ディオール、スコットランドブランドとのコラボレーション。
Fashion 2024.06.16
去る6月3日、スコットランド・エディンバラにあるドラモンド城の庭園にて、ディオール 2025年クルーズ コレクション ショーが開催された。
©️Sam Copeland ©️Drummond Castle
クリエイティブ ディレクターのマリア・グラツィア・キウリにとってクルーズ コレクションは、世界中に遺されたクリスチャン・ディオールの足跡を辿る機会であるとともに、世界の各地域に根ざしたものづくりの伝統に向き合うというブランドビジョンのとおりに、創作と文化の両方に関するプロジェクトととらえ、着想している。今回ショーが開催されたスコットランドは、1955年にムッシュ ディオールが作品を発表した国。このことが2025年クルーズ コレクションのストーリーの枠組みを構成し、記憶やインスピレーション、連想が融合し、新たなシルエットや刺繍が生み出される土地となった。
ハリスツイードのファブリックを用い、アトリエで仕立てられたジャケット。©️Sophie Carre
スコットランドを代表する伝統的なコスチューム、ファブリックや意匠であるツイード、タータンチェック、キルト、ニットウエアなどを、スコットランドのブランドとのコラボレーションによりディオール流に再解釈。今回ディオールとタッグを組んだブランドとともに、そのクリエイションをご紹介。
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ハリスツイード
スコットランド西部にあるアウター・ヘブリディーズ諸島で誕生したハリスツイードは、100年以上の歴史を持つ風習と伝統に基づいている。このファブリックは今日に至るまで、島に住む職人たちの独自ネットワークによって築き上げられ、それぞれの自宅で足踏み織機を使って織り上げられている。その傑出した歴史と文化的価値が認められ、1993年の議会法で保護されることとなったハリスツイードは、固有の自然に宿る独特の色調を反映したウールファブリックをつくり続けている。
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ジョンストンズ オブ エルガン
18世紀後半に創業したジョンストンズ オブ エルガンは、スコットランド北東岸の歴史ある土地で、原材料の繊維から衣服を仕立てている。その土地ならではの自然環境をファブリックに落とし込んだスコットランド産ツイードのコレクションで知られるだけでなく、ニットウエアにおける特別な専門技術を開発し、ホーウィックにある自社工場で独自の糸から仕立てを行っている。
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ロバート マッキー オブ スコットランド
スコットランド連隊が着用する伝統的な儀礼用の帽子や、19世紀中頃からはパイプバンドの帽子として幅広く使用されている帽子の製造を手がけているロバート マッキー オブ スコットランド。スコットランド伝統の帽子は、フェイルとニットのパーツを組み合わせた昔ながらの帽子製造の技術によるもので、スコットランド西部エアシャー地方のクラフツマンシップの伝統を体現している。今回のショーでは、クリスチャン ディオールと協力して、伝統的なバルモラルボンネットに基づいた新デザインのボンネットを制作。伝統的な特徴の中に、ディオールの刺繍が施されたバンドが加わっている。
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エスク カシミア
アナン川東岸を拠点とするエスク カシミアは、スコットランド ニットウエアの優れた伝統を現代に引き継ぐ家族経営企業。カシミアとシェットランドヤーンを取り扱う同社は、フェアアイル デザインなど、スコットランドのバリエーション豊かな伝統的なステッチとパターンを模索している。今回は下記のル キルトのスカートにコーディネートしたニットトップスを制作した。
ル キルト
今回のショーのために、マリア・グラツィア・キウリは、イギリスの若手デザイナー、サマンサ・マコアッチを招待した。サマンサ・マコアッチとともに2014年にこのブランドを設立した、元お針子でもある彼女の祖母は、キルト制作で使われるテイラリングとプリーツの技術を学んでいた。スコットランドの専門メーカーとともに、自然素材を使い続けるよう設計されたル キルトのラグジュアリーなクリエイションは、どんなワードローブにもシームレスにフィットするように作られている。今回のショーでは、独特なヘリンボーン構造を持ち、それが洗練されたテクスチャーを生み出すキルトスカートを制作。製品は北部アイルシュの工場で丁寧にプリーツ加工され、さらに蒸気箱でプリーツ固定という従来の技術が用いられている。伝統的なスコットランドのキルトづくりへの敬意と同時に、現代的な感性を取り入れることでフレッシュでありつつ、高品質なファッションアイテムへと昇華させた。
text: Natsuko Kadokura