【全文公開】ジョン・ガリアーノが感動のレターでメゾン マルジェラを退任。「自分を許すことが最も難しい行為だった」。
Fashion 2024.12.12
これまで10年間にわたりメゾン マルジェラのアーティスティックディレクターを務めてきたジョン・ガリアーノが、2024年12月11日(現地時間)をもってその役職を退任。インスタグラムでその心境を語る長文のレターを投稿した。
「私の心は喜びと感謝で溢れ、私の魂は微笑んでいます」。
第64回イブニング・スタンダード・シアター・アワードのアフターパーティに登場したジョン・ガリアーノ。(2018年11月18日、ロンドン)photography: Dave Benett / Dave Benett/Getty Images
すでに同年7月末には複数のメディアが退任の噂を報じていたが、このたび正式に発表され、メゾン マルジェラのアーティスティックディレクターとして過ごした10年間に幕を下ろした。「私の心は喜びと感謝で溢れ、私の魂は微笑んでいます」と、彼はインスタグラムの投稿に書き記している。
さらにジョン・ガリアーノは、2002年からメゾン マルジェラのオーナーを務め、2014年にその座を譲ったレンツォ・ロッソに感謝の意を表した。「彼が私に与えてくれた最大かつ最も貴重な贈り物は、私が創造的な声を失ったときに、それを見つける機会を与えてくれたことです」。
また、ジョン・ガリアーノは、何ヶ月もの間広まっている次の動き(ラグジュアリーブランドのトップに就任するという噂)についても言及した。「噂......。誰もが知りたい、誰もが夢を見たいと思っています。時が来れば、すべてが明らかになるでしょう。今のところ、私は今、多大な感謝の意を表したいと思います」。
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「罪の意識を感じた」、過去の歴史を振り返る。
アレクサンドル3世橋の下で行われたメゾン マルジェラの2024年秋冬オートクチュール・コレクション。(2024年1月、パリ)photography: Launchmetrics
これまでのキャリアで、ジョン・ガリアーノは、驚くべき適応能力を示してきた。2014年10月、彼がメゾン マルジェラの指揮を執ることになったとき、慎重さのあるこのメゾンの中心に彼の居場所があるとは誰も想像していなかった。
ジョン・ガリアーノは、オスカー・デ・ラ・レンタでの短い任務を除いて、3年半の転落から回復中の時期。パリのカフェ「ラ・ペルル」のテラスで酔っ払って人種差別的、反ユダヤ的な侮辱を口にしたことが発覚し、10年間に渡って美しく感動的で印象的なコレクションをデザインしてきたディオールを解雇されたのだ。それは彼のキャリアを永遠に汚すことになるエピソードだった。「しばらくの間、自分を許すことが最も難しい行為でした。クリエイティビティはアルコールとドラッグで奮い立たせるものだという固定観念を持っていたことに罪の意識を感じています。あの古いロックンロールな振る舞いは完全に誤りです」と彼はレターに記した。
ジブラルタル生まれのイギリス人であるジョン・ガリアーノ。メゾンの創始者であるマルタン・マルジェラが決して自分を前面に出さず、チームを誇示することを好んだアイデンティティを尊重し、影に隠れながら、少しずつ着実に自分自身を証明してきた。
そして、アレクサンドル3世橋のたもと、ベルエポックを再現したビストロで披露された2024年アーティザナルコレクションで、ジョン・ガリアーノは間違いなく彼の最高傑作のひとつを作り上げた。その衣服、アクセサリー、コルセットだけでなく、フィルム・ノワール風の演出やメイクアップアーティストのパット・マクグラスによるモデルの顔を陶器のように覆うメイクアップも歴史に爪痕を残し、複数のソーシャルトレンドにも影響を与えた。滅多に見ることのできないスタンディングオベーションを彼にもたらしたこの見事なショーは、メゾン マルジェラでの彼の仕事の集大成のように見えた。まさに去り際にふさわしいものであった。
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ジョン・ガリアーノが発信したレターを全文公開。
From madameFIGARO.fr
text: Elvire Emptaz et Augustin Bougro (madame.lefigaro.fr) translation: Hanae Yamaguchi