今年押さえておきたい再注目アイテムはコート!【2024年秋冬トレンド解説|渡辺三津子編】

Fashion 2024.07.15

海外コレクションを取材した5人のおしゃれプロに緊急アンケート。今シーズンのムードから感動のショーまで、それぞれの視点でとらえたライブなトレンド解説をお届け。

テーラリング追求のシーズン、
最注目アイテムはコート。

渡辺三津子
ファッションジャーナリスト&コンサルタント

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Q1. 24-25 秋冬コレクション全体のムードや傾向。

Answer:先シーズンから兆候は見えていましたが、秋冬シーズンを迎えて本格的にテーラリングを追求する動きを強く感じました。

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Prada

流行語にもなった"クワイエットラグジュアリー"の流れを各デザイナーが自分なりの解釈で進化させたとも考えられます。"実用性""リアリティ""日常"といったキーワードが多くのブランドから浮かび上がってきました。

"クラシック"の再解釈や再定義、という根本を振り返る姿勢も見えます。

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Loewe

世界情勢も含めた不安定さ、不透明さが、時代のムードとして過去を振り返るという行為に人々を向かわせたのかもしれません。長年続いたファッションのカジュアル化にちょっと一息ついて立ち止まってみたい、という感覚を感じました。

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Q2. 注目しているトレンド(スタイル、アイテム、素材など)は?

Answer:スタイルのインスピレーションとしては、60年代が目立っています。

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Dior

プレタポルテがスタートし、若者文化が花開いた時代。ファッションにもリアリティと動きやすさ、若々しさが求められました。ミニや膝丈のスカートにロングブーツというスタイル。今シーズン、ブーツは脚全体を覆うような超ロングからニーハイ、膝丈までさまざまですが、とにかくマストバイ。トータルルックを完成させる、トーク帽やキャスケットなどの帽子にも注目を。色はベージュ、茶、黒が多い。保守的とも取れる流れですが、ベーシック回帰の結果でしょうか。

ビッグシルエットの流れは、テーラードもニットも身体を包み込むような優しい調和を感じるシルエットへ。自分を守る鎧の強さと、優しい安心感の両方を感じさせます。最注目アイテムは、なんといってもコートだと思います。構築的シルエットが際立つ重量感のある素材で、短い丈は脚を大胆に見せて、超ロング丈はドラマティックな動きを楽しんで。いずれにしても、一着の存在感を主張する"新感覚のドレス"とも呼べるアイテムに。

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Q3. 特に印象に残ったブランドとその理由。

Answer:コム デ ギャルソン川久保さんの「怒り」が黒の内なるエネルギーとして服に込められ、情動に訴えかけるショーでした。ネガティブな感情をファッションで表現するという稀有な挑戦(コム デ ギャルソンならでは)ですが、心が揺さぶられる強い美しさに満ちていました。

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Comme des Garçons

アンダーカバ----「普通の女性たちの日常」を祝福する高橋盾さんのデザイナーとしての円熟を感じさせるコレクション。ヴィム・ヴェンダース監督が創作した「ある女性の一日」についての文章が監督自らのナレーションで語られる美しい演出に感動。

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Undercover

ドリス ヴァン ノッテン----最後のウィメンズコレクションを見られたことと、40年近くファッションで女性たちに自信を与え、寄り添ってきたことに感謝したい。変わらないスタイルとインディペンデントなブランドの在り方を貫いた姿勢に拍手。美しい色、幸福感に包まれる素材とシルエット、華やかな花々と刺繍。自由に装うことを楽しみながら自立する女性のワードローブを支えた大きな功績。

Q4. コレクション取材を終えて感じることは?

Answer:ラグジュアリーブランドが才能あるデザイナーを迎えてブランド再生を試み始めてはや四半世紀。10年以上続くデザイナーは希少な存在ですが、ルイ・ヴィトンのニコラ・ジェスキエールは10周年を祝い、さらに5年契約を結んだということ。

一方で、デザイナー交代が頻繁になった昨今、ファッションにとってブランドのアイデンティティとは何なのかが、新たに問われる局面を感じたシーズンでした。

渡辺三津子
Mitsuko Watanabe

ファッションジャーナリスト&コンサルタント
@mitsuko_wtnb

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*「フィガロジャポン」2024年7月号より抜粋

photography: Spotlight

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