我が愛しの、ジェーン・バーキン ジェーン・バーキン、ベーシックなおしゃれの秘密。

Fashion 2024.06.24

自身の新ブランド、ジェービーアタイアで、ジェーンを象徴するいくつかのアイテムを再現した金子恵治。その制作の過程で見えてきた、彼女のファッションの美学とは?


2024年春夏シーズンにデビューした新ブランドのジェービーアタイアは、ジェーン・バーキンをはじめ、マリリン・モンローやケイト・モスら歴史的なミューズたちのファッションをテーマにしている。長らくメンズシーンだけで活躍してきた金子恵治が、ジェーンのファッションに興味を持ったきっかけは何だったのだろうか?

「エディフィスに勤務していた24、25歳の頃、身近にセルジュ・ゲンズブールに憧れていた先輩がいて。彼の写真をいろいろと見せてもらうと、その横には必ずジェーンがいました。若かりし頃は彼女のルーツを感じる可愛らしいブリットガールでしたが、セルジュと出会ってからは彼の影響もあってか色気が増して、ジェーンの魅力が確立されたじゃないですか? たとえばリーバイス®の501®を穿いたジェームズ・ディーンは確かにかっこいいけれど、それ以上に501®がモノとして際立っていたというか。対してジェーンの場合は、501®ではなくデニム姿の彼女が印象に残る。本人に意味があるからただの白シャツですらかっこよく見える。僕もファッションを"スタイル"として意識したのは、セルジュはもちろんジェーンがきっかけだったのかもしれません」

Blue Denim

プロポーションを際立たせる
コンパクトなサイジング。


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ラフな着こなしの中心は常にブルーデニムだった。定番のリーバイス®501®に加え、パッチワークのフレアデニムもお気に入り。素肌にデニムをサラッと合わせたスタイルもノンシャランな彼女だからこそ。

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誰もがひとつは持っているリーバイス®やコンバースといったオーセンティックなブランドから名もなき服まで、ジェーンがプライベートで身につけていた服に特別なものはほとんどない。

「ちゃんと仕立てられたものならポケットの下に余白があるのに、彼女が頻繁に着ていたベルベット素材のジャケットは『本当に合ってる?』と心配してしまうほどにそこがかなりキワキワ。おそらく古着ですよね。サイズが合っていない白シャツだって近所で売っているようなものだろうし」と金子が予想するように、当たり前にあるものをありのままの自分で着る親近感が、ジェーンが性別を超えて世界中で愛される理由なのだろう。

Tailored Jackets

まるで男性もののようなハンサムなデザイン。


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大きいラペルが目を引くマニッシュなジャケットを好んだ。金子がイメージソースにしたベルベット素材の一着のほか、グレーのウールタイプも頻繁に着用。本当に気に入ったものだけを愛用していたことがうかがえる。

Manly Shirts

抜け感を演出する無造作な着こなし。


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大きめのシャツを、胸元を開け袖をラフに捲ってエフォートレスに着るのがジェーン流。まるで寝間着のまま外に出てきたようなパジャマシャツを使った着こなしにも、彼女の飾らないキャラクターが表れている。

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「だからこそ彼女に近付くのは難しいんですけどね......パンツをネクタイでウエストマークしているのもたまたまベルトがなかったから代用しただけのように見えるし、当時はまだファッションとして認識されていなかったパジャマシャツも『可愛いから外で着ちゃおう』くらいの感覚だったのかも。何も正しく身につけないというか、アイテム選びから着こなしまで僕には計算してやっているようにはどうしても思えない。当たり前の服を特別に見せる適当さ、つまり、スタイルにみんな憧れるんですよね」

Chino Pants

ぶかぶかのウエストを、ギュッとウエストマークして。


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白シャツと頻繁にコーディネートしていたのがチノパン。メンズライクな雰囲気を盛り上げる2タックのクラシックなディテールと大きめのサイジングを選び、それをベルトやネクタイで絞っていたのも印象的。

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金子はジェービーアタイアで、誰もがミューズの"ムード"を纏えることを目指した。ジャケット、白シャツ、ジーンズ、チノパンといった正真正銘ジェーン・バーキンのワードローブだ。アイテムの原型をトレースするのではなく、膨大なアーカイブ写真を基に着た時のシルエットや素材感、シワの入り方を緻密に研究しアレンジを加えた。マニアックな視点を持つ男性デザイナーならではのアプローチだ。

「ジャケットは70〜80年代のフォルムを意識してコンパクトに作っています。ジェーンが着ていたそのものと同じバランスで作っても日本人の体形ではそのとおりにはならないので、ラペルの返りや肩パッドの入り方、ボタンの位置など細部にかなり注意しましたね。シャツは、いい意味でもの作りにいい加減さがあるナポリで。質が良いとはいえない普通のブロード地を選び、ラフな縫製で仕上げました。ジーンズは男性ものの501®を女性が穿くイメージで立体的に。ジェーンが穿いていたものはスラックスのようにも見えるので、チノパンにはふたつの要素をミックス。主にジーンズの縫製を行っている工場にスラックスとして依頼することで、完璧すぎない、ジェーンのようなラフな雰囲気に仕上げました。いずれも、ジェーンが実際に着ていた服と並べたら厳密には同じものではない。でも、みんなが憧れる彼女のムードは纏えるはずです」

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来シーズンにリリースされる、サテンテープでトリミングしたベルベットジャケット(価格未定)、チノクロスを使用しながらあえてスラックスの仕立てにこだわったパンツ¥35,200/ともにジェービーアタイア(コモド)

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Keiji Kaneko
セレクトショップ「エディフィス」にてバイヤーを務めた後、独立。「レショップ」や「ブティック」を立ち上げ、今季からは新たにウィメンズブランドを開始するなど、活躍は多岐にわたる。

ジェービーアタイア
@j.b.attire_official

●問い合わせ先:
コモド
tel:03-6824-7770

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▶︎我が愛しの、ジェーン・バーキン

*「フィガロジャポン」2024年3月号より抜粋

editing: Kenichiro Tatewaki

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