2025年春夏パリコレクションの日々を、実際にショーや展示会を訪れた編集長KIMが繰ったパリ日記。
「ペンは力なり」と言うけれど、「ファッションは力なり」と思う。ステラ・マッカートニーもsacaiのデザイナー、阿部千登勢さんもクリエイティブの軸は決して変わることなく信念を貫いていて、強い。ガブリエラ・ハーストももちろん。
ステラ マッカートニー
女性のライフスタイルを映し出したような演出だった。ステラ本人も激推しのバッグ「ステラ ライダー」を手に、「ザ・ステラ・タイムズ」新聞をくしゃっと丸めて、オフィスに出勤するようなジャケット姿。はたまたミニサイズの「ステラ ライダー」&ドレス姿、パジャマライクなリラクシングシルエットで、と1日の過ごし方を見るかのごとく。新作バッグはもちろんビーガンレザー。そしてプリントやアクセサリーにも起用された「鳥」モチーフは、ステラのサステナビリティのメッセージが込められている。
ガブリエラハースト
地球と女神へのオマージュを捧げたコレクション。しなやかなレザーやかぎ針編みのドレス、ウエスタンブーツ、デニムのドレスコートなど、大らかなシルエットで悠々泰然としたムード。BGMは生演奏のカントリーミュージックで、ガブリエラ本人がフィナーレでレヴェランスの挨拶をしたのが素敵だった。
サカイ
大きなフリル、またはフリル形状に服そのものを(たとえばジャケットなどを)アレンジ&アタッチしてボリュームを出したシルエット。そしてパフィに膨らませた膝丈ブーツとフリンジ装飾で覆われたシューズがアクセントになっている。ユニフォーム風なのにたっぷりと遊び心を忍ばせて。久しぶりにブラックデニムを履きたくなった。
バレンシアガ
まずはデムナのNOTEと呼ばれるメッセージを。
「ファッションに関する私の初期の記憶は、ダンボールにルックを描き、それを切り抜き、祖母のキッチンテーブルで"ファッションショー"をしていたことから始まります。35年後、このショーは私を、私のビジョンの始まりに再び結びつけます。独自の視点を持つファッションへのオマージュです」
インビって普通、シートナンバーが書かれるものなのに、今回はテーブルナンバーとなっていたところからして唯一無二だ。中央に置かれた長~いダイニングテーブルの両脇に来場者が着席し、そのテーブル上をモデルが歩いてゆく。ランジェリー風のルックや、前と後ろがまったく異なるデュアルなデザインも多く、レース仕様のレギンスやタイツは今季のトレンドど真ん中。本当にいつもサプライズをくれるのがバレンシアガ。
メゾンヨシキパリ
YOSHIKIさんのピアノからスタートしたショー。会場にはファンが詰めかけ、YOSHIKIさんは神が降臨したかのように無心に奏でる。その誘いでモデルたちがウォーキングし始めて......というスペシャルミュージックショーでもあった。
展示会もてんこ盛りだった30日! ロンシャン、セリーヌ、カルティエ、ヴァレンティノ、エーグルに行ってきました。
新社屋に引っ越して、街の中心ながら緑あふれる環境で働くロンシャンの社員が羨ましい! サマーシーズンのキーカラーはグリーン。そして推しはトグルがモチーフの「ル ロゾ」バッグ。ギンガムチェックなどプリントアイテムがパリジェンヌの田舎暮らしをテーマとする今季にぴったり。ストレッチスエードレザーは洗いもOKという優れものだった。
セリーヌはジェーン・バーキンやジュリエット・グレコなどフレンチアイコンが着想源。エキゾティックレザーを用いた新作バッグは本当に美しかったー。
カルティエでは「ベニュワール」のミニサイズにうっとり。文字盤の色彩の繊細さもいい。
ヴァレンティノでは、装飾が施された生地を実際に手に取ってみることができ、柄フェチにはたまらない時間となった。ランウェイにも登場した3つの新バッグ「ビバスーパースター」「ヴァイン」「ナイントゥーファイブ」ラインに注目。そしてショーの時にも気になったレースタイツ。ソックス&タイツのルックになっているものもあり、ミケーレ曰く、これらのタイツやソックスがなければルックは完成しない、のだそう。
エーグルはユニークなプレゼンテーションで、ケ・ブランリ美術館の庭でモデルたちがぐるぐると回っているという......軽やかなアウターが主役です。