サイズがきちきちだった。「まだ時間がある、何キロか落とせばいい、と考えました」と彼女は言う。とはいえ、式の日が近づき、彼女は現実に目を開く。このドレスに私は入らない。ゆえに、リタッチしてサイズを大きくしなければならない。そのためにスタイルが変わるとしても。
「いずれにしろ、誰も何も気づきませんでした。ローラ・フォルクは有名なクリエイターだし、私は彼女のクリエイションを着ることができてうれしかった。でも私自身は、ドレスがつぎはぎされていることを知っていたんです」とエルザは振り返る。心の底では、ドレスのシンプルな魅力よりも、失望が優ってしまっていた。「いま考えると、私が悔やんだのは、立会人を頼んだ友人たちといい時間を過ごせなかったことだと思います。ドレスを試着しに行ったり、“これ、このドレスがいいわ!”という感動を体験できなかったこと」と嘆く。そしてこう結んだ。「私は、ドレスに2000ユーロ支出することはできなかったと思います。でも結婚する女性たちには、思い出のためには、予算を犠牲にしてはいけない、とアドバイスしたいです」
※名前は変えています
text: Mitia Bernetel (madame.lefigaro.fr)